宇賀なつみ わたしには旅をさせよ

親友とふたり、年末年始ドバイ弾丸旅行 宇賀なつみがつづる旅(5)

フリーアナウンサーの宇賀なつみさんは、じつは旅が大好き。見知らぬ街に身を置いて、移ろう心をありのままにつづる連載「わたしには旅をさせよ」をお届けします。今回は、数年前の年末年始に親友とふたりで行ったドバイ弾丸旅行のお話です。カウントダウンパーティーではハプニングが……。

(文・写真:宇賀なつみ)

「ハッピーとは ドバイ」

年末年始は家でのんびり。
いつからこんな過ごし方になったんだろう。
20代の頃は、なんとか短い休みを作り出して、
弾丸旅行に挑んでいたのに。

2013年、1月1日。
私はドバイで探し物をしていた。

親友とふたり、
たまたま通りかかった旅行代理店でパンフレットを見ていたら、
「今だったらドバイがオススメですよ」と声をかけられた。

旅の計画は自分で立てたいタイプなので、
誰かに勧められて、あっさり旅が決まったのは、
後にも先にも、あの時だけだ。

初めての中東。
ドバイは、私の抱いていたイメージを裏切らなかった。

&TRAVEL連載「宇賀なつみ わたしには旅をさせよ」年末年始ドバイ弾丸旅行より

最先端の建築物や豪華なショー。
レストランやバーはとてもおしゃれで、
ホテルもショッピングモールも高速道路も、とにかく大きい。
何もかもが規格外で、目まいがしそうだった。

ただ、旧市街に入ると雰囲気はガラッと変わる。
昔ながらというか、中東らしい空気を感じることができた。

ぜいたくをしようと思えばいくらでもできるのだろうが、
物価は安く、庶民的な店も多いので、
節約しようと思えばいくらでもできる。
なんだか不思議な都市だった。

競馬場で行われるライブに行ったり、
砂漠でラクダに乗ったりもしたが、
一番の目的は、ビーチで行われるカウントダウンパーティー。

事前にインターネットでチケットを買い、
ちょっぴりおしゃれをして出かけた。

広いビーチはきちんと整備され、
幾つものエリアに分かれていて、テーマパークのよう。
危ない感じもなく、とにかく皆、楽しそうに歌ったり踊ったりしていた。

いよいよカウントダウンが始まる。

しかし、5秒前になった瞬間、
さっきまで手に持っていたカメラがないことに気づいた。

あれ? 落としたかな?
足元を気にしているうちに、年を越してしまった。

「ハッピーニューイヤー!!」

一斉に花火が上がる。
周りの人は次々と、乾杯したり、抱き合ったり、キスをしたりしている。

カメラがない!!

私はハッピーではなかった。

新しいカメラなのに。
明日帰らなくてはいけないのに。
この旅で撮った写真がたくさん入っているのに。

その後、周りの人たちが一緒に探してくれたのだが、
全く見つからず、諦めてホテルに戻った。
親友は、ずっと慰めてくれていた。

&TRAVEL連載「宇賀なつみ わたしには旅をさせよ」年末年始ドバイ弾丸旅行より

翌朝、どうしても諦め切れず、
もう一度探しに行きたいと言い出した私に、
彼女は文句ひとつ言わず、ついて来てくれた。

既に解体工事が始まっていたのだが、
ビーチには、まだ物が散乱していた。

Tシャツにタオル、片方だけのハイヒール。
アクセサリー類もたくさんあったが、
やはり、カメラは見つからなかった。

盗まれたのだろうか。
直前まで手に持っていたのに、
なくなっているなんて、どういうことだろう。

ついていない。
今年は良い年になりそうにないなぁ。

落ち込んで帰ろうとしていたら、
工事スタッフの一人が声をかけてきた。
事情を説明すると、こんな言葉をかけてくれた。

「何かをひとつなくしたら、また新しい何かが手に入るよ。
 ハッピーニューイヤー!!」

そうか。そうなんだ。
せっかくドバイまでやって来て、何を落ち込んでいるんだろう。
過ぎてしまったことは仕方ない。
とにかく前を向かなければ。

ハッピーかどうかは、何が起きたかではなくて、
どう考えるかで決まるんだ。

そんなわけで、ここで使用している写真は、
カメラ紛失後、スマートフォンで撮っていたものだけ。
カウントダウンの瞬間は、もちろんない。
それもそれで、面白くて良いなと思う。

それに、今考えてみると、2013年は良い年だった。
素晴らしい出会いに、感謝。

&TRAVEL連載「宇賀なつみ わたしには旅をさせよ」年末年始ドバイ弾丸旅行より

このエッセーを書いていたら、ちょうど彼女から連絡が来た。
「久しぶりに温泉でも行こうよ」

学生時代から、数え切れないほど一緒に旅をしてきたけど、
彼女に子供が産まれてからは、まだ1度も行っていなかったっけ。

さて、どこに行こうかな。
今度はカメラをなくさないようにしなくちゃ。

連載「宇賀なつみ わたしには旅をさせよ」バックナンバーはこちら

PROFILE

宇賀なつみ

東京都出身。テレビ朝日「報道ステーション」の気象キャスターとしてデビュー。同番組スポーツキャスターとして、トップアスリートへのインタビューやスポーツ中継等を務めた後、「グッド!モーニング」「羽鳥慎一モーニングショー」など、情報・バラエティー番組を幅広く担当。2019年にフリーランスとなり、現在はテレビ朝日「池上彰のニュースそうだったのか!!」や、自身初の冠番組「川柳居酒屋なつみ」を担当。TBSラジオ「テンカイズ」やTOKYO FM「SUNDAYʼS POST」など、ラジオパーソナリティーにも挑戦している。

こんな大人になりたい。瀬戸内の船旅 宇賀なつみがつづる旅(4)

一覧へ戻る

皆生、名建築のホテルを訪ねて 宇賀なつみがつづる旅(6)

RECOMMENDおすすめの記事