にっぽんの逸品を訪ねて

鳥取の「松葉ガニ」と「駅近の源泉かけ流し温泉」を楽しむ冬の極上グルメ旅

あまり知られていないのですが、鳥取市のJR鳥取駅近くには温泉が湧いています。今回は、駅近の温泉宿「観水(かんすい)庭 こぜにや」に泊まり、源泉かけ流しの温泉と、山陰の冬の味覚の王様「松葉ガニ」、さらに幻のエビ「モサエビ」を味わうグルメ旅を紹介します。「冬の旅はアクセスが心配、寒いからあまり移動したくない」という方にもおすすめです!

連載「にっぽんの逸品を訪ねて」は、ライター・中元千恵子さんが日本各地の逸品を訪ね、それを育んだ町の歴史や風土を紹介します。

駅も港も温泉も近い! 空港から松葉ガニが並ぶ鳥取港海鮮市場「かろいち」へ

「鳥取市は街がコンパクトにまとまっているので、観光しやすいですよ」と聞いていましたが、鳥取空港に降り立ってそれを実感しました。JR鳥取駅や鳥取砂丘、鳥取港など、見どころや交通の要所が約6km四方の圏内に集まり、その間をバスが結んでいます。

鳥取港海鮮市場 かろいち

日本海の鮮魚がそろう「かろいち」

空港から向かったのは鳥取港海鮮市場「かろいち」。鳥取港で水揚げされた鮮魚が並ぶ、鳥取市に来たらぜひ訪れたいスポットです。

松葉ガニ漁が解禁となる11月初旬~翌3月は、場内に松葉ガニがずらりと並びます。

場内には鮮魚店や食事処があり、たくさんの人でにぎわっていました

松葉ガニが並ぶ鳥取港海鮮市場「かろいち」

品質によってさまざまな価格のものがあります

さまざまな価格の松葉ガニ。鳥取港海鮮市場「かろいち」

「鳥取県の松葉ガニは、水揚げ量は多いけれど、あまりブランド化されていないので他県に比べてリーズナブル。松葉ガニを食べるなら鳥取県がお得だと思いますよ」と話すのは賀露中央海鮮市場協同組合の専務理事を務める網浜水産の網浜昇さん。

カニを選ぶお客さんに説明をする網浜さん

網浜水産の網浜昇さん

さらに「『かろいち』は港に近く、できたての浜茹(ゆ)でが運べるので、カニの風味がいい」とのこと。「かろいち」では茹でガニを買って、その場で食べることもできます。店ごとに茹で時間や塩加減のこだわりがあるのだそう。

購入したカニは場内で食べられ、ハサミなどの用具も貸してくれます

鳥取港海鮮市場「かろいち」。購入したカニは場内で食べられ、ハサミなどの用具も貸してくれます

「かろいち」には食事処も入っています。昼食はその一軒、「お食事処 いか太郎」へ。

「お食事処 いか太郎」

「お食事処 いか太郎」

たくさんのどんぶりもののメニューから「もさ海老(えび)丼」を注文。冬は、松葉ガニのかげに隠れがちですが名産のモサエビも旬を迎えています。モサエビは甘えびよりも甘いといわれ、さらに深いうまみと独特のとろりとした食感が人気です。鮮度を保つのが難しいので地元以外にはあまり出回らず、“幻のエビ”ともよばれています。

“幻のエビ”モサエビがたっぷり

“幻のエビ”モサエビがたっぷり

駅前で源泉かけ流しを楽しむぜいたく。閑静な温泉宿「観水庭 こぜにや」

露天風呂も源泉かけ流し(画像提供=観水庭 こぜにや)

露天風呂も源泉かけ流し(画像提供=観水庭 こぜにや)

「鳥取駅前には明治時代に温泉が湧き、現在、鳥取温泉の宿は5軒。そのすべてが自家源泉を持っています」と話すのは「観水庭 こぜにや」の社長、小谷文夫さん。

こぜにやは鳥取駅から約700m。「駅に近い温泉は風情がないのでは……?」と思っていましたが、とんでもない。通りから敷地に一歩入ると空気が一変します。ゆったりとしたアプローチから続くロビーはやわらかな照明に包まれ、ガラス張りの窓の向こうはコイが泳ぐ池。ほっと肩の力が抜けていきます。

間接照明に心安らぐロビー

間接照明に心安らぐロビー

ロビーの窓に池が広がります

ロビーの窓に池が広がります

池の周りにはモミジやマツ、トサミズキ、キキョウなどの庭木が植えられ、四季折々に花や紅葉が彩ります。水面に庭の木々を映す池を眺めていると、ここが市街だということを忘れてしまいます。

温泉棟へと続く廊下。夜は池の周りがライトアップされます

温泉棟へと続く廊下。夜は池の周りがライトアップされます

和洋をほどよく取り合わせた館内は、上品でモダンな印象。池の横の神殿のような通路を進んだ先に大浴場と二つの無料貸し切り風呂「なでしこ」「二人静」があります。
チェックイン後は、さっそく温泉へ。

