【写真特集】伊・トスカーナ12町村で出会ったかわいいネコたち

イタリア・トスカーナ州シエナに20年以上暮らすジャーナリスト夫婦、大矢アキオさん・麻里さんが、トスカーナの12町村で出会ったネコたちを、代表的風景とともに32枚の写真でお届けします。記事末には「ネコに優しいトスカーナ」と題したコラムも。中世・ルネサンスの風景とかわいいニャンコを訪ねて、トスカーナにカメラ旅はいかがでしょう。

(文:大矢アキオ Akio Lorenzo OYA/写真:大矢麻里 Mari OYA)

1.クリスタル・ガラスの産地、コッレ・ディ・バル・デルザ

コッレ・ディ・バル・デルザは、いにしえからクリスタル・ガラスの産地として知られる

コッレ・ディ・バル・デルザは、いにしえからクリスタル・ガラスの産地として知られる

コッレ・ディ・バル・デルザにおける丘の上の旧市街「コッレ・アルタ」で迎えてくれたネコ

コッレ・ディ・バル・デルザにおける丘の上の旧市街「コッレ・アルタ」で迎えてくれたネコ

昼どき、いくつもの窓から食器の音や会話が聞こえるなか、外でたたずんでいた

昼どき、いくつもの窓から食器の音や会話が聞こえるなか、外でたたずんでいた

夏は涼しく、冬は温かいれんがの上が、格好のくつろぎ処だ

夏は涼しく、冬は温かいれんがの上が、格好のくつろぎ処だ

2.ダビンチによる戦争画の舞台、アンギアーリ

レオナルド・ダビンチによる戦争画「アンギアーリの戦い」の舞台となったアンギアーリにて

レオナルド・ダビンチによる戦争画「アンギアーリの戦い」の舞台となったアンギアーリにて

かつて外敵に対して固く扉を閉ざしていた門の跡を、ネコが自在に往来する

かつて外敵に対して固く扉を閉ざしていた門の跡を、ネコが自在に往来する

3.白大理石が名物、カッラーラ

カッラーラ旧市街の東7kmにあるコロンナータ村から、白大理石の採掘場を望む

カッラーラ旧市街の東7kmにあるコロンナータ村から、白大理石の採掘場を望む

ある夏の日、カッラーラ名物、白大理石の上で涼むネコ

ある夏の日、カッラーラ名物、白大理石の上で涼むネコ

4.静かな村は、いにしえの領地争いの舞台、カーゾレ・デルザ

16世紀にフィレンツェ領となるまで、激しい領地争いが繰り返されたカーゾレ・デルザ。今は人口3800人余りののどかな村

16世紀にフィレンツェ領となるまで、激しい領地争いが繰り返されたカーゾレ・デルザ。今は人口3800人余りののどかな村

5.独自のカラーを持つ中世都市、シエナ

フィレンツェから南に約60キロメートルにある中世都市シエナ

フィレンツェから南に約60キロメートルにある中世都市シエナ

シエナ旧市街の夕刻、「シエナ色」の名で知られるカラーの瓦にたたずむネコ

シエナ旧市街の夕刻、「シエナ色」の名で知られるカラーの瓦にたたずむネコ

ある邸宅の軒先に、生まれて間もない子ネコが。主から「譲りますよ」と声をかけられた

ある邸宅の軒先に、生まれて間もない子ネコが。主から「譲りますよ」と声をかけられた

6.ボッカチオゆかりの地、チェルタルド

中世イタリア文学の巨匠ボッカチオゆかりの地、チェルタルド

中世イタリア文学の巨匠ボッカチオゆかりの地、チェルタルド

ボッカッチョの墓がある聖ヤコポ・エ・フィリッポ教会近くで

ボッカチオの墓がある聖ヤコポ・エ・フィリッポ教会近くで

7.中世の特徴的な家屋が残る、コルトナ

レプッブリカ広場の市庁舎は、古代ローマ遺跡の上に12世紀に建てられ、16世紀に現在の姿になった

レプッブリカ広場の市庁舎は、古代ローマ遺跡の上に12世紀に建てられ、16世紀に現在の姿になった

コルトナを象徴するヤンネッリ通りにもネコがいた

コルトナを象徴するヤンネッリ通りにもネコがいた

コルトナのヤンネッリ通りにて。2階部分が張り出しているのは、中世のころ1階の面積を基準に課税されたため

