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クイーンゆかりの地をめぐる 1等車と5つ星ホテルで巡るスイス1周鉄道旅(7) モントルー

スイスで5つ星ホテルを泊まり歩き、鉄道の1等車で国をぐるり1周する――。&TRAVEL副編集長が2019年8月から9月にかけて、そんな旅を体験しました。写真家の猪俣博史さんと二人三脚で巡った9日間の珍道中、第7回はモントルーの街で、ロックバンド「クイーン」ゆかりの場所を訪ね歩きます。
(文・動画:&TRAVEL副編集長・星野学 写真・猪俣博史、トップ写真はフレディ・マーキュリー像)

【動画】クイーンの記念館をのぞいてみた

第10回<最後の最後に派手な一撃>はこちら
第9回<気絶するほど悩ましいユングフラウ>はこちら
第8回<クラシカルな車両でゆったり>はこちら
第6回<絶景ワインヤードでクラクラ>から続く
第5回<フレディ・マーキュリーの部屋に?!>はこちら
第4回<涙して見上げたマッターホルン>はこちら
第3回<揺れる車内で酒を注ぐ神業>はこちら
第2回<世界遺産の360°ループ>はこちら
第1回<チューリヒ空港~ポントレジーナ>はこちら

フレディのブロンズ像を目指せ!

世界遺産のワインヤード、ラヴォー地区のブドウ畑で夏の日差しにやられた私は、モントルーへ戻る船の中でしばし眠ったことで、体調が回復してきました。2019年8月28日、15時47分にモントルーに着いた船を降りる頃には曇り空になっていて、あれほど強かった日差しが和らいだことも幸いしました。

実はこの日、前回の記事で紹介したワイナリー巡りのほかに、もう一つ楽しみにしていたことがありました。ロックバンド「クイーン」ゆかりの場所巡りです。ワインヤードでフラフラになっていた時は、もうあきらめるしかないと思っていましたが、どうやら行けそうです。

まずは、レマン湖畔(こはん)に建つ、クイーンのリードボーカル、フレディ・マーキュリー(1946~1991)の像を目指します。船着き場からは、歩いて10分ほどでした。

着いたとたん、朝からガイドを務めて下さっている田口貴秀さんが声をあげました。

「あれー? 今日はすいてる。ラッキーですよ!」

クイーンゆかりの地をめぐる 1等車と5つ星ホテルで巡るスイス1周鉄道旅(7) モントルー

後ろから見ても迫力のあるフレディ像。確かに人は少なかった

フレディ像はモントルー有数の観光スポットで、遊歩道に面していることもあり、何はともあれ見に行こうと、大勢の観光客が押し寄せます。団体さんと一緒になると、写真を撮ろうにもなかなか撮れないとか。それがこの日は、像のまわりはぱらぱらと観光客がいるくらい。こんなことは珍しいそうです。

「Mama, just killed a man……」

クイーンのヒット曲「ボヘミアン・ラプソディ」の一節を口ずさんでみました。

高さ3mのこのブロンズ像は、モントルーを愛し、亡くなる2週間前までこの街でレコーディングをしていたフレディをたたえて、1996年に造られました。除幕したのは、スペインの名ソプラノ、故モンセラート・カバリエ。フレディとはアルバム「バルセロナ」を共作しています。

像の周囲には献花がされていました。ファンからでしょうか。きっと、絶えることがないのでしょう。

「安らぎがほしかったら、モントルーにおいでよ」

モントルーをこよなく愛したフレディは、そう語ったといいます。たぶん、世界で最も有名な、この街ゆかりの人。レマン湖に向かって高らかに歌いあげる彼の像を見ていると、生前のカリスマ的パフォーマンスが、ありありと思い出されます。

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クイーンの記念館と、ディープ・パープルの歌

フレディ像から徒歩5分ほどの場所にある、体験型記念館「QUEEN THE STUDIO EXPERIENCE」(クイーン・ザ・スタジオ・エクスペリエンス)を目指しました。クイーンがかつて所有しており、アルバム録音に使った「マウンテン・スタジオ」をリニューアルした施設です。

