楽しいひとり温泉

温泉+春らんまん 風土を感じ、季節を楽しむ 長門湯本温泉「別邸音信(おとずれ)」

風土を感じ、季節を味わい、ゆっくりと流れる旅の時間を楽しむ。ひとり旅ならそんな楽しみもひとしおです。温泉のぬくもりに癒やされて、スパで疲れをときほぐし、夕暮れの美しい温泉街を散歩して、土地の旬の滋味を、萩焼の器でしみじみと味わいます。春らんまんの長門湯本温泉を旅しました。
(写真:杉本圭)

(トップ写真:照明デザイナー・長町志穂さんによって、夜も歩きたい温泉街に生まれ変わった)

■連載「楽しいひとり温泉」は、全国各地の温泉をめぐり、温泉・自然・食で美しくなる旅を研究する、温泉ビューティー研究家の石井宏子さんが、テーマごとにひとり温泉にぴったりなお宿を紹介します。

少しずつ、ゆっくりと、旅の時間へ

回廊水盤

印象的な回廊水盤を通って宿へ

別邸音信は、創業139年の老舗旅館・大谷山荘の別邸で2006年にオープンしました。門をくぐり、エントランスへと進むと美しい回廊水盤が現れて、高揚感に誘われます。

エントランスホール

青葉のもみじが揺れるエントランスホール

ゆとりのエントランスホール。もみじの若葉がそよ風に揺れています。「まずは、お茶室で一服いかがですか」と、奥にあるお茶室へ案内されます。お菓子をいただき、お抹茶の香りに包まれて、忙しくしていた現実から、旅時間へとスイッチが切り替わっていきます。

温泉と癒やしのスパで、心身の疲れを解き放つ

大浴場

男女別大浴場は、内湯、寝湯、露天風呂があってのんびりできる

男女別大浴場は、深めで肩まですっぽり入れる内湯と、ぬるめの寝湯、ほどよい温度の岩盤浴があります。露天風呂はやや熱めで、山の緑や、桜が見える時期にはお花見温泉になります。やわらかな感触の温泉に浸り、ストレスも緩んでいくようです。泉質はアルカリ性単純温泉、pH9.67でとろんとした肌触り。肌の古い角質を優しく落として、湯あがりの肌はすべすべです。

グランデスパ otozure

館内にある「グランデスパ otozure」

この宿に泊まる時に楽しみにしていることがあります。それは、宿の中にある「グランデスパ otozure」。流れる水をイメージしたスパルームもすてきです。セラピストの村田真理子さんとの最初の出会いは、もう10年以上も前になります。お願いするコースは、フリースタイルLomilomiのボディートリートメント60分。優雅なダンスのような動きで、腕や10本の指先を使って躍動する手技の心地よさに感動し、以来わたしは、村田さんのことを神の手を持つセラピスト“ゴッドハンドさん”と呼んでいるのです。10年たってもパワフルな施術は変わることなく、今回も隠れたコリまで見つけてほぐして流してもらってスッキリ元気になりました。

テラスとかけ流しの温泉付きの部屋

Aタイプ客室

広いテラスが特徴のAタイプ客室、10畳の和室とベッドルームがある

客室は18室で、デザインの異なる7タイプがあり、全室かけ流し温泉の露天風呂付き。どの部屋もひとり宿泊が可能です。広いテラスが特徴のAタイプ客室は開放感があって広がる山の風景が楽しめます。

露天風呂

全室に専用のかけ流し温泉露天風呂

テラスには、専用のかけ流し温泉の露天風呂もあります。ソファでぼんやり過ごし、寒くなったら、かけ流しの温泉へどぼん。

土地の滋味を味わう「三土料理」の美学

雲遊

別邸音信の夕食は、館内の日本料理 雲遊で

宿の夕食は、その土地のものを、その土地の料理法で、その土地で食すという「三土料理」の哲学を大切にした長門会席料理。月替わりで、長門周辺の旬の食材が地元作家の萩焼の器で味わえます。

会席料理

地元作家の萩焼の器も楽しみな会席料理

先付は、住吉大明神からのお告げによって発見されたと伝わる長門湯本温泉の土地の文化を感じる盛り付けで。宇部の白ミル貝、車エビ、つくし、菜の花などを爽やかなわさび酢のジュレ掛けでいただく、春を感じる一品です。

