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世界遺産の360°ループ 1等車と5つ星ホテルで巡るスイス1周鉄道旅(2) サン・モリッツ~ティラーノ

スイスで5つ星ホテルを泊まり歩き、鉄道の1等車で国をぐるり1周する――。&TRAVEL副編集長が2019年8月から9月にかけて、そんな旅を体験しました。写真家の猪俣博史さんと二人三脚で巡った9日間の珍道中、第2回は世界遺産にもなっている路線を走る絶景特急「ベルニナ・エクスプレス」に乗って、サン・モリッツからイタリアのティラーノへ行き、ポントレジーナへ戻る往復鉄道旅です。
(文・動画:&TRAVEL副編集長・星野学 写真・猪俣博史)

<1等車と5つ星ホテルで巡るスイス1周鉄道旅 (1) チューリヒ空港~ポントレジーナ>よりつづく。

【動画】ぐるり360°! 世界遺産ベルニナ線のクライマックス「ブルージオ橋」

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スイス冬季観光発祥の地、サン・モリッツ

2019年8月25日、スイス鉄道旅の2日目。ポントレジーナの宿泊先「グランドホテル・クローネンホフ」のロビーで、ガイドの飯野聡子さんと朝7時30分に待ち合わせです。標高約1800mなので、夏とはいえ外気温は5℃! 宿から歩いて数分のバス停から路線バスに乗り、隣村のサン・モリッツへ向かいます。「ベルニナ・エクスプレス」の乗車駅があるからです。まず、サン・モリッツの旧市街を歩いて回ることにしました。

ウィンタースポーツがお好きなら、サン・モリッツと聞いて、ピンと来る方もおられるでしょう。「氷上のF1」と呼ばれるボブスレーや、スケルトンの世界選手権では常連開催地です。1928年と1948年には冬季五輪の開催地になりました。

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バスの中から。ボブスレーとそのコースが前方に見える

バスに乗っていると、「あれがボブスレーのコースです」と、飯野さんが教えてくれます。見ると、コース脇の壁に、ボブスレーがセミのように張り付いています。サン・モリッツ中心部には15分ほどで到着。まず向かったのは、クルムホテル。創業160年を超えるサン・モリッツで初めてのホテルで、夏の避暑地だったスイスで冬季観光のさきがけとなった伝説的存在でもあります。

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クルムホテル

伝説のはじまりは1864年の秋。クルムホテルの創業者ヨハネス・バドルッツは、滞在していた4人の富裕な英国人客に、サン・モリッツの冬は晴れた日なら日光浴も楽しめると説明しましたが、信じてもらえません。そこでバドルッツは提案しました。「12月にもう1度おいでください。私が間違っていたら、旅費滞在費は私が持ちます」。賭けはバドルッツの勝ちでした。12月に再びやってきた4人はご満悦で、春のイースター(復活祭)までここで過ごしたのです。

ヒッチコックゆかりの宿

サン・モリッツは人口5千人ほどの小さな村で、中心部もコンパクト。駅までの道すがら、薄い霧に包まれた街を歩きます。こちらは、クルムホテルの向かいにある斜塔です。

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サン・モリッツの斜塔。左へ5.5°傾いている

観光案内所前の広場の片隅に、観光地サン・モリッツの立役者ヨハネス・バドルッツ像がありました。

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ヨハネス・バドルッツ像。サン・モリッツの偉人にしては質素なたたずまい

こちらは、セレブ御用達の豪華ホテル「バドルッツ・パラス」。映画監督アルフレッド・ヒッチコックが愛したことでも知られ、彼の代表作「鳥」は、ここに滞在中に着想した、と伝わります。

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ホテル「バドルッツ・パラス」(奥)

サン・モリッツ湖に突き出た展望施設に着いたときはまだ霧が残っていましたが、次第に晴れて、この通り。温泉が出ることもあって、この街は、スポーツの高地トレーニングにもよく使われるそうです。

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サン・モリッツ湖。すっかり晴れ上がった

鉄道ファンにはたまらない世界遺産の路線

そうこうするうちに、「ベルニナ・エクスプレス」の発車時刻が近づいてきました。眼鏡にサングラスを取り付け、サン・モリッツ駅に向かいます。日本を出る前、スイス政府観光局の押尾雅代さんに「紫外線が強いのでサングラスは必須です。パノラマ車両に乗る時や登山時は日焼け止めも忘れないでください」と念をおされていたので、その通りにします。

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私たちが乗った、ベルニナ・エクスプレス

乗り込んでみれば、天井まで届く窓のパノラマ車両です。午前9時39分、イタリアのティラーノまで2時間21分の旅に、出発進行!