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「カジノ・バリエール・モントルー」の入り口。記念館はこの中にある

記念館は「カジノ・バリエール・モントルー」の建物に入っています。実はこの建物、ハードロックバンド「ディープ・パープル」とも深い縁があります。彼らの代表曲「スモーク・オン・ザ・ウォーター」に登場するのです。

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カジノの様子

ここがモントルー・カジノと呼ばれていた1971年12月4日、建物は火災に見舞われ、焼け落ちました。モントルー・ジャズ・フェスティバルの一環として開かれていた「フランク・ザッパ&ザ・マザーズ・オブ・インヴェンション」のライブ中、観客の1人が天井に向けて撃った信号短銃が引火したのです。ザッパとバンドはこの火事で機材を失い、居合わせて火事を目撃したディープ・パープルは、まるでルポルタージュのような歌「スモーク・オン・ザ・ウォーター」を残したのでした。カジノが営業を再開するまで、5年かかったそうです。それほどの大火災でした。

お、クイーン記念館がありました。入館は無料ですが、日本語パンフレットを1部取り、その御礼も兼ねて募金箱に5ユーロ入れて、入り口へ。真っ赤な照明が、ステージの幕開けのような期待感を高めます。

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「クイーン・ザ・スタジオ・エクスペリエンス」の入り口

館内には、クイーンとモントルーの縁を説明したパネルがありました。いわく、クイーンがマウンテン・スタジオを初めて訪れたのは、1978年のこと。7枚目のアルバム「ジャズ」の録音のためでした。この街でならメディアに追い回されずアルバム制作に専念できることがわかった彼らは、翌年、「ライヴ・キラーズ」の制作作業のためスタジオを再訪した際、購入を決めました。

フレディのステージ衣装が飾ってありました。こちらは、体にぴったりはりつく、お決まりのもの。

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フレディのステージ衣装

メンバーが使った機材が、ガラスの向こうに展示してありました。映画「ボヘミアン・ラプソディ」のクライマックスともなった伝説の「ライブ・エイド」で、ロジャー・テイラーが使ったドラム。ブライアン・メイのギター、ジョン・ディーコンのベース。アンプ類、など。1980年代に高校生だった私のヒーローが手にした楽器なんだ……。元バンド少年、現オヤジバンドのベース弾きである私にとっては、自分と音楽のかかわりが時を超えて押し寄せてくるような体験でした。

クイーンゆかりの地をめぐる 1等車と5つ星ホテルで巡るスイス1周鉄道旅(7) モントルー

クイーンのメンバーが使った機材も展示されていた

会場の一角に、ミキシング・コンソールがありました。クイーンの名曲「マザー・ラヴ」と「メイド・イン・ヘヴン」を聴くことができます。卓上のフェーダーを使って、パートごとに音量を大きくしたり小さくしたりできるのがミソ。慣れ親しんだ作品を「解剖」して聴くことができる、またとない機会です。クイーンがレコーディングに使った卓を再現しています。

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卓上のフェーダーでパートごとの音量を調節できる

私が試みたのは、もちろん、ベーシストであるジョン・ディーコンのフレーズ研究。ベースだけ音量マックス、ほかは音量ゼロ。慣れ親しんだ曲ですから、ほかのパートは頭の中で鳴っています。

「意外にフレーズはシンプルだな……」「絶妙なニュアンスで弾き分けている……」

いろんなことがわかります。とても勉強になりました。

クイーンは「マウンテン・スタジオ」で7枚のアルバムを制作。その最後となった「メイド・イン・ヘブン」の完成盤を聞くことなく、フレディは亡くなったのです。

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「フェアモント・ル・モントルー・パレス」の風格を体感

宿泊先「フェアモント・ル・モントルー・パレス」に戻ると、再びホテル探検です。ホテルの広報担当者エドメー・ロメジャッリさんと待ち合わせて、案内していただきました。前日は7階のスイートルームだけを取材したので、今度は共用スペースを中心に回りました。

