永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶

(52)“何げない日常”への賛歌 永瀬正敏が撮った東京

国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。新年度最初は、東京都内の高層ビルからの1枚。映画撮影の合間に、永瀬さんがカメラを向けた、その思いとは。

(52)“何げない日常”への賛歌 永瀬正敏が撮った東京

©Masatoshi Nagase

いつの日だったか、東京都内の高層ビルの屋上で、ある映画の撮影があった。
恐ろしく高いビルの屋上で、その日の撮影は順調に進んでいった。
撮影中、眼下に広がる大都会のビル群の中から、
生活音に混じり、時折子供たちの声が聞こえてきた。
笑い声、はしゃぐ声、元気いっぱいの声。

撮影が終わり、僕はレンズ越しにその声が聞こえてくる場所を探した。

ビルやマンションに囲まれた小さな小学校。
その校庭で大きな声を出しながら元気いっぱい授業を受けている子供たち。
なぜか温かい気持ちになりシャッターを切った。

何気ない日常、それはかけがえのないもの。
世界中の“何気ない日常”が少しでも早く、取り戻せますように。

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PROFILE

永瀬正敏

1966年宮崎県生まれ。1983年、映画「ションベン・ライダー」(相米慎二監督)でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督「ミステリー・トレイン」(89年)、山田洋次監督「息子」(91年)など国内外の約100本の作品に出演し、数々の賞を受賞。カンヌ映画祭では、河瀬直美監督「あん」(2015年)、ジム・ジャームッシュ監督「パターソン」(16年)、河瀬直美監督「光」(17年)と、出演作が3年連続で出品された。近年の出演作に常盤司郎監督「最初の晩餐」、オダギリジョー監督「ある船頭の話」、周防正行監督「カツベン!」、甲斐さやか監督「赤い雪」など。写真家としても多くの個展を開き、20年以上のキャリアを持つ。2018年、芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞。

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