楽しいひとり温泉

温泉+雪景色 都会を脱出して白銀の秘湯へ 「乳頭温泉郷 秘湯 鶴の湯温泉」

冬の日本といえば、やっぱりこの情景が思い浮かびます。青白いにごり湯の浴槽から立ち昇る湯けむりが、何とも言えず幸せそうに手招きしています。雪が降るということは外は寒いわけで、そんな世界へ飛び出して身ひとつで温泉へどぼん。「あー、幸せ」と、つぶやいてしまうのですから不思議です。都会の忙しい日々から脱出して、秘湯時間を楽しむひとり旅もいいものです。
(トップ写真:「鶴の湯温泉」の混浴露天風呂)

■連載「楽しいひとり温泉」は、全国各地の温泉をめぐり、温泉・自然・食で美しくなる旅を研究する、温泉ビューティー研究家の石井宏子さんが、テーマごとにひとり温泉にぴったりなお宿を紹介します。

癒やしの温泉ユートピアに心が躍る

【動画】静寂に包まれる鶴の湯=鶴の湯提供

温泉の風景

小川の向こうに温泉の湯小屋や露天風呂が点在

秋田新幹線の田沢湖駅で降りたら、路線バスに乗り換えます。バス停「アルパこまくさ」からは、宿の送迎バスで向かいます。最後の3kmほどは林道になり、秘湯気分が高まります。ついに到着すると、雪景色の集落の向こうに、「乳頭温泉郷 秘湯 鶴の湯温泉」の湯けむりが見えてきます。

湯治棟

右の建物がひとり宿泊におすすめの湯治棟(二号館、三号館)

かつて秋田藩主の御殿湯だったころ、護衛のために建てられた本陣を再現したというかやぶき屋根の建物は、宿泊する部屋や食事処になっています。ランプの優しい明かりがいい感じ。

部屋

シンプルで居心地がいい湯治棟の部屋

ひとり温泉にぴったりなのが、かつては湯治に使われていた木造2階建ての湯治棟(二号館・三号館)。真っ白なしっくい壁の6畳一間のこぢんまりとした空間が、なんだか、こもる感じでほっとします。トイレは廊下にあって共同ですが、温水洗浄便座の温かな洋式トイレで、洗面所もすぐにお湯が出ます。こちらは1泊2食付きで税込み9830円~。

足元からぷくぷくと源泉が湧いてくる

温泉

足元から自然湧出(ゆうしゅつ)する温泉に感動する

青白い濁り湯と雪景色。これぞ憧れていた冬温泉の情景です。しんしんと雪が降れば、タオルを頭にのせて、まつげに雪を積もらせて湯のぬくもりに身を委ねる至福の時間。耳をすませると、ぷくぷくぷく、ぷくぷくぷくと、底から湧き上がる温泉のつぶやきが聞こえてきます。4本の源泉を別々の場所で楽しめるのですが、露天風呂は白湯源泉で、含硫黄・ナトリウム・カルシウム-塩化物・炭酸水素泉、pH6.6の中性でやわらかな肌ざわり。硫黄の働きで血行促進されて体の巡りがよくなり、ぽかぽかと温まります。

姫の道

女性専用内湯から混浴露天風呂へ向かう「姫の道」

名物の露天風呂は実は混浴。濁り湯とはいえちょっと勇気がいるものです。そんな時に手助けしてくれるのが「姫の道」。女性専用の内湯「中の湯」から外へ出て、小さな木戸を開けると岩にかこまれた細い温泉の通路が出現。ここで濁り湯の中へ身を沈めて、静々と露天風呂へ進むことができます。午後3時以降、翌朝の10時までは宿泊者専用になりますから、人が少なめのタイミングをみはからっていざ、挑戦。思い切って入ってみると、露天風呂は和気あいあい。この温泉に浸れた喜びをみんなで享受しています。
 

中の湯

三つの異なる温泉の入り比べも楽しい。こちらは中の湯

内湯も風情たっぷりですてきです。館内を湯めぐりすれば3本の源泉の入り比べができます。泉質としてはほぼ同じなのですが、白湯は、きりりとした爽やかな入り心地で湯上がりの肌はさらさらとします。中の湯は、柔らかな感触で肌がしっとり潤う感じ。黒湯は、体の芯までしっかり温まる温泉で、この地域の方言では「ぬぐだまりの湯」と呼ばれています。

