京都ゆるり休日さんぽ

心静かに向き合い、勇気づけられる。京都の一本桜に会いに行く

凜とした姿ですっくと立ち、大きく枝を広げて咲き誇る一本桜。樹齢が何百年もある老樹や物語のある名木も多く、桜並木のらんまんとした美しさとはまた違った風情があります。今回は、京都で出会える一本桜の名所を3カ所ご紹介。どんな春にも必ず花を咲かせてきた一本桜の姿に、きっと勇気付けられるはずです。

(メイン写真=photolibrary〈https://www.photolibrary.jp〉)

■暮らすように、小さな旅にでかけるように、自然体の京都を楽しむ。連載「京都ゆるり休日さんぽ」はそんな気持ちで、毎週金曜日に京都の素敵なスポットをご案内しています。
(文:大橋知沙)

東北から京都へと旅してきた、東寺「不二桜」

不二桜

五重塔と背比べするようなアングルで眺める「不二桜」。弘法大師の「不二の教え」から名付けられた(画像= photolibrary

平安京の国営寺院として建立後、弘法大師を迎え、真言密教の根本道場として歴史を歩んできた東寺(教王護国寺)。立体曼荼羅(まんだら)や五重塔、毎月21日に開催される縁日「弘法市」などで知られるこの寺院は、春になると、境内に約200本もの河津桜や染井吉野(そめいよしの)が咲き誇ります。中でも、瓢箪(ひょうたん)池の一角で、ひときわ目を引く一本桜が「不二桜(ふじざくら)」。樹齢約130年、高さ13メートルもの八重紅しだれ桜です。

東寺の夜桜ライトアップ

夜桜ライトアップ(金堂・講堂夜間特別拝観)は、2020年3月14日〜4月12日。大人・高校生1000円、中学生以下500円(画像= photolibrary

この桜は、岩手の旧家から秋田、三重へと旅し、2006年に弘法大師の帰朝1200年を記念して、東寺に移植されました。移植可能な桜としては国内最大級の大木でしたが無事根付き、毎年美しい花を咲かせ続けて、今では東寺のシンボルに。東日本大震災の年から始まった夜桜ライトアップは、東北生まれのこの桜から祈りを届けたいと続けられているもの。夕闇の中、高さ55メートルの五重塔と背比べするかのように、天高く咲く不二桜は壮観です。

東寺 https://toji.or.jp

緑豊かな境内に咲き誇る。上賀茂神社の「御所桜」と「斎王桜」

上賀茂神社の桜

広々とした境内は緑にあふれ、さまざまな品種の桜が咲く(画像提供:上賀茂神社)

京都最古の神社の一つ「賀茂別雷神社(上賀茂神社)」には、緑あふれる心地よい境内に、さまざまな桜が花を咲かせます。中でも、参道を歩く人々が思わず足を止める一本桜が、「御所桜」と「斎王桜」。まず、薄紅色の花を付けるしだれ桜「御所桜」が一足早く、例年3月下旬頃開花します。孝明天皇によって京都御所から下賜されたこの桜は、どっしりとした幹に繊細な枝ぶりが風格あるたたずまい。淡いピンクの花がシャワーのように降り注ぎ、はかなげな美しさが胸を打ちます。

御所桜

例年3月末~4月上旬頃満開を迎える「御所桜」。「斎王桜」の咲き始めと重なることも(画像提供:上賀茂神社)

斉王桜

一の鳥居を入ってすぐ迎えられる「斎王桜」。あたたかみある紅色の傘が美しい(画像提供:上賀茂神社)

「御所桜」より1〜2週間遅れて開花し、例年4月上旬頃に満開を迎えるのが、上賀茂神社のシンボル的な一本桜「斎王桜」。鮮やかなピンク色の紅しだれ桜で、大きな傘のように花枝を広げたたたずまいからは、懐に抱かれるような慈しみを感じます。「斎王」はかつて伊勢神宮や賀茂神社に巫女(みこ)として仕えた未婚の内親王で、現在では「斎王代」として葵祭のヒロインとなり、継承されています。その名にふさわしい華やかさとたおやかさで咲き誇る姿は、上賀茂の春を象徴する存在です。

風流桜

二の鳥居横の「風流桜」。朱色の欄干とのコントラストが映える(画像提供:上賀茂神社)

上賀茂神社にはほかにも「みあれ桜」「風流桜」などの名木があり、早咲きから遅咲きまでさまざまな品種が咲き継ぐため、長く桜を楽しむことができます。芝生が広がり、小川が流れる心地よい境内を、ゆったりと散策してみてください。

賀茂別雷神社(上賀茂神社)https://www.kamigamojinja.jp

提灯にかぶさる豪壮なしだれ桜。大石神社「大石桜」

大石桜

提灯(ちょうちん)の向こう側から、参道側にまで枝を伸ばす「大石桜」(画像提供:大石神社)

地元の人々から「大石桜」と親しまれる、山科「大石神社」の御神木のしだれ桜。創建の1935年には既にこの地に植わっていた桜を御神木とし、今では京都有数の名木の一つに。忠臣蔵ゆかりの神社とあって、忠臣蔵ファンから大石桜を一目見ようと訪れる人まで、各地から拝観者が訪れます。

大石神社の桜

提灯の明かりに照らされた夜桜。昼間とは違ったつやっぽい表情に見とれる(画像= photolibrary

鳥居の隣に並ぶ提灯(ちょうちん)に桜の枝が覆いかぶさる光景は、豪快で壮麗。地に届かんばかりの長さで垂れる見事な枝ぶりは、見上げるだけでなく、同じ目線で眺めたり、視線を落としたりと、すみずみまでめでる楽しみがあります。提灯に明かりがともり、ライトアップされた夜桜の風情は格別です。

大石神社 http://www.ooishijinja.com

出会えば思わず足を止め、しばし見とれて、その桜が重ねた年月や物語に思いを巡らす。一本桜は、心静かに向き合いたい今年の春には、ぴったりではないでしょうか。

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BOOK

心静かに向き合い、勇気づけられる。京都の一本桜に会いに行く

京都のいいとこ。

大橋知沙さんの著書「京都のいいとこ。」(朝日新聞出版)が6月7日に出版されました。&TRAVELの人気連載「京都ゆるり休日さんぽ」で2016年11月~2019年4月まで掲載した記事の中から厳選、加筆修正、新たに取材した京都のスポット90軒を紹介しています。エリア別に記事を再編して、わかりやすい地図も付いています。この本が京都への旅の一助になれば幸いです。税別1200円。


PROFILE

大橋知沙

編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブックやWEB、ライフスタイル誌などを中心に取材・執筆を手がける。本WEBの連載「京都ゆるり休日さんぽ」をまとめた著書に『京都のいいとこ。』(朝日新聞出版)。編集・執筆に参加した本に『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

混雑知らず。自由でローカルな京都旅をかなえるレンタサイクル&カフェ「THE GOOD DAY VELO」

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