京都ゆるり休日さんぽ

名物・コッペパンサンドを求めて。京都人に愛される街のパン屋「まるき製パン所」

パンの消費支出で全国上位(※1)に入るほど、パン好きが多い京都。新しいベーカリーが次々とオープンするなか、地域に根ざした「街のパン屋さん」として、70年以上地元の人々に愛されているお店があります。創業は1947(昭和22)年。取材中も次々とパンが焼き上がり、ひっきりなしにお客さんでにぎわう「まるき製パン所」を訪ねました。

※1 総務省の家計調査(2人以上の世帯)、品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキングの1世帯当たり支出金額(2017~19年平均)

■暮らすように、小さな旅にでかけるように、自然体の京都を楽しむ。連載「京都ゆるり休日さんぽ」はそんな気持ちで、毎週金曜日に京都の素敵なスポットをご案内しています。
(文:大橋知沙/写真:津久井珠美)

名物はコッペパンサンド。おいしさの秘密は「作りたて」

まるき製パン所

町家の趣を残したレトロな外観。古びた木の看板やポストが昭和の面影を宿す

「まるき製パン所」の朝は早い。社長の木元廣司さんは午前3時に出勤し、最初のパンを焼きながら、6時半には店をオープンします。通勤や通学の途中に立ち寄り、朝食を買っていく人々の多くが手にするのは、コッペパンサンド。素朴なコッペパンにハムやカツ、ポテトサラダなどを挟んだ、昔ながらの総菜パンです。

パンが並ぶ

コッペパンにさまざまな具を挟んだパンが並ぶ。左の揚げパンは京都のご当地パン「ニューバード」。カレー風味の生地にハムを挟んで揚げたもので、こちらも名物の一つ

「昔はすぐ近くに高校があってね。学生さんたちに満足してもらおうと、先代がコッペパンサンドを作りはじめたんです。コッペパンやったら、挟む具を変えれば色んな味に対応できるから、売り切れや売れ残りが出にくい。特段、ええ材料を使っているわけではないけど、カツやコロッケはここで揚げて、あんこやクリームも自家製です。食べておいしいのが一番ですから」

カツロール

ハムカツを挟んだ「カツロール」のソースは数種をブレンドしたオリジナル

そう語る木元さん。厨房(ちゅうぼう)でテキパキとコッペパンサンドを作るパートの女性は「おいしいのは、できたてやから」と笑って話します。焼きあがったパンに、奥で揚げたカツを挟んで、こぼれんばかりのキャベツを挟む……。バットいっぱいに並んだ作りたてのコッペパンサンドが、お昼時になりみるみる減っていくショーケースにどん!と追加されます。

「1日に何本くらい焼くか? 考えたことないですねぇ。減ったら追加して、減ったら追加しての繰り返し。頃合いを見ておしまいです」

朗らかで温かい雰囲気で地元の人々に愛される

メニュー表

愛らしいメニュー表。総菜系のほか、あんパンやクリームパンもコッペパンに挟むスタイルで

自動車整備工場勤めから一転、結婚を機に、妻の実家である「まるき製パン所」を継いだ木元さん。この地域は地元でもあり、木元さん自身が子どものころからパンを買っていた「まるき製パン所」に、後継ぎがいないとなれば放ってはおけませんでした。当時、義理の父である先代は既に病床に伏しており、わからないことがあるたびに店の2階にいる先代に質問に行って、パンの焼き方を覚えていったと言います。現在は、妻と3代目となる息子、たくさんのスタッフに囲まれて、にぎやかに毎日たくさんのパンを焼いています。

木元廣司さん

社長の木元廣司さん。店を継いで48年になる

「うちは仕事中も私語OK。みんな明るく、楽しそうに働いてほしいですから。中には40年働いてくれてる人もいますよ。そういうパン屋の方がおいしそうでしょう?」と木元さんは笑います。

たっぷりのキャベツ

たっぷりのキャベツが、クセになる食感とパンがしんなりしにくい秘訣(ひけつ)

食パン

食パンや菓子パンなどのパンも並ぶ。パンの種類はコッペパンサンドを含め60種ほど

町家の趣を残した店頭には、おこづかいを握りしめた小学生から公園に向かう親子、スーツ姿の男性や地元のおばあちゃん、1日に2度来店することもあるという外国人のお客さんまで、さまざまな人が訪れます。棚にないコッペパンサンドは、注文すれば奥の厨房ですぐさま作って出してくれます。ショーケースを前に「どれにしよう」と選び、まだほんのりと温かいコッペパンサンドを受け取ると、なんだか心までほかほかと温まるようです。

販売風景

最近ではあまり見かけなくなった、スタッフがショーケースからパンを出すスタイル。牛乳やコーヒーなどの飲み物もある

特別な材料や製法はないという、「まるき製パン所」のパン。けれど、ふかふかしたパンの食感とキャベツの歯触り、どこかなつかしいハムの味わいを思い出すと、なんだか無性に食べたくなるのです。できるかぎり手作りで、作りたての味を、一人ひとりに手渡すこと。それが「まるき製パン所」の“特別な”隠し味なのかもしれません。

まるき製パン所
075-821-9683
京都市下京区松原通猪熊西入北門前町740
6:30〜20:00(日曜・祝日7:00〜14:00)
不定休

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BOOK

名物・コッペパンサンドを求めて。京都人に愛される街のパン屋「まるき製パン所」

京都のいいとこ。

大橋知沙さんの著書「京都のいいとこ。」(朝日新聞出版)が6月7日に出版されました。&TRAVELの人気連載「京都ゆるり休日さんぽ」で2016年11月~2019年4月まで掲載した記事の中から厳選、加筆修正、新たに取材した京都のスポット90軒を紹介しています。エリア別に記事を再編して、わかりやすい地図も付いています。この本が京都への旅の一助になれば幸いです。税別1200円。


PROFILE

  • 大橋知沙

    編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブックやWEB、ライフスタイル誌などを中心に取材・執筆を手がける。本WEBの連載「京都ゆるり休日さんぽ」をまとめた著書に『京都のいいとこ。』(朝日新聞出版)。編集・執筆に参加した本に『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

  • 津久井珠美

    1976年京都府生まれ。立命館大学(西洋史学科)卒業後、1年間映写技師として働き、写真を本格的に始める。2000〜2002年、写真家・平間至氏に師事。京都に戻り、雑誌、書籍、広告など、多岐にわたり撮影に携わる。

街に開かれ、人が行き交う。岡崎の新名所「京都市京セラ美術館」

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