あの街の素顔

ベトナムの魅力的な「ナイトマーケット」は誰のもの?

ベトナム料理に少し飽きてくると、妻が選んだレストランに入る。なぜか欧州系(いわゆる白人)の客ばかり。そんなレストランがあるところは、夜になると「歩行者マーケット」として観光客があふれる。このマーケットの様子を紹介する。
(トップ写真はフエの店に並ぶ色とりどりの衣装)

ドイツ人の妻とドイツで長年暮らすジャーナリスト高松平藏さんは、アジアへ旅に出ると、ヨーロッパ目線の「旅行観」や「アジアへのロマン」を感じるとか。慣れ親しんで意識しなくなっていたヨーロッパ的なものの見方を、アジアへ戻ると改めて意識するようです。2019年2月から3月にかけての旅での発見をつづる記事の4回目は、ベトナムのレストランとナイトマーケットです。

第3回<片道18時間の寝台列車旅で見たベトナムの“懐かしさ”と“新しさ”>はこちら。
第2回<ベトナムのビーチで社交ダンス>はこちら。
第1回<ベトナムのシクロは「アジアロマン」?>はこちら。

なぜか低い椅子に座るベトナムの人たち

旅先で現地の料理に舌鼓を打つことは楽しみだ。ドイツ人の妻の提案で2週間ベトナムに滞在したが、ベトナム料理はしっかり堪能した。

ベトナムの町では、現地の人たちが、歩道で小さな子供用のような低いプラスティック椅子に座り、楽しげに食事をしているのをよく見かけた。なぜ、そのスタイルに落ち着いたのかはわからない。

ベトナムの魅力的な「ナイトマーケット」は誰のもの?

ベトナムの人々は総じて低い椅子に座っている。どのような経緯でこういうタイプが「スタンダード」として落ち着いたのか興味深い

ドイツでも折りたたみ式の長細いテーブルがセットになった背もたれのないベンチがある。ビール祭りはもちろん、教会がフェスティバルなんかをする時なども使われる。

ベトナムの魅力的な「ナイトマーケット」は誰のもの?

ドイツのビール祭りなどで使われる「ビールベンチ」。高さは通常の椅子と同じ。背もたれのないベンチは5人がけ。10人でテーブルを囲む

いずれも、おおぜいで飲食をともにする場合のスタンダードな道具ということだろう。しかし、ベトナムで旅行者は低い椅子に座ることはほとんど無さそうだ。つまり、椅子が普通の高さの飲食店はそれなりに値段も高く、旅行者向け。そういうレストランのベトナム料理は、ひょっとして外国人向けに多少味を変えているかもしれない。しかし旅行者にはそれで十分。そして堪能した。

ベトナムの魅力的な「ナイトマーケット」は誰のもの?

「通常の高さ」の椅子とテーブルのレストランで出てくるベトナム料理

ところが、ベトナム料理ばかりだと飽きてくる。外国に長期滞在したことがある人ならおわかりいただけると思うが、食べ慣れたものをいったん口にすると、味覚がリセットされて、再び外国の食べ物をしっかり味わえるのである。

ベトナムの魅力的な「ナイトマーケット」は誰のもの?

こういう店には欧州系の観光客の姿が多い

フエで、その「リセット」をしようということになった。妻が探し出してきたのはイタリア風レストランだった。欧州風の内装で、椅子も高い。客もほとんどが欧州系だ。地元の人もいたようだが、欧州系外国人のお客さんのアテンドとか、欧州系外国人のコミュニティーに近い人のようだった。

歩行者ゾーンは誰のもの

少し、話は変わるが、このイタリア風レストランの近くに夜間、歩行者ゾーンになるところがあり、旅行者にも魅力的な空間だった。

ベトナムの魅力的な「ナイトマーケット」は誰のもの?

歩行者ゾーンは観光客であふれかえる

ベトナムの魅力的な「ナイトマーケット」は誰のもの?

歩行者ゾーンの始まるところには標識がたっている

ホイアンの旧市街地にもそういう場所があり、夜間は歩行者ゾーン化し、ナイトマーケットに変身した。店舗デザインも伝統的なテイストでそろえており、インバウンドのお手本のような作り方だ。

ベトナムの魅力的な「ナイトマーケット」は誰のもの?