コルトナのヤンネッリ通りにて。2階部分が張り出しているのは、中世のころ1階の面積を基準に課税されたため

コルトナの旧市街は、迷路のような小道が張り巡らされている。先程会ったネコともう一度鉢合わせすることも

コルトナの旧市街は、迷路のような小道が張り巡らされている。先程会ったネコともう一度鉢合わせすることも

8.トスカーナ群島のひとつ、ジリオ島

トスカーナ群島のひとつ、ジリオ島は本土からフェリーで約1時間。白ワイン「アンソニカ」でも知られる

トスカーナ群島のひとつ、ジリオ島は本土からフェリーで1時間。白ワイン「アンソニカ」でも知られる

ジリオ島の面積は日本の父島とほぼ同じ24平方キロメートル。港に向かって下る道で、筆者をいぶかしげに見るネコ

ジリオ島の面積は日本の父島とほぼ同じ24平方キロメートル。港に向かって下る道で、筆者をいぶかしげに見るネコ

ジリオ島の記事はこちら

9.「樽(たる)転がし」が人気、モンテプルチァーノ

モンテプルチァーノの市庁舎。毎年夏の人気行事「樽(たる)転がし」では、ゴール地点として白熱する

モンテプルチァーノの市庁舎。毎年夏の人気行事「樽(たる)転がし」では、ゴール地点として白熱する

聖ビアージョ教会の横にて。商店の縄のれん前は、風通しが良くて心地良いのに違いない

聖ビアージョ教会の横にて。商店の縄のれん前は、風通しが良くて心地良いのに違いない

聖ビアージョ教会の司祭館から顔を出していたネコ

聖ビアージョ教会の司祭館から顔を出していたネコ

モンテプルチァーノの記事はこちら

10.毎年秋は「栗祭り」、ピアンカスタニャーイオ

ピアンカスタニャーイオの城塞(じょうさい)。これは毎年秋に行われる「栗祭り」の日

ピアンカスタニャーイオの城塞(じょうさい)。これは毎年秋に行われる「栗祭り」の日

トスカーナの庭を飾る典型的なテラコッタ壺(つぼ)の前で

トスカーナの庭を飾る典型的なテラコッタ壺(つぼ)の前で

祭りに訪れた人々を、興味津々で見守る

祭りに訪れた人々を、興味津々で見守る

11.ユダヤ人居住区があったことでも知られる、ピティリアーノ

凝灰岩の上にそびえるピティリアーノ。16世紀、ローマ教皇による迫害から逃れてきたユダヤ人を保護したことで知られる

凝灰岩の上にそびえるピティリアーノ。16世紀、ローマ教皇による迫害から逃れてきたユダヤ人を保護したことで知られる

ピティリアーノは、13世紀末からフィレンツェに明け渡される16世紀まで、地方貴族オルシーニ家によって治められた

ピティリアーノは、13世紀末からフィレンツェに明け渡される16世紀まで、地方貴族オルシーニ家によって治められた

3月19日、聖ヨセフの日には、春を迎える祭りが催される。ただし実際の春はまだまだ。ネコも日だまりを求める

3月19日、聖ヨセフの日には、春を迎える祭りが催される。ただし実際の春はまだまだ。ネコも日だまりを求める

12.オルチャ渓谷を望む、ピエンツァ

ピエンツァから世界遺産のオルチャ渓谷を望む

ピエンツァから世界遺産のオルチャ渓谷を望む

ピエンツァは、15世紀の教皇ピウス2世が故郷を大改造しようとした名残。今は穏やかな観光地だ

ピエンツァは、15世紀のローマ教皇ピウス2世が故郷を大改造しようとした名残り。今は穏やかな観光地だ

食料品店からは、名産の羊乳チーズ「ペコリーノ」の香りが漂う。昼下がり、うたた寝の寸前か

食料品店からは、名産の羊乳チーズ「ペコリーノ」の香りが漂う。昼下がり、うたた寝の寸前か

オルチャ渓谷の記事はこちら

ネコに優しいトスカーナ

二十数年前、イタリア・トスカーナ州シエナで筆者と妻が最初に生活したのは、れんが造りの建物の6階部分、日本でいう1Kの小さな部屋だった。

向かいの窓には、おばあさんが暮らしていて、毎日のように「シェンディ!」と叫んでいる。「降りなさい」という意味だ。あまりにシェンディ、シェンディと聞こえてくるので、それは筆者が最初に現地で覚えたイタリア語になってしまった。

