ぶらり ぬい撮り ひとり旅

極彩色のエンタメ・石見神楽をめぐる 常設劇場に、高校の部活も!

ライター熊山准さんのアバターぬいぐるみ「ミニくまちゃん」の旅をお届けする「ぶらり ぬい撮り ひとり旅」。今回は世界遺産・石見(いわみ)銀山でおなじみ島根県西部の石見エリアを2019年7月、ぬいぐるみ目線でめぐりました。ケレン味あふれる伝統芸能・石見神楽を中心に、伝統をつむぐベテランの職人から、次代を担う若手の演者まで、神楽の文化を支えるさまざまな人たちとのふれあいをご紹介。(トップ写真は「舞乃座」の舞台)

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神事ながら娯楽色もたっぷりの神楽

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石見神楽のお面

みなさん、石見神楽をご存知ですか?  石見地方に伝わる里神楽なのですが、衣裳をはじめセットに演出まで、歌舞伎ばりにケレン味たっぷりのカラフルな舞台芸能なのです。

どれだけ派手かというと、演出で花火をガンガン使います。それも神社の中で、ですよ!

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神社の中ですが花火を使います

神に奉納するお神楽ながら、アクションあり笑いありの石見神楽は住民の身近な娯楽として老若男女に愛されていて、小さな子どもたちの間では特撮ヒーローにも劣らない人気を誇っているほか、学校には神楽の部活動もあり、優秀な生徒は「神楽推薦」で高校進学までできるほど、文化として石見エリアに広く浸透しているのだそうです。

もちろん、これまで幾度となく石見地方を訪れたこともあるミニくまちゃんも大好き!  個人的な感想ですが、なんだか中国の京劇にも通じるエキゾチシズムがあるんですよねえ。

今回は昨年オープンした石見神楽専用劇場をはじめ、県立浜田商業高校郷土芸能部で石見神楽を楽しむほか、舞台裏を支える面や蛇胴の工房にもお邪魔して、石見神楽ワールドを存分に堪能いたします。

通年の専用劇場が誕生! 「舞乃座」

まず、やってきたのは江津市(ごうつし)にある「舞乃座」。ドライブステーション「神楽の里 舞乃市」にあります。基本的には秋を中心に神社の社殿内でしか鑑賞できない石見神楽を、一年を通して食事と一緒に楽しめる専用劇場として、2019年4月にこけら落としをしました。もちろん、地元の方々に交じって神社で見るのがいちばんですけれど、観光客にはハードルが高いのでありがたい施設です。

拝見したのは人気にして定番の演目「塵輪(じんりん)」。

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塵輪は台風などの天災を擬人化したものという説も

第14代の帝・帯中津日子命(タラシナカツヒコノミコト)が家来とともに、日本征服を狙う鬼・塵輪を退治するというストーリーですが、何よりグロテスクな塵輪のいでたちと、スピード感あふれるダイナミックな舞が見どころ。神社にはない照明の演出も手伝って舞台が映えます。

舞乃座の公演は、毎月第1・3日曜日16時から(鑑賞料金:1000円)と、毎月第2・4金曜日20時から(同800円)の月4回です。開催状況は記事末尾の島根県西部公式観光サイトをチェックしてね。

神楽に取り組む浜田商業高校郷土芸能部

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スサノオ

続いて特別に見学させてもらったのは島根県立浜田商業高等学校の郷土芸能部。そう、「神楽推薦」を行っていると話題の学校です。入試で神楽が部活動推薦の対象になっているのだそうです。

ここで拝見したのは、これまた人気かつ定番の「大蛇(オロチ)」。高天原を追われた須佐之男命(スサノオノミコト)が八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治するおなじみの神話です。その見どころは何といってもグネグネとのたうち回る大蛇。少なくとも4頭、多いと「八岐」の文字通り8頭の蛇が登場し、時に花火を噴き出して暴れまくるのです。

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酒で酔ったオロチに油断してピンチに陥るスサノオ

特に今回のステージは学校内。緞帳(どんちょう)以外は真っ白なスペースゆえ、かえって面や衣裳、蛇胴のきらびやかな色彩が映えます。神社で見るのもいいですが、シンプルなステージで楽しむのもまた一興かも。

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浜田商業高校郷土芸能部。発足15年目で、年間30回以上校外で公演を行っているとか

神楽を支える面や蛇胴の職人さん

こうした石見神楽を舞台裏で支えているのが、面工房や蛇胴工房の職人さんたちです。そのひとつ、高校の近くにある柿田勝郎面工房にお邪魔しました。

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柿田勝郎さんと

柿田勝郎さんは御年78歳。神楽の面は半世紀ほど前、なんと独学で習得したそう。以降は島根や広島に広がる神楽団体(社中)から何百種類もの面作りを請け負い、原型にいたっては1000種類以上を製作したとか。現在は2代目の兼志さんへと技術を承継中だそうです。

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こちらが蛇胴

続いてお邪魔したのは、同じく浜田市の植田蛇胴製作所。大蛇で使われる蛇胴はもともと白い布にウロコを描いていただけだったとか。それを現在のかたちにしたのがこちらの創業者。提灯(ちょうちん)をヒントに竹と石州和紙で作られるジャバラ状の蛇胴は、軽くて取り回しがよく丈夫なのが特徴だとか。とはいえ長さは17m、重さ12kgにも及びます。扱うには体力が必要です。

昔はオスメス2頭しかなかった大蛇は、大阪万博で上演する際に8頭になったのだそう。

お面や蛇胴をつくる「石州和紙」

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石州和紙の紙漉(す)き

こうした石見神楽のお面や蛇胴を支えているのが、「石州和紙」です。多くの和紙はある程度まで処理した原料を外部から仕入れているのに対し、石州和紙は職人たち自ら原料の楮(こうぞ)の畑をもち手塩にかけて育てているのが特徴なのだとか。楮の発育状態や質が和紙の出来栄えを左右することから、石州和紙は「原料を育てるところから紙漉(す)きが始まっている」とも言われています。

そんな石州和紙の漉き体験ができるのが浜田市の石州和紙会館。

畑を耕すところから始めなくちゃいけないのかとビビったけど、安心してください、体験するのは紙漉きパートだけです。楮の繊維が溶けた水(紙料)を、「すけた」と呼ばれる容器で汲んでうまい具合に水分を捨て、繊維が均一になるようならします。後はヒーターで温めれば完成です。

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ポストカードにしました

こうしてお面ひとつとっても、職人さんが原料から丹精こめた和紙を、何枚も折り重ねて作るわけでして、いやはや石見神楽は地域の信仰に根付いた労働集約型のエンターテインメントなのだなと思い知ったのでした。

最後に、「エクス和紙の館」で神楽面の絵付けも体験。ユーモラスな演目「恵比須」のお面をインドの神様風?にアレンジしてみました。

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うまく塗れたかな?

■石見神楽上演予定日程|島根県西部公式観光サイト
https://www.all-iwami.com/kagura/schedule/index.html

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PROFILE

熊山准

ライター/アーティスト
1974年、徳島県生まれ。北海道・沖縄の大学生活からリクルートを経て、2004年「R25」のライターとして独立。IT、ガジェット、恋愛、旅、インタビューなどさまざまな分野・媒体での執筆のほか、自らのアバターぬいぐるみを用いたアート活動を行う。第1回妖怪そっくりコンテスト境港市観光協会長賞、2015年マレーシア・サバ州観光大賞メディア部門・最優秀海外記事賞。ライフワークは夕焼け鑑賞。

極楽浄土の夕焼けを見たくて、計10キロ歩いてえんやこら 新潟県・粟島(後編)

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