宿のクライマックス、夕暮れを迎える準備

準備

宿にともすランプの準備をするスタッフ

チェックインの午後3時をすぎると、宿泊するゲストだけの時間が始まります。夕暮れ前にともりはじめるランプの準備。毎日毎日、ランプを磨き、癒やされる炎になるようにと、絶妙な形に芯をカットするそうです。食事処や部屋の囲炉裏へと炭を運ぶはんてん姿にもなんだかほっこりします。

囲炉裏の周りで味わう夕食で地元の味覚を満喫

夕食

夕食の膳。きのこや山菜など山の恵みたっぷり

湯治棟のゲストはかやぶき屋根の本陣にある食事処で食膳を囲みます。さっき温泉で会話をした方のお顔も見えて、ひとりの食事もさみしくない。お膳の上には地元の味覚がぎっしりです。

鍋

ふわふわの団子がおいしい山の芋の鍋

名物料理は山の芋の鍋。丸くて大きな地元神代産の山の芋をすりおろした、ふわっふわの団子。味付けは自家製みそで、豚バラ肉のうまみのあるスープ、そこにネギやセリを投入して、囲炉裏へと運ばれます。熱々、ふわふわ、うまうま……。こりゃ、たまらん。みんなで囲む秘湯の晩餐(ばんさん)は楽園のようでした。

夜の温泉、朝の温泉。寝ても覚めても温泉ざんまい

ロマンチック

ロマンチックな夜の鶴の湯温泉

夜になっても、やっぱり露天風呂へと向かいます。ランプの明かりで入る温泉は、この宿に泊まらないと味わえません。仕上げに内湯でさっと温まれば、骨の髄までぽっかぽか、人間湯たんぽのようになって、ぐっすり眠れます。

露天風呂

女性専用の露天風呂も足元から源泉が湧く

朝一番は、女性専用の露天風呂へ。こちらも足元からぷくぷくと温泉が湧いています。キラキラと朝日にゆらめく美しい温泉にうっとり。気が付けば、肌がしっとりつややかになっているようで、思わずニンマリしてしまいます。
冬の時期もすてきですが、4月下旬ごろからは、ミズバショウが咲く遊歩道を歩けるし、桜の名所も近いし、泉質が異なる乳頭温泉郷の湯めぐりも楽しそう。何度も訪れたい温泉です。

秋田県・「乳頭温泉郷 秘湯 鶴の湯温泉」
http://www.tsurunoyu.com/

■「楽しいひとり温泉」ポイント
1.ひとりだからこそ楽しめる秘湯時間
2.美しい濁り湯の温泉
3.みんなそろって囲炉裏でごはん

BOOK

温泉+雪景色 都会を脱出して白銀の秘湯へ 「乳頭温泉郷 秘湯 鶴の湯温泉」

全国ごほうびひとり旅温泉手帖 いい湯、いい宿、旅ごはん!

石井宏子さんの著書「全国ごほうびひとり旅温泉手帖 いい湯、いい宿、旅ごはん!」(世界文化社)が11月16日に出版されました。温泉ビューティー研究家・旅行作家ならではの、旅してみつけた、女性がひとりで安心して楽しめる温泉宿を紹介するハンディーな一冊。公共交通機関で行ける、自分へのごほうびで泊まりたい、いい宿を全国から厳選し、あわせて、女性目線で選んだ周辺の立ち寄り先、ランチやスイーツも取り上げます。ひとりでも楽しい観光列車も登場します。税別1400円。

PROFILE

石井宏子

温泉ビューティー研究家・トラベルジャーナリスト。日本・世界の温泉や大自然を旅して写真撮影・執筆をする旅行作家。テレビにも出演。温泉・自然・食で美しくなる旅を研究する。海外ブランドのマーケティング・広報の経験から温泉地の企画や研修もサポート。日本温泉気候物理医学会会員、日本温泉科学会会員、日本旅のペンクラブ会員、気候療法士(ドイツ)、温泉入浴指導員。著書に「癒されてきれいになる おひとりさま温泉」(朝日新聞出版)、「地球のチカラをチャージ! 海温泉 山温泉 花温泉 76」(マガジンハウス)、「感動の温泉宿100」(文春新書)などのほか、「全国ごほうびひとり旅温泉手帖 いい湯、いい宿、旅ごはん!」(世界文化社)が11月に発売された。

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