カメラと静岡さとがえり

魚好きを大満足させるまち 焼津市

スリランカと日本を拠点に活躍する写真家の石野明子さんが故郷を撮り歩く連載、「カメラと静岡さとがえり」。第9回は、魚好きにはお楽しみがいっぱい!の焼津市を歩きます。おいしい海の幸はもちろん、自由に釣りを満喫できる天然の釣り堀から、地域おこし協力隊が教えてくれる釣り教室、締めはエキチカの温泉まで。石野さんが自信を持ってオススメするスポットを盛りだくさんでご紹介します。
(トップ写真は「金寿し 地魚定」の海鮮丼)

海とつながった天然の釣り堀

日本語の「津」が船着場や港を意味している通り、焼津市は江戸時代よりカツオを中心とする漁業の町としてとても有名だった。明治以降は遠洋漁業が活発となりマグロ、カツオの水揚げ量も日本有数の港となる。そんな焼津は、魚好きにはたまらない町なのである。

JR焼津駅から車で5分程度の場所にある親水広場「ふぃしゅーな」のフィッシングゾーンでは、無料で釣り堀が楽しめる。しかも海とつながった天然の釣り堀で、アジやイワシ、メジナにクロダイ、アオリイカなどなど書ききれないほどの豊かな駿河湾の魚たちが泳いでいる。

ふぃしゅーな

ふぃしゅーなは天然の釣り堀

釣ざおは持って来なくとも広場からすぐ近くの釣具店でレンタルできるのもうれしいところ。広場内には自然の海の満ち引きを利用した潮だまりゾーンもあるので、子供たちの生き物観察の場にピッタリだ。

釣りざおショップ

釣りざおレンタルをしているフィッシングショップ「3海里」

たとえ釣れなくても大丈夫! 「ふぃしゅーな」は漁港のすぐそば、市場食堂や海鮮料理のお店も多いのである。私がランチに訪れたのは焼津港の目の前の「金寿し 地魚定」だ。ここの目玉は平日限定ランチの握り20貫盛り。なんと1000円(税別)なのである。

握り

「金寿し 地魚定」のランチ限定握り20貫

赤酢の小ぶりのシャリで、小食な人でも完食できてしまう。ネタはもちろん新鮮なマグロや青魚、白身、生しらすに名産の桜海老もあり、とバラエティー豊富。もし限定ランチが終わってしまったなら海鮮丼がおすすめだ。こちらも豊かな駿河湾の恵みが味わえる。

ミシュラン料理人が頼る焼津の魚屋

さて、焼津の町に日本が世界に誇る魚屋さんがあることをご存知だろうか。そのお店の名は「サスエ前田魚店」。

前田尚毅さん

「毎日魚しか食べてない」と現店主の前田尚毅さん

創業60年以上の魚屋だが、ここへは世界中のミシュラン星を持つ料理人らが頼ってくる。その理由は、小さな頃から市場に通い、仕事を手伝い、毎日魚を食べ、魚の英才教育を受けてきた5代目店主・前田尚毅さんの、魚を見る確かな目。風や海の様子、魚の手触り、道具の手入れと常に感覚を研ぎ澄ませていないと自分が納得できる仕事ができないと言う。「だから一日だって休みたくないんです」と。そして実際に休んでいない。

前田さん

魚を見つめる前田さんの目は鋭い

前田さんは一般のお客様も同じように大事だと言う。お客さんの3割は毎日来てくれるそうだ。それは店員さんが食べ方やレシピの提案をしてくれるなど買い物が楽しくなる魚屋だから。サスエではお刺身の切りおきはしない。魚が一番おいしいタイミングでさばき、並べる。

刺し身

地元の主婦曰く「ここで買ったら他のところでは買えない」とのこと

ショーケースに並ぶお刺身たちはキラキラしている。そして値段も良心的だ。店内で「キンメ(金目鯛)のお刺身買ってようー!」と床にぐずり倒れる小さな子供もいるのだとか(笑)。ここにくると皆魚が大好きになってしまうのだ。「日本の魚はおいしい。そしておいしく食べる技術がある。それを伝えることが専門店の使命です」と前田さんは語る。海外に出て本当にそう思う。こんなに食材を丁寧に扱って、感謝する国は他にはないと思う。その日の最高においしい魚で作る日替わり寿司も絶品なので、ドライブ中に立ち寄るのはいかがだろうか。

