魅せられて 必見のヨーロッパ

これ、「亀の手」ですか? マドリードのサンミゲル市場で珍味発見

ツアーの行き先としてはあまりメジャーでないけれど、足を運べばとりこになる。ヨーロッパを知り尽くした作家・写真家の相原恭子さんがそんな街を訪ねる「魅せられて 必見のヨーロッパ」。今回は、スペイン・マドリードのサンミゲル市場で見つけた珍味のお話。見るからに「亀の手」なのですが、実は……。

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旅に出ると食文化への好奇心でいっぱい

「私は食べたり飲んだりするのが好き」。本やコラムにそう書くと体格がいいと思われるようで、私のビールの本の読者の方々から何度かデパ地下のビール売場で、「相原さんでしょ?」「おや、ビール飲むのにおなかが出てないんですね」などと声をかけられたことがあります。

特に旅路にあると、食文化に対する好奇心でいっぱいになります。でも変わったものを食べる勇気はなかなか出ない。ところが、図らずも、スペインのマドリードで奇妙なモノを食べることになりました。

出張の合間の休日に1人でマドリードを散歩し、サンミゲル市場へ行きました。ワインやビールなど多種類の飲み物はもちろん、タパスでも何でもスペインならではの食べ物がずらりと並ぶスタンドがひしめいています。どれもおいしそう!

これ、「亀の手」ですか? マドリードのサンミゲル市場で珍味発見

色とりどりの魚介類が並ぶスタンド

スペインは魚介類が多いのも魅力です。
観光客でごった返していて、歩くのも大変。写真を撮ろうとしても、飲み物と料理をスタンドで買ってテーブルを探す人たちにぶつかって迷惑になり、思うように撮れません。

突然目にとまった「亀の手」、実は……

これ、「亀の手」ですか? マドリードのサンミゲル市場で珍味発見

一皿20ユーロで売っていたのは

広い市場を歩きながら目にとまったのが、「ん? これ何?」という奇妙なモノ。「20ユーロとは、高いのね」と思いながら、よく見ると、亀の手にそっくり。「ガリシア州のペルセベ」と値札に書いてあります。岩についているフジツボの一種のようです。

そういえば前日、在スペイン日本国大使館のパーティーで「見た目が亀の手みたいな不気味な海産物があって、でも食べると濃い味わいでおいしいのよ」という話を聞いたばかり。「これだ!」。いつか食べたいと思ったけれど、こんなに早く出会うとは、これもご縁。

これ、「亀の手」ですか? マドリードのサンミゲル市場で珍味発見

ハーフにしてもらい、10ユーロで購入

どんな味かわからないのでたくさん食べる気になれず、スタンドの男性に「半分にしてもらえませんか?」と聞くと、「OK! 10ユーロ」とすぐに対応してくれました。

改めてよく見ると、手に長いツメが生えているみたいで、触るのはちょっと気味が悪い。でも、エビやタコだって見方によってはグロテスク。気を取り直して、殻を割って食べてみると、「あらら、おいしい!」。これはゆでてありますが、煮たら濃いダシが出そうです。カニの殻や巻き貝のような海の香りがあり、小エビを殻ごと食べた時のような味わいです。まさに珍味。この文章を書きながら、また食べたくなってしまいました。やみつきになる味なのかもしれません。

マヨール広場をぶらり散策

さて、サンミゲル市場からマヨール広場へ出ました。スペイン人の知人との待ち合わせまで時間があるので、気の向くままに散策します。

これ、「亀の手」ですか? マドリードのサンミゲル市場で珍味発見

マヨール広場

春の光にあふれています。

これ、「亀の手」ですか? マドリードのサンミゲル市場で珍味発見

マヨール広場は人出も多い

大きなシャボン玉で遊ぶ地元の子供たち。のどかな休日です。

これ、「亀の手」ですか? マドリードのサンミゲル市場で珍味発見

アルムデナ大聖堂

アルムデナ大聖堂前の広場には、観光客の波が押し寄せています。

これ、「亀の手」ですか? マドリードのサンミゲル市場で珍味発見

オリエンテ広場

スペイン王フェリペ4世の騎馬像が。その後ろの建物は王宮です。

久々のマドリードですが、そぞろ歩くと、この地に住んでいるような楽しい気分になりました。

「アネモナス」も初体験。それは……

知人と待ち合わせているレストラン「ラ・モンテリア」へ向かうため、タクシーに乗りました。

「モンテリア(狩猟)」という名前の通り、ジビエなどの料理も多いレストランです。スペインの人たちは、たいてい夕食を夜9時過ぎにとります。まだ夕方なので前菜でワインを飲もうということになり、メニューを物色。すると、アネモナス(anemonas)という言葉が目につきました。

アネモネの花を思い出しつつ、「これは何?」と尋ねると、知人たちは「海藻ではないけれど、海の植物だよ」と言います。よくわからない説明ですが、見たことも食べたこともないモノのようだし、トライしてみようと注文しました。
 

これ、「亀の手」ですか? マドリードのサンミゲル市場で珍味発見

「アネモナス」のフリット

さっそく食べてみると、青のりのような香ばしい香りと、カキフライのようなうまみがあります。クセはなく、不思議な味。なぜか一口、また一口と続けて食べたくなります。ワインが進む一品です。

色々聞いてみると、正体は何とイソギンチャク! そう聞くと、グニャグニャしていそうですが、歯触りは意外にもさっくりとしています。

スペインでは主にアンダルシア地方で食されるそうですが、私がマラガに2カ月ほど滞在して週末に海岸地方を旅していた時にはイソギンチャク料理を一度も見ませんでした。
食べ物との出会いも、人との出会いと同じで一期一会ということでしょうか。
忘れがたい味です。

PROFILE

相原恭子(文・写真)

慶應大学卒業。ドイツ政府観光局勤務を経て、作家&写真家。「ドイツ地ビール夢の旅」(東京書籍)、「ドイツビールの愉しみ」(岩波書店)、「ベルギー美味しい旅」(小学館)、「京都 舞妓と芸妓の奥座敷」(文春新書)、「京都 花街ファッションの美と心」(淡交社)、英語の著書「Geisha – A living tradition」(フランス語、ハンガリー語、ポーランド語版も各国で刊行)など著書多数。国内はもちろん、国際交流基金・日本大使館の主催でスペイン、ハンガリー、エストニアで講演会や写真展多数。NHK「知る楽」「美の壺」、ラジオ深夜便「明日へのことば」「ないとエッセー」、ハンガリーTV2、エストニア国営放送など出演多数。
https://blog.goo.ne.jp/goethekyoko

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