永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶

(49)マルシェのふたり、笑顔きらり 永瀬正敏が撮った南仏

国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回は、南フランスでマルシェ(市場)で出会ったふたり。笑顔を撮りながら、永瀬さんの胸にはさまざまな思いが去来していました。

(49)マルシェのふたり、笑顔きらり 永瀬正敏が撮った南仏

©Masatoshi Nagase

南フランスの街を歩いていたら、大きなマルシェの横を通りかかった。お菓子が売られていたり、パンが並んでいたりする場所で、店員さんが働く様子を撮っていたら、近くの店で働いていたおふたりがこちらを向き、撮って撮って、という感じでポーズを決めてくれた。

完全にカメラ目線で、記念写真といった趣だ。でも、撮っている僕がうれしくなるような表情だった。人物を撮るのは難しい。カメラを向けると、撮らないでといわれたり、身ぶりで示されたりすることも多い。嫌がられたと感じたら、レンズは向けない。結構気を遣う。

<永瀬正敏、女性に「撮って」と迫られた 南仏の街角で>の時は、遠くからわざわざ近寄ってきた方に撮ってほしいと頼まれた。写真を撮られることに対して、僕の体験では、海外の人のほうがおおらかな気がする。

もちろん日本でも、初対面の僕に笑顔を向けてくれた、青森のおばあちゃんのような方もいる。でも、シャイな人が多く、カメラを向けたとたん逃げられてしまうこともある。ただ、スマホで撮り慣れた若い人たちは反応が違う。撮ることへの感覚を、スマホが随分変えた気がする。

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PROFILE

永瀬正敏

1966年宮崎県生まれ。1983年、映画「ションベン・ライダー」(相米慎二監督)でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督「ミステリー・トレイン」(89年)、山田洋次監督「息子」(91年)など国内外の約100本の作品に出演し、数々の賞を受賞。カンヌ映画祭では、河瀬直美監督「あん」(2015年)、ジム・ジャームッシュ監督「パターソン」(16年)、河瀬直美監督「光」(17年)と、出演作が3年連続で出品された。近年の出演作にオダギリジョー監督「ある船頭の話」、周防正行監督「カツベン!」、甲斐さやか監督「赤い雪」 、大森立嗣監督「星の子」など。 写真家としても多くの個展を開き、20年以上のキャリアを持つ。2021年1月16日から3月21日まで、愛知県の「高浜市やきものの里かわら美術館」で写真展が開催される。2018年、芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞。

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