しばらくして、おばあさんが叫んでいる相手が人間ではなく、ネコであることに気がついた。テーブルに上がろうとするたび、たしなめていたのだった。

イタリア人は動物好きだ。イタリアの社会・経済調査機関チェンシスが2019年に発表したEU(欧州連合)におけるペットのデータ(http://www.censis.it/sites/default/files/downloads/Rapporto.pdf)によると、各国の人口100人あたりのペット数は、イタリアの53.1がハンガリー54.2に次ぐ2位である。とくにイタリアでネコは人気がある。同じくチェンシスによると、ネコの数748万匹は、鳥の1289万羽に次ぐ。

筆者が住むトスカーナ州で、中世・ルネサンスの風景そのままの村や町を歩いていると、ネコにたびたび出くわす。

これも数字を確認して納得した。イタリアの環境保護団体レーガンビエンテが2019年に発表したデータ(http://legambienteanimalhelp.it/animalincitta/)によると、トスカーナ州内におけるネコの数は4万6357匹だ。それより多いのは、ミラノを州都とするロンバルディア州、ベネチアを州都とするベネト州、ボローニャを州都とするエミリア・ロマーニャ州、そしてナポリを州都とするカンパニア州、といずれも大都市を擁する4州のみである。

彼らの好物である魚に恵まれた港湾都市ならまだしも、そうでない町村でもネコが悠々と闊歩(かっぽ)する姿を見る。

背景には、イタリアの他地方に先駆けて導入された自動車の進入規制があろう。

たとえば、シエナ市のHP(https://www.comune.siena.it/La-Citta/Polizia-Municipale/Serv-traffico-concessioni-ZTL/Zona-a-traffico-limitato-Ztl)によると、シエナでそれが施行されたのは、遠く1960年代にさかのぼる。以来、小さな周辺町村も追随した。それによって、歩行者だけでなく、動物にとっても、より穏やかに生活できる環境が実現したのである。町村の多くが、かつて防衛上の理由から標高が高いところに造られた丘上都市ゆえ、通過するだけの車が限られているのも、さらにネコが容易に往来できる街路を実現している。

あまりにネコが悠然としていてレンズを向けても逃げないところは、撮影に慣れきった子どもモデルのようで、ときおり憎らしくさえなる。

蛇足ながら、日本人としてはここで紹介したピアンカスタニャーイオの「ニャーイオ」に、ネコとのご縁を感ずる。

地元名産・大理石の上にたたずむネコ、個人商店名物・縄のれんの前で客を出迎えるネコ、風合いあるテラコッタのつぼとともに鎮座するネコ。

あなたが訪れたときも、彼らはそのような姿で迎えてくれるに違いない。

PROFILE

  • 大矢アキオ

    イタリア文化コメンテーター。東京生まれ、国立音大卒(ヴァイオリン専攻)。二玄社『SUPER CAR GRAPHIC』編集記者を経て独立、イタリア・シエナに渡る。雑誌、webに連載多数。実際の生活者ならではの視点によるライフスタイル、クルマ、デザインに関する語り口には、根強いファンがいる。NHK『ラジオ深夜便』レギュラーレポーター。訳書に『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、著書に『イタリア発シアワセの秘密』(二玄社)など。

  • 大矢麻里

    イタリアコラムニスト。東京生まれ。短大卒業後、幼稚園教諭、大手総合商社勤務を経て1996年からトスカーナ州シエナ在住。現地料理学校での通訳・アシスタント経験をもとに執筆活動を開始。NHKテキスト『まいにちイタリア語』など連載多数。NHK『マイあさラジオ』をはじめラジオでも活躍中。著書に『イタリアの小さな工房めぐり』(新潮社)、『意大利工坊』(馬云雷訳 華中科技大学出版社)、『ガイドブックでは分からない 現地発!イタリア「街グルメ」美味しい話』(世界文化社)がある。

トリニダで出会った馬小屋を営むアントニオ

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