お造り

お造りは仙崎港の新鮮な海の幸と山の幸の2皿

お造りは、海のものと山のものを、それぞれの器で。海は、地元の仙崎港から、タイ、イカ、アジ。脂ののったアジやねっとりと濃厚なイカは、とろりと濃いめの長門・黄波戸のマルサン醬油(しょうゆ)がよくあいます。「タイは、さっぱりと土佐醬油があいますよ」と仲居さんが教えてくれました。山からは、山口野菜のはなっこりーや新タマネギ。萩ひしほみその甘辛い味わいが絶妙のアクセントです。

焼き八寸

メインの焼き八寸は長萩和牛炭火焼き

焼き八寸は、長萩和牛の炭火焼き。程よいミディアムに火入れした和牛は山椒(さんしょう)みそとネギをちょこっとのせていただきます。かむとじゅわっと肉汁の甘味が広がって幸せ。仙崎産もずく酢と徳地産じねんじょを生姜(しょうが)で味わう付け合わせ。もう一品は、スナップエンドウの白あえ。上にのった糸ウニの塩味とコクがふんわり優しい豆腐の味わいを引き立てます。

長門湯本温泉の神髄に触れる「恩湯(おんとう)」へ

恩湯

長門湯本温泉の共同浴場「恩湯」

翌朝は、長門湯本温泉の“湯力”を実感できる共同浴場「恩湯」へ。再建されて2020年3月18日にオープンしました。こんこんと温泉が自然湧出(ゆうしゅつ)する様子を温泉に入って眺める「源泉ビュー」で、奥には袈裟(けさ)を着た住吉大明神の像が鎮座しています。

湯船の中は別の源泉が底から直結していて生まれたての源泉かけ流し。中央の注ぎ口からは異なる自然湧出源泉が注ぎ込まれる大変希少な造りです。2本の自然湧出源泉が注がれる湯船の温泉に入り、さらに無数の源泉が自然湧出する様子を眺めることができるぜいたくすぎる共同浴場なのです。湧きたての新鮮な温泉は、とろんとろんの感触。深さ1メートルの湯船にたっぷりと満たされた源泉はぎゅっと肌に寄り添ってくるような密着感があります。ぬるめで長湯ができそうに思うのですが、あっという間に温まってしまいます。“神授の湯”のチカラでしょうか。

山口県・長門湯本温泉 別邸音信
https://otozure.jp/

恩湯
https://onto.jp/

■「楽しいひとり温泉」ポイント
1.ゆったりと流れる時間
2.ゴッドハンドのスパ
3.自噴温泉の恩湯

BOOK

温泉+春らんまん 風土を感じ、季節を楽しむ 長門湯本温泉「別邸音信(おとずれ)」

全国ごほうびひとり旅温泉手帖 いい湯、いい宿、旅ごはん!

石井宏子さんの著書「全国ごほうびひとり旅温泉手帖 いい湯、いい宿、旅ごはん!」(世界文化社)が11月16日に出版されました。温泉ビューティー研究家・旅行作家ならではの、旅してみつけた、女性がひとりで安心して楽しめる温泉宿を紹介するハンディーな一冊。公共交通機関で行ける、自分へのごほうびで泊まりたい、いい宿を全国から厳選し、あわせて、女性目線で選んだ周辺の立ち寄り先、ランチやスイーツも取り上げます。ひとりでも楽しい観光列車も登場します。税別1400円。

PROFILE

石井宏子

温泉ビューティー研究家・トラベルジャーナリスト。日本・世界の温泉や大自然を旅して写真撮影・執筆をする旅行作家。テレビにも出演。温泉・自然・食で美しくなる旅を研究する。海外ブランドのマーケティング・広報の経験から温泉地の企画や研修もサポート。日本温泉気候物理医学会会員、日本温泉科学会会員、日本旅のペンクラブ会員、気候療法士(ドイツ)、温泉入浴指導員。著書に「癒されてきれいになる おひとりさま温泉」(朝日新聞出版)、「地球のチカラをチャージ! 海温泉 山温泉