ランタンが美しいホイアンのナイトマーケット

ベトナムの魅力的な「ナイトマーケット」は誰のもの?

木の看板など、ある程度店舗のフォーマットが決められているようで、統一した景観が作られている

ドイツの都市計画では、市街地を歩行者ゾーンにすることが多い。そこは道路というより細長い公園のような空間になり、恒常的な「市民の日常生活のためのもの」という趣だ。それに対して、フエやダナンの「ナイトマーケット」はいかにもツーリストを想定したようなつくりだ。

ただ、フエの夜は、現地の子供たちも出てくる。普段はオートバイがたくさん走る道で楽しそうにボールを蹴って遊んでいて、「歩行者ゾーン化された道はツーリストだけのものではない」という雰囲気に好感が持てた。

ベトナムの魅力的な「ナイトマーケット」は誰のもの?

フエの道路が歩行者ゾーン化されると、現地の子供たちがサッカーに興じた。生活空間であることの現れだ

欧州系が好む店を探し当てる妻

ホイアンの歩行者ゾーンの話に戻ろう。私達は散歩するかのように歩き、楽しんだ。そして夕食にと、再び妻の嗅覚(きゅうかく)で選んだレストランに入ると、客は見事に9割がた欧州系。近くのテーブルに座る客はドイツ語で話している。

ベトナムの魅力的な「ナイトマーケット」は誰のもの?

妻の嗅覚で入ったホイアンのレストラン

妻は何を嗅(か)ぎ取って店を選んでいるのかはわからないのだが、ダナンのナイトマーケットにはアジア系の観光客もかなりいる。日本語が耳に入ってくることもしばしばだ。アジア系のツーリストたちはどんな店で食べているのだろう。

ベトナムの魅力的な「ナイトマーケット」は誰のもの?

ホイアン旧市街地の歩行者ゾーンの境目

ともあれ、そのレストランで食事をしていると、ドタバタと若者たちのグループが入ってきた。その会話が耳に入ってくる。旅行で高揚しているのを差し引いても、お世辞にも品性があると感じられるものではなかった。彼らが話していたのはドイツ語。妻は肩をすくめ、私も笑うしかなかった。

ベトナムの魅力的な「ナイトマーケット」は誰のもの?

来遠橋(日本橋)。16世紀に日本人がかけたものとされている

それにしても、若者たちも妻も、レストランを選ぶ嗅覚は同じなのだ。

第3回<片道18時間の寝台列車旅で見たベトナムの“懐かしさ”と“新しさ”>はこちら。
第2回<ベトナムのビーチで社交ダンス>はこちら。
第1回<ベトナムのシクロは「アジアロマン」?>はこちら。

PROFILE

  • 「あの街の素顔」ライター陣

    こだまゆき、江藤詩文、太田瑞穂、小川フミオ、塩谷陽子、鈴木博美、干川美奈子、山田静、カスプシュイック綾香、カルーシオン真梨亜、シュピッツナーゲル典子、コヤナギユウ、池田陽子、熊山准、藤原かすみ、矢口あやは、五月女菜穂、遠藤成、宮本さやか、小野アムスデン道子、石原有起、高松平藏、松田朝子、宮﨑健二、井川洋一、草深早希

  • 高松平藏

    ジャーナリスト
    ドイツ・エアランゲン在住。主なテーマは地方都市の発展。ドイツで取材・調査・観察を通して執筆活動を行っている。帰国時には自治体や大学などで講演・講義を行うほか、ドイツでも集中講義とエクスカージョンを組み合わせた研修プログラムを主宰している。ドイツ人の妻とは結婚して20年余り。著書「ドイツのスポーツ都市 健康に暮らせるまちのつくり方」(学芸出版社)が3月に発売されたばかり。著書はほかに「ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか 質を高めるメカニズム」(学芸出版社)などがある。

オススメ観光地は核シェルター?! 欧州の「秘境」アルバニア紀行(1)ティラナ

一覧へ戻る

アクアブルーの海が美しい港町 欧州の「秘境」アルバニア紀行(2)サランダ

RECOMMENDおすすめの記事