送ってもらってでも食べたいつくだ煮

続いて焼津土産におすすめのつくだ煮を紹介したい。加工食品としてマグロのつくだ煮は色々なところであるのだが、私の一押しは「(いちにんべん)大畑食品」が製造するマグロのつくだ煮だ。ここの特徴はなんといっても柔らかさと優しい甘さ。マグロの生利節(なまりぶし・マグロの身を蒸したもの)を手作業で角切りにし、創業から変わらぬ秘伝の味付けで炊いている。

つくだ煮

マグロのうまみが感じられる優しい味わい

こんなに柔らかいつくだ煮を私は他に知らない。ひとつ食べたら箸がとまらなくなることを約束する。ちなみに私は日本に住む家族に頼んで、私がいま暮らしているスリランカまで国際便で送ってもらっている。

地域おこし協力隊と挑戦する沖釣り

冒頭で釣りについて触れたが、もうちょっと本格的にやってみたい方におすすめのアクティビティがある。それは釣り船に乗って沖釣りに出かけること。そのこと自体は珍しいことではないのだが、焼津には焼津市地域おこし協力隊の三浦愛さんという女性がいる。

三浦さん

イタリアへの料理留学の経験もある、焼津市地域おこし協力隊の三浦愛さん

彼女は釣り好きが高じて焼津に移住してしまったほどの釣り好きなのだ。彼女が企画している釣り教室は本来なら1日通してやるところを初心者にも挑戦しやすい3時間に設定。道具選びも彼女が手伝ってくれる。愛さんが海の楽しさを子供に話してくれて、誰でも参加しやすい。そして意外とお子さんが大物を釣り上げることもあるそうだ。

釣り

三浦さんの釣り教室、子どもだって釣り上げる! (愛さん提供)

手ぶらで参加できるプランは8000円(税込)、時間は週末の午前と午後に開催しているが平日も応相談とのこと。愛さんは「たくさんの人に海を知って好きになってもらいたい。それが環境や食べ物を大事にすることにつながると信じています」と語る。「でもまずは海で楽しい思い出をいっぱい作っていただきたいです!」とも。五感が刺激される体験になることは間違いない。愛さんに相談すれば、釣った魚を持ち込み料理してくれる飲食店も教えてくれる。

釣りの後のお楽しみ、温泉で体の芯まであたたまる

そして釣り後のお楽しみには、焼津駅に隣接した「エキチカ温泉 くろしお」がある。

くろしお

地下1500メートルからくみ上げられる天然温泉(エキチカ温泉くろしお提供)

そこに愛さんの釣り教室の釣果を持ち込むと、ひと風呂浴びている間に料理してくれるのだ。これは愛さんの企画との特別コラボ。他では出来ない体験だ。釣った魚に合わせてお刺身やフライなど、さらにごはんや汁物、うどんもつくなどボリュームは満点! 入浴料と食事(調理料込み)で2000円(税込)だ。ここ「くろしお」は天然温泉でナトリウムが豊富に含まれている。しょっぱく少し苦味があるお湯で、体が芯まであたたまる。

くろしお

朝10時から翌朝9時までの23時間営業で夜通し過ごせ、女性専用休憩室もある

館内にはゴロゴロできるスペースや読書スペース、子供のためのプレイエリアがあり、「家族3世代が一緒に過ごせる」がコンセプト。

派手な町ではないけれど、人と人との距離が近くて、愛される老舗がちゃんと残っていて、ごはんがおいしい町。魚好きがたくさんいて、そして魚に感謝している町、それが焼津なのだ。

フォトギャラリーはこちら

金寿し 地魚定
http://www.jizakana-tei.com/index.html

サスエ前田魚店
http://sasue-maeda.com/

いちにんべん 大畑食品
https://www.ichininben.com/
マグロのつくだ煮(角煮)(230g)570円(税込)

三浦愛さん 釣り教室情報
https://ailoveyaizu.com/

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PROFILE

石野明子

2003年、大学卒業後、新聞社の契約フォトグラファーを経て06年からフリーに。13年~文化服装学院にて非常勤講師。17年2月、スリランカ、コロンボに移住して、写真館STUDIO FORTをオープン。大好きなスリランカの発展に貢献したいと、その魅力を伝える活動を続けている。2019年4月にイカロス出版よりガイドブック「五感でたのしむ! 輝きの島スリランカへ」(税込み1760円)が出版された。
http://akikoishino.com/
http://studio-fort.com/

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