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ベルニナ・エクスプレスのパノラマ車両(1等車)。眺望は抜群

サン・モリッツからティラーノまでは、世界遺産となっているスイスの山岳鉄道「レーティシュ鉄道アルブラ線・ベルニナ線と周辺の景観」のベルニナ線区間です。全長61kmの区間にトンネル13カ所とで高架橋52カ所があり、1910年に開通しました。歯車を使ったラック式鉄道ではなく、通常の2本のレールで、1824mもの高低差があるルートを進みます。「2本のレールだけでこれだけの高低差を走ることが、鉄道ファンにはたまらないようです」と飯野さん。「観光鉄道としては、短い時間でめくるめく景色が変わるのが特徴です」

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氷河、そして、黒い湖と白い湖

最初の見どころは、進行方向右手に見えるモルテラッチ氷河です。この列車が走るグラウビュンデン州最大の氷河です……が、一面真っ白というよりは、まだら模様。地球温暖化がこんなところにも影を落としています。

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遠くに見えるモルテラッチ氷河

右手に黒っぽい湖が見えてきました。ロマンシュ語で「Lej Nair」(レイ・ネイル=黒い湖)と呼ばれています。やがて、緑がかった白色の湖に変わります。こちらはイタリア語で「Lago Bianco」(ラーゴ・ビアンコ=白い湖)。二つの湖の間には分水嶺(ぶんすいれい)を知らせる看板が立っていました。黒い湖は黒海に、白い湖はアドリア海に続くことがわかります。隣り合わせの湖が、別々の言語で呼ばれるということは、分水嶺が言語圏の境でもあるのですね。

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分水嶺の看板。うしろは左側が白い湖、右側が黒い湖

それにしても、暑い。車内は空調が効いていますが、大きな窓から照りつける日差しが強烈なのです。スマホの地図アプリで外気温を調べると11℃ですが、室内の体感はまるっきり夏。車両の窓は開きません。

ベルニナ・エクスプレス最高地点の「オスピツィオ・ベルニナ」(2253m)を過ぎアルプ・グリュム駅へ。撮影スポットのようで、「10分間停車します。乗り遅れにご注意ください」と車内アナウンスがありました。

乗り合わせたみなさんが、パリュ氷河とパリュ湖を背景に競うように自撮りをしています。こちらの氷河も、何だか迫力がありません。「100年前の写真を見ると、氷河は湖に達していました」と飯野さん。そんなに後退してしまったのか……。

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アルプ・グリュムから望む、パリュ氷河とパリュ湖

ティラーノでそそくさと昼食

列車は弧を描きながらぐんぐん山を下っていきます。ポスキアーヴォ村が見えてきました。空が次第に曇ってきて、日差しが随分柔らかくなっています。晴れたほうが景観はいいけれど、高地とはいえ夏の日差しを浴び続けるのはしんどい。ふう、助かった。

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ポスキアーヴォ村

ベルニナ線は、越境通勤者の足でもあるそうです。「イタリアのティラーノに住む人が、ポントレジーナやサン・モリッツの観光産業で働くという話を聞きますよ」と飯野さん。理由は所得水準の差。業界や状況によって一概には言えませんが、飯野さんの実感としては「スイスの給料はイタリアの3倍近い」とのこと。もちろん、税制も物価も違うので、イタリアの人がスイスで働くと3倍手元に残るとは限らないと思いますが。

やがて国境を越え、イタリアへ。終点のティラーノに着いたのは正午でした。気温は27℃。日本の酷暑に比べれば過ごしやすいですが、2時間あまりで20℃以上も気温差のある場所へ移動すると、どうも体が慣れません。

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ティラーノの駅前

帰りの電車は13時発。駅近くのレストランに飛び込み、「1時間しかないけど大丈夫?」と尋ねてオーケーというので腰を落ち着けました。飯野さんと猪俣さんはピザ、私はアサリのパスタを頼んで、軽くワインも。

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アサリのパスタ


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なすのピザ

イタリアにしては恐ろしくそそくさと食事を済ませ、40分ほどで駅へ戻ります。以前オペラハウスの取材でイタリア出張した時は、「郷に入りては郷に従え」と、ワインを飲みながら2時間かけて昼食をとっていたのを思い出しました。

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こぢんまりとしたティラーノ駅

クライマックスの360°ループ「ブルージオ橋」

さて、この帰路が、実はベルニナ線での撮影本番です。というのは、ベルニナ・エクスプレスの1等車は窓が開けられないので、場合によってはガラスに室内が写り込んで、うまく写真が撮れません。帰路は普通列車を選び、最後尾に連結されている壁のないオープン車両に乗ろう、と決めていたのです。乗るべき列車を探すと……ありました、ありました。

