太公望のわくわく 釣ってきました

月夜の磯で、癒やしのメバリング 神奈川県・三浦半島

西へ東へ、海へ川へと旅して釣りする太公望たちの奮闘記です。魚との知恵比べ、釣った魚で一杯……。目的は人それぞれながら、闘いの後の心地よい疲労と旅情は格別。今回は、写真家の猪俣博史さんが、三浦半島の磯を巡りルアーでメバルを狙う「メバリング」に挑戦です。幻想的な風景の写真とともにお届けします。

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久々に夜のメバリングへ


かれこれ10年近く前、ルアーでメバルをねらう「メバリング」という釣りに熱中し、毎夜のように出かけていた時期がありました。 仕事から帰り、子供たちが寝静まった夜遅くから出撃開始。夜半過ぎまで、ポイントからポイントへと駆け巡る。しかも、最初の頃は、明かりがあって足場のよい場所中心だったのが、やり込むうちに次第に夜の磯へと向かうようになり……。これを12月~4月の寒い夜に連日のようにやっていたのですから、よっぽどのハマりようです。

最近はすっかりご無沙汰でしたが、先日ふと思い立ち、数年ぶりに出撃してきました。

さて、この日は満月後の中潮で、北東の風1メートル以下のほぼ無風の凪(なぎ)予報。月夜の静かな海は、釣りの条件としてはイマイチだったりするのですが、ブランクのある身としては、このくらいがちょうどよいでしょう。

月夜の磯で、癒やしのメバリング 神奈川県・三浦半島

対岸に伊豆半島の街明かりが見える

しかし、釣り場は夜の磯。装備は万全を期さねばなりません。ポケットがたくさん付いたフローティングベストに必要な道具類をすべて収納し、大光量ヘッドライトにスパイクシューズ装備で、ロッド(竿=さお)片手に磯をあちこち歩き回ります。

19時すぎに入磯。月が出る前の暗闇の磯歩きは、久しぶりだとそこはかとなく怖い。波風がある状況だったら間違いなく即座に退散している私です。この日の満潮は18時前後。大きく潮が引く干潮は深夜0時付近なので、まだ潮位は高い状態。よく「上げ三分、下げ七分」など、潮が動く時間帯に魚の活性が上がると言われますが、まだそれほど潮は動いていないようすです。

手始めに、メバリングの王道リグ(仕掛け)といわれる、0.5~2グラムのオモリがハリと一体化したジグヘッドにワーム(小魚や虫を模した柔らかい素材のソフトルアー)をセットしてスタート。久しぶりで釣り勘が鈍っているためか、あまり釣れる気がしませんが、とにかくロッドを振り続けます。

幻想的な磯の月 されど釣果は……

月夜の磯で、癒やしのメバリング 神奈川県・三浦半島

波に削られた岩肌を月明かりが照らす

ヒュン! 冷たく澄んだ空気を切る乾いたキャスト音だけがあたりに響きわたるなか、ふと岩場の向こうに目をやると、そこには昇ってきたばかりの月が浮かびあがっていました。深い藍色の夜空に浮かぶ月が、鏡面のような静かな海面を煌々(こうこう)と照らす。普段見ることのない冬の月夜の静かな磯。その光景はなんとも神秘的で、しばし手を止めて眺めてしまいます。寒い冬に夜にわざわざ釣りに出かける理由は、釣果だけでなく、この非日常の癒やしの光景を求めていたからなのかもしれません。

とはいえ、やはり釣りは釣りなので、魚も釣りたい。しかし、一向に魚からのコンタクトはありません。ワームカラーをローテーションし、水流が複雑になっている磯際など、よりタイトなポイントを根がかり覚悟で攻めますが、それでも反応はなしです。

メバルという魚は、地域によって違いはありますが、通常12~1月が産卵期。産卵前には大型が荒食いをみせるものの、産卵が終わる2月に入るとしばらく口を使わなくなる傾向にあるので、ちょっと厳しいのか。

月夜の磯で、癒やしのメバリング 神奈川県・三浦半島

メバル用の小型ミノープラグ。フローティング(浮かぶタイプ)、シンキング(沈むタイプ)など、いろいろある

ルアーを変え、釣り方も変えたら……

と、悪戦苦闘しているうちに、あっという間に干潮の下げ止まりまで1時間ほどに。だいぶ潮が引き、普段では水がかぶっている岩礁地帯の岬が露出してきたので、その先端部まで移動します。ここは潮流があったので、ルアーをフローティングタイプ(浮かぶタイプ)のミノープラグ(小魚の形をしたハードルアー)にチェンジし、投げたらリトリーブ(リールを巻くこと)せずにルアーを潮の流れにユラユラと乗せるドリフト釣法で攻めることに。つまり、産卵後に物陰で流れてくるエサをじっと待っているメバルにアピールする作戦です。

月夜の磯で、癒やしのメバリング 神奈川県・三浦半島

ファーストヒットのメバル(20センチ)。ワームで釣れるより、なぜかミノープラグで釣れたほうがうれしい

その時、竿先にコンコンと反応が……。「みごと作戦的中!」と自己満足に浸るのはまだ早い。ここで焦るとかなりの確率でバラすので、ひと呼吸おいてロッドを大きくあおります。すると次の瞬間、ロッドがギュイーンとしなりラインが走り出しました。上がってきたのは20センチ。数年ぶりに釣ったメバルです。

月夜の磯で、癒やしのメバリング 神奈川県・三浦半島

力強い引きで上がってきた23センチのメバル

すかさず、周辺を攻めると今度はさらに強い引き。今度はサイズアップの23センチです。メバルは大物でも30センチ強と、決して大きな魚ではないのですが、その引きはかなり強烈なので、このサイズになってくるとかなり楽しめます。その後、20センチ弱を2本追加。いい感じになってきたところで、ピタリと反応がなくなりました。時計を見ると潮止まりの時間だったので、ここでストップ。なんとか4匹を釣り上げました。

月夜の磯で、癒やしのメバリング 神奈川県・三浦半島

目が大きく張り出していることが「メバル」という名の由来になったとも言われる

ちなみに、釣った魚はすべて海にお帰りいただきました。メバルは食しておいしい魚ですが、私はすべてキャッチ&リリースです。魚と対峙(たいじ)する癒やしのひと時を過ごせたので、それで満足なのです。

「わざわざ寒い思いをして釣りに行きながら、釣った魚をぜんぶ放して帰ってきて何が楽しいの??」と、 妻はいまだに理解できないようですが……。

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PROFILE

  • 釣り大好きライター陣

    安田明彦、猪俣博史、西田健作、石田知之、木村俊一

  • 猪俣博史

    写真家
    1968年神奈川県横須賀市生まれ。慶応義塾大学商学部卒業。卒業後、カナダを拠点に世界各地を放浪。帰国後、レコード会社、広告制作会社勤務などを経て1999年にフリーに。鎌倉、葉山を拠点に、ライフスタイル系のほか、釣り系媒体なども手がけ、場の空気感をとらえた取材撮影を得意とする。&wでは「鎌倉から、ものがたり。」の撮影を担当。神奈川県三浦半島の海辺に暮らす。

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