このホテルは1906年の創業。私たちの泊まっている部屋は、ゴージャスながらも最新鋭の設備でしたが、建物全体としては、20世紀初頭のベル・エポックの栄華をそのまま伝える、重厚な造りです。「中2階」のような踊り場から、フロントを眺めると、この通り。

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階段の踊り場からフロントを見る

青いカーペットと、手すりや窓枠の茶色が、上品な対照を醸します。シャンデリアの豪華なこと。天井近くには、グリム童話などをモチーフにした絵が描かれています。

日本でいう2階のロビー「グランドホール」は、太い柱に支えられ、使い込まれた調度品が並びます。「1906年の創業時から使われ続けている家具も多いです」と、ロメジャッリさん。

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グランドホール。左端に見える扉が、朝食を食べるレストラン

このホテルの名物に、7月と8月を除く毎週日曜日の12時から15時まで食べられるブランチがあります。「メニューには毎回テーマを設けています」と、ロメジャッリさん。「タイ料理」「ブルターニュの大地と海」など、世界中の美食を居ながらにして体験できる、というわけです。

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豪華な装飾の宴会場「サル・デ・コングレ」

大宴会場「サル・デ・コングレ」は、ベル・エポック時代の雰囲気を伝える部屋で、着席で340人、立食で600人が収容できます。

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広々とした通路

歩き回っていて感じたのは、建物の規模に比べて、廊下や通路スペースがとても広いこと。ロメジャッリさんに伝えると、「なぜだと思いますか?」と逆に尋ねられました。「廊下が広い方が、部屋に騒音が届かず静かだから?」と当てずっぽうで語る私に、こう教えてくれます。「創業当時、ホテルにおみえになる女性の衣装はまだ、19世紀から続く大きなスカートやすその長い服の方も多かったのです。その頃の服を着た女性2人がゆとりをもってすれ違えるよう、廊下や通路を広くしてある、と伝わります」。意外な答えですが、言われてみれば、なるほど、です。

地中海と錯覚するレマン湖周辺

ひととおり施設を見せていただいたあと、少し休憩して、夕食をとりました。この日の会場は、部屋のある本館とは道路をはさんで向かいにある、「ラ・テラス・デュ・プティ・パレ」です。文字どおり、テラスに屋根をかけた、半分屋外といった風情のレストランです。

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ラ・テラス・デュ・プティ・パレの入り口

メニューを見渡すと、地中海風料理のようです。猪俣さんはトマトソースのペンネにスパークリングワインを頼みました。

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トマトソースのペンネ

私は昼間の疲れが残っていてあまり食欲がなかったので、生ハムとチーズの前菜と、ウォッカマティーニを注文します。アルコール度数は高めですが、すっきりしたウォッカをベースにしたカクテルがほしいな、と思ったのでした。

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生ハムとチーズの前菜

モントルーに来てからというものの、自分が地中海沿岸にいるのではないかと錯覚する瞬間が、幾度もありました。華やいだ街の雰囲気も手伝って、夏の明るい日差しに照らされたレマン湖のほとりを歩いていると、内陸の湖のほとりにいるとは、どうしても思えなくて。モントルーが「スイスのリヴィエラ」と呼ばれる理由が、わかった気がしました。

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テーブルからはレマン湖を見渡せる


Hôtel Fairmont Le Montreux Palace
https://www.fairmont.com/montreux/

あわてて食べて気分が悪くならないよう、ゆっくりゆっくり食事をしたので、レストランを出るころは真っ暗になっていました。

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道路を渡って、部屋のある本館に戻る


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夜のモントルーも美しい

部屋から眺めた夜のモントルーは、あかりが湖に照り映えて、また格別でした。

(つづく)

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【取材協力】

スイス政府観光局

スイス インターナショナル エアラインズ

スイストラベルシステム

スイス・デラックス・ホテルズ

スイス1周鉄道旅

PROFILE

&編集部員

国内で、海外で。&編集部員が話題の旅先の新たな魅力を「発見」し最新情報をリポートします。

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