永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶

(51)マルシェで見かけた女性たちの幸せ感 永瀬正敏が撮った南仏

国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回は、南フランスのマルシェ(市場)で見かけた女性たち。思わずシャッターを切った永瀬さんの気持ちとは。

(51)マルシェで見かけた女性たちの幸せ感 永瀬正敏が撮った南仏

©Masatoshi Nagase

年配の女性3人が、南フランスのマルシェで楽しそうに立ち話をしている。最初は2人で話していて、後から真ん中の女性が話に加わり、ますます盛り上がっていた。年をとってから、こういう立ち話ができるコミュニティーというか、友達関係があることはすてきだなと思った。

マルシェには色とりどりのものが並んでいるから、カラーで撮る――。昔は僕もそういう写真を撮っていたと思う。でも、このカットをカラーにしたのは、3人の醸す幸せ感を、着ておられる服の色合いも含めてすくいとりたい、と思ったから。モノクロだとそういう要素が埋もれてしまう。

青い服の方はもちろん、ほかの2人も、おしゃれだ。そして、存在感や、味もある。買い物においでになる時間が、お友達と会う時間にもなっている。その余裕がすてきだな、と思った。

この時はデジタルカメラだけでなく、フィルムカメラでも撮った。デジタルに比べフィルムはすぐなくなるから、大量に持っていって何度も入れ替えたことを思い出す。デジタルカメラの普及で、フィルムを売っている場所を見つけるのが難しくなった。それでも、若い人の間でアナログ撮影が流行している影響か、少し前よりは手に入れやすくなったけれど。

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PROFILE

永瀬正敏

1966年宮崎県生まれ。1983年、映画「ションベン・ライダー」(相米慎二監督)でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督「ミステリー・トレイン」(89年)、山田洋次監督「息子」(91年)など国内外の約100本の作品に出演し、数々の賞を受賞。カンヌ映画祭では、河瀬直美監督「あん」(2015年)、ジム・ジャームッシュ監督「パターソン」(16年)、河瀬直美監督「光」(17年)と、出演作が3年連続で出品された。近年の出演作に常盤司郎監督「最初の晩餐」、オダギリジョー監督「ある船頭の話」、周防正行監督「カツベン!」、甲斐さやか監督「赤い雪」など。写真家としても多くの個展を開き、20年以上のキャリアを持つ。2018年、芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞。

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