肌ざわりのよい湯があふれる大浴場(画像提供=観水庭 こぜにや)

肌ざわりのよい湯があふれる大浴場(画像提供=観水庭 こぜにや)

敷地内に2本の源泉を持つこぜにやは、大浴場も貸し切り風呂も源泉かけ流し。湯船に身を沈めると、弾力のあるやわらかな湯がふんわりと体を包んでくれます。入浴前、宿の方が「温泉成分を多く含むお湯なんですよ」と話してくれましたが、ややぬめりのあるやさしい肌ざわりがそれを実感させます。入浴後は体が軽くなって、疲れがとれていくのを感じました。

温泉成分を多く含むそうです(画像提供=観水庭 こぜにや)

温泉成分を多く含むそうです(画像提供=観水庭 こぜにや)

1棟貸し切りで家族水入らずで過ごせる、離れ特別室「宝殿(ほうでん)」

客室は全24室。池を囲むようにロビーや温泉棟、そして「碧(へき)水亭」や「白水館」などの宿泊棟が並んでいます。洋室や和室、和洋室など客室タイプも豊富。

なかでも数々の賓客を迎えてきたのが、離れ特別室「宝殿(ほうでん)」です。築50年以上という本格的な数寄屋造り。玄関を入ると磨き込まれた床や柱があめ色に輝き、廊下を進むと風格ある本間と次の間が並んでいます。

玄関も広々としています

玄関も広々としています

天井の高い本間は、思わず背筋が伸びるような凜(りん)とした佇(たたず)まい。装飾は掛け軸や生け花、エジプト模様の飾り棚だけと控えめですが、それがより縁側の向こうに見える庭の景色を引き立てます。和室と庭が調和する眺めは、これぞ日本建築。

本間からの眺めは見飽きることがありません

本間からの眺めは見飽きることがありません

離れ特別室「宝殿」は、昨年11月にリニューアルしたばかりです。本間と次の間の風情はそのままに、室内を車イスでも段差なく移動できるバリアフリー対応にしました。

「高齢のご両親を連れた2世代、3世代のお客様が増えたので、1棟貸し切りの『宝殿』を使いやすくしました」と小谷さん。

「宝殿」専用の車イスも用意しています

「宝殿」専用の車イスも用意しています

廊下の先にある控えの間は畳敷きのままツインの寝室に改装されています。

寝室からも庭が望めます

寝室からも庭が望めます

源泉かけ流しの浴室も、湯船まで段差がなく、腰掛けるスペースも付いているので、多くの人が入浴しやすくなっています。

浴室は源泉かけ流し。入浴しやすい構造になっています

浴室は源泉かけ流し。入浴しやすい構造になっています

茹でて、焼いて、煮て、すしでも。松葉ガニづくしの至福の夕食

お待ちかねの夕食は「風流かにづくし会席」。3月下旬まではこの松葉ガニをふんだんに使った会席が人気です。「宝殿」では、部屋に夕食が運ばれます。

この日は、先付けの「かに味噌豆富(みそどうふ)」に始まり、旬の地魚の造り盛り合わせ、茹でた「鳥取県産本松葉ガニ」と続きました。

旬の地魚でお酒もすすみます。この日はアカイカ、ヒラマサ、サワラ、マグロ

旬の地魚でお酒もすすみます。この日はアカイカ、ヒラマサ、サワラ、マグロ

たっぷりのカニのむき身にカニみそをのせ、土佐酢につけてほおばる幸せといったら……。思わず顔がほころんできます。

口いっぱいにカニの甘みが広がります!

口いっぱいにカニの甘みが広がります!

そのあとも「かにの辛味鍋」や「かにのバター焼き」「かに寿司(ずし)」「かに天婦羅(てんぷら)」などが続きました。調理法が変わるので、松葉ガニのさまざまな味わいが楽しめました。

辛味鍋も人気のひと品

「かにの辛味鍋」も人気のひと品

バター焼きもカニのうまみが凝縮されています

バター焼きもカニのうまみが凝縮されています

量を少なめにした夕食プランも用意しています。そちらにはこの日はモサエビも登場。季節や仕入れによって内容は変わるそうですが、旬の日本海の幸が味わえます。

量を控えめにした夕食プランも

量を控えめにした夕食プランも

モサエビのフライは香ばしくて美味

モサエビのフライは香ばしくて美味

こぜにやでは、朝8時以降は随時、鳥取駅周辺まで送迎するなど、細やかなサービスが心に残りました。温かく決して押しつけがましくない品のよい接客。皇族も宿泊された宿と聞いて、その心地よさに納得しました。

【問い合わせ】
・鳥取港海鮮市場 かろいち
https://karoichi.jp/

・観水庭 こぜにや
https://www.kozeniya.com/

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PROFILE

中元千恵子

旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの温泉宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。
全国各地のアンテナショップを紹介するサイト 風土47でも連載中

うだつの町並み、藍染め&和三盆 徳島の風土を感じる名産品の手作り体験

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