永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶

(44)このあと、忘れ得ぬ出会いが 永瀬正敏が撮ったカンヌ

国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。フランスのカンヌの、カフェが並ぶ通り。何げなくこの1枚を撮った直後、忘れ得ぬ出会いがやってきます。

(44)このあと、忘れ得ぬ出会いが 永瀬正敏が撮ったカンヌ

©Masatoshi Nagase

ここは南フランス、カンヌの街角。カメラを持ってあてもなくぶらぶら歩いていたら、カフェがたくさん並んでいる通りに出た。屋外のテーブルでお茶を楽しむ人たちという光景が、いかにもフランスらしいなと思って、写真を撮っていた。

カフェが集まっている場所を狙って出かけていったわけではない。ここで撮ったのも、目に入った光景が何かいいなあ、と思ったから。でも、ここで立ち止まらなければ起こりえなかった、忘れ得ぬ出会いが、この後に待っていた。<この人から目が離せなかった 永瀬正敏、カンヌの路地裏で>で紹介した男性が現れたのだ。

そこから先は、もう男性にくぎ付けで、写真を撮り続けた。同行していたテレビ局のクルーも置き去りにして。この穏やかな風景は、いわばコトの前の静けさ。男性が現れてからの、嵐ではないけれど夢中になってしまった感覚との落差を、いまもはっきり思い出す。

この時、カンヌ国際映画祭が開催中だった。でも、リゾート地だからだろうか、街の人たちは急いでいるふうでもなく、自分のペースを乱さない。そこもいいな、と思った。穏やかで幸せな時間が写り込んでいる1枚でもある。

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PROFILE

永瀬正敏

1966年宮崎県生まれ。1983年、映画「ションベン・ライダー」(相米慎二監督)でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督「ミステリー・トレイン」(89年)、山田洋次監督「息子」(91年)など国内外の約100本の作品に出演し、数々の賞を受賞。カンヌ映画祭では、河瀬直美監督「あん」(2015年)、ジム・ジャームッシュ監督「パターソン」(16年)、河瀬直美監督「光」(17年)と、出演作が3年連続で出品された。近年の出演作に常盤司郎監督「最初の晩餐」、オダギリジョー監督「ある船頭の話」、周防正行監督「カツベン!」、甲斐さやか監督「赤い雪」など。写真家としても多くの個展を開き、20年以上のキャリアを持つ。2018年、芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞。

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