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トロッコのようなオープン車両。これなら撮影もうまく行きそう

いまここは27℃。スマホで調べると、宿のあるポントレジーナは11℃です。こんなに気温差のある鉄道で2時間吹きさらし。風邪でもひいたらどうしよう? しかし、そんなことを言っている場合ではないのです。なるようにしかならないさ、と割り切って、いざ出発! 猪俣さんはスチール写真、私は動画の担当です。

撮影のヤマは、いきなりやってきました。ブルージオ橋です。

狭い谷で、農地や道路と共存させながら、およそ10mの高度差を昇降するために造られた、世界的にも珍しい360°ループ橋です。

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ブルージオ橋を上から見る(往路に撮影したものです)

近づいてきました! 動画は記事冒頭をご覧ください。

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橋の下をくぐってから、ぐるり回って上に出る

雄大な自然の中、車輪をきしませながら石のループ橋を進む列車の曲線美は、まさに芸術。最後尾の車両に乗っているので、その美しさをあますことなく味わえます。生半可なアトラクションでは、この迫力にかなわない。およそ100年前、自然と調和させながら自然を克服した先人の知恵と技術の結晶を、いま、私たちが引き継いでいる。何だか、胸が熱くなります。

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橋をもうじき渡りきる

風に吹かれて めくるめく景色に歓声

風が耳元でごうごう鳴っています。気温も徐々に下がっていきますが、ジャンパーを羽織ったので、なんとか耐えられそうです。それよりも、この、壁のない車両のパノラマ感といったら! もう、大迫力。景色が変わるたびに、「うおおおー」と叫んでしまいます。

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果てしなく広がる緑と空


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これはこれで美しい


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ど迫力の景観


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ラーゴ・ビアンコ沿いを進む

14時25分、再び最高地点オスピツィオ・ベルニナへ。気温14°。何とかいけそうだ……。

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オスピツィオ・ベルニナを示すプレート


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この雄大さといったら


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線路は続くよどこまでも

おおっ、黄色と黒色のランボルギーニ! イタリアのスーパーカーです。 

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あっ、スーパーカー! 何だか得した気分

そういえば朝、サン・モリッツのクルムホテルに、イタリアの名車がぞろぞろ集結するのを見かけたっけ。「Passione Engadina」(パッシオーネ・エンガディーナ)というイベントでした。その参加者がそろってドライブに来ているのでしょうか。

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乳白色の川は、氷河の溶けた水が流れ込んだもの

道中、あちこちで、少し緑がかった乳白色の川をよく見かけました。「溶けた氷河の水が流れ込んでいるのです」と飯野さん。氷河が溶ける際に石灰質が交じるため、こういう色になるのだそうです。

グランドホテル・クローネンホフを探検

列車をポントレジーナ駅で降り、15時30分すぎにグランドホテル・クローネンホフに戻ってきました。昨日遅く着いて、早朝列車旅に出たため、まだホテルの中を探検していません。せっかくの五つ星ホテルです。セールス・マーケティング・ディレクターのカティア・シュナイダーさんのご案内で、施設を見せていただきました。

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グランドホテル・クローネンホフ

外観は風格があり、ロビーラウンジは落ち着いた雰囲気です。

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ロビーラウンジ

スパはホテルのウリの一つ。2000㎡の敷地に屋内プールや、薄暗い洞窟のような空間で音楽を聞きながら塩水にぷかぷか浮いてリラックスする「リラックス・フローティング・グロット」、サウナや13のトリートメントルームがあります。

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屋内の20mプール


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リラックス・フローティング・グロット。金具に足をかけて仰向けに浮きリラックスできる(水着着用)

喫煙室の奥にはビリヤードルームが。シュナイダーさんと、しばしお手合わせさせていただきました。キューを握るなんて、大学生以来。懐かしさでいっぱいになります。

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ビリヤードは年代物


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喫煙ラウンジの調度品は緑色と茶色で統一。奥のビリヤードルームでは、シュナイダーさんと私が勝負中

らせん階段を最上階から見下ろせば、造形的にも色彩的にも美しい。

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最上階から階段を見下ろす

こちらは、夕食と朝食をいただくグランドレストラン。1872年にできたネオバロック様式の空間です。

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歴史を感じさせるグランドレストラン

子供向けのレストランもありました。キッズメニューが用意されています。

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子供向けのレストラン「ロンデル」

昨夜お世話になったバーものぞいてみました。バーテンダーがカクテルを3品つくってくれます。その1品、カンパリとベルモットとジンでつくるネグローニのグラスを手にして、ぐいとあおります。うまい! のどごし、香りとも絶品です。さっきまでイタリアにいた余波から思わず「Grazie mille!」(グラッツェ・ミッレ=どうもありがとう)とイタリア語で口にすると、「Prego」(プレゴ=どういたしまして)と返事が。おや、と思って彼のネームプレートを見ると、マルコさん。イタリア出身でした。

