永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶

(45)何だろう レストラン卓上の色鉛筆 永瀬正敏が撮ったカンヌ

国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回は、フランスのカンヌにあるレストランで撮った、卓上の色鉛筆。いったい、なぜ?

(45)何だろう レストラン卓上の色鉛筆 永瀬正敏が撮ったカンヌ

©Masatoshi Nagase

フランスはカンヌのイタリアンレストラン。屋外に置かれていたテーブルのそれぞれに、色鉛筆を何本も入れたカップが置いてあった。店員さんが注文を記すときに使うのだろう。それがペンではなく、普通の鉛筆でもなく、すごくカラフルな色鉛筆、というところがいい。

近くのテーブルでは子供たちが、ランチョンマット代わりに敷かれた紙に、色鉛筆を使って落書きをしていた。こんな色とりどりの色鉛筆が目の前にあったら、そうしてしまいたくなる気持ちもわかる。もしかしたら、子供が来るからわざわざ置いたのだろうか。注文を記すには薄すぎる色もあったから。

僕自身はここでお茶を飲んだわけでも、食事をしたわけでもない。でも、確か赤色をしていたカップに入った色鉛筆の束は、とても目をひき、写真に撮りたくなった。結構おしゃれな感じのカップや色鉛筆だったのに、誰も持ち去ったりしないことにも感心した。

よく考えると、モノクロ写真で見る色鉛筆は、なかなかおもしろい。それぞれ、どんな色なのだろうと、想像力をかきたてられる。答えを出してしまっては、おもしろくない。色は写真を見た方につけてほしい。そう願っている。

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PROFILE

永瀬正敏

1966年宮崎県生まれ。1983年、映画「ションベン・ライダー」(相米慎二監督)でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督「ミステリー・トレイン」(89年)、山田洋次監督「息子」(91年)など国内外の約100本の作品に出演し、数々の賞を受賞。カンヌ映画祭では、河瀬直美監督「あん」(2015年)、ジム・ジャームッシュ監督「パターソン」(16年)、河瀬直美監督「光」(17年)と、出演作が3年連続で出品された。近年の出演作に常盤司郎監督「最初の晩餐」、オダギリジョー監督「ある船頭の話」、周防正行監督「カツベン!」、甲斐さやか監督「赤い雪」など。写真家としても多くの個展を開き、20年以上のキャリアを持つ。2018年、芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞。

(44)このあと、忘れ得ぬ出会いが 永瀬正敏が撮ったカンヌ

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