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バーテンダーのマルコさん。笑顔がすてき

ポントレジーナは街の名前がイタリア風で、イタリアにも比較的近いので、朝食時、スタッフにイタリア語で話しかけてみたのですが、反応はいま一つ。スタッフ同士の会話はドイツ語か英語が多いようでした。「スイスの観光業界で働くなら、ドイツ語と英語が必須です」。飯野さんが列車の中で教えてくれたことを思いだしました。場所にもよるのでしょうが、両国語がメインで、ほかの言葉は人によりけり、ということなのでしょう。

残りの酒を飲み干して、すっかりいい気分になった私。ラウンジの片隅に置かれたピアノに目が留まりました。どんな音だろう。「弾いてもいいですか」とシュナイダーさんに尋ねると、「どうぞ」と笑顔が。

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ラウンジのピアノを弾く私

ああ、よせばいいのに。五つ星ホテルで披露できるような腕前ではありません。しかし、「何でも見てやろう」精神が勝ってしまい、おもむろに弾き始めます。深く柔らかい音のピアノです。1分ほどで、急に気持ちがなえて、演奏をやめました。身の程知らずという単語が体内に湧いてきたこともありますが、そればかりでは……。あ、曲目か。真っ昼間から、夜想曲を弾いていました。ちぐはぐな選択は、酔いのせいか緊張のせいか。

気を取り直して、探検を続けます。私たちが泊まったのはデラックスプレミアムダブルルーム(2020年4月13日まで815スイスフラン~)だったので、別のタイプの部屋を拝見しました。グランドクラシックジュニアスイート(同945スイスフラン~)です。薄緑色と白を基調にまとめた、おしゃれな部屋でした。

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グランドクラシックジュニアスイート


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テラスからの眺めは抜群

迎えて下さるスタッフの接遇は、どこでもスマートで気持ちのいいものでした。丁寧で品格のあるふるまいと自然な笑顔が印象的です。「お客様がここを『第2の家』と感じて過ごしていただけるよう務めています」と、シュナイダーさんは語っていました。

創意に満ちたディナー

さあ、お待ちかねのディナーです。ドレスコードがあり、男性はジャケット着用です。いただいたのは、好みの料理を選べるコース。前菜やスープのあと、メインディッシュに猪俣さんはベジタリアンメニューの「豆腐のパイ包み焼き」、私は魚料理「タイの地中海風」を頼みました。

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猪俣さんのメインディッシュ、豆腐のパイ包み焼き。ボリュームたっぷり


世界遺産の360°ループ 1等車と5つ星ホテルで巡るスイス1周鉄道旅(2) サン・モリッツ~ティラーノ

タイの地中海スタイル

飲み物は、猪俣さんがグラスのスパークリングワイン、私はグラスの白ワインを頼んだ後、ハウスワイン(赤)のボトルを。夜は思いのほか涼しかったので、赤ワインが飲みたかったのですが、私たちの料理だと、通常は白で通すところ。お店のスタッフに料理のチョイスを伝えたとき、合う赤はあるか、と相談して、出て来たのがこれ。軽めですが果実味はあり、表面をこんがり焼いたタイとの相性もよい。猪俣さんも「いける、いける」と言います。杯を重ね、あっという間にボトルは空になりました。

世界遺産の360°ループ 1等車と5つ星ホテルで巡るスイス1周鉄道旅(2) サン・モリッツ~ティラーノ

チーズは、好みのものを、好きなだけ切ってくれる

若干の時差ぼけも手伝って、食事を終えるころには酔いが回ってきました。早朝からの濃密な取材旅の疲れが押し寄せてきます。ぐっすり眠れそうです。明日はサン・モリッツからツェルマットへと「グレッシャー・エクスプレス(氷河特急)」で向かう旅が待っています。(つづく)

Grand Hotel Kronenhof(グランドホテル・クローネンホフ)
https://www.kronenhof.com/en/

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【取材協力】

スイス政府観光局

スイス インターナショナル エアラインズ

スイストラベルシステム

スイス・デラックス・ホテルズ

スイス1周鉄道旅

PROFILE

&編集部員

国内で、海外で。&編集部員が話題の旅先の新たな魅力を「発見」し最新情報をリポートします。

1等車と5つ星ホテルで巡るスイス1周鉄道旅 (1) チューリヒ空港~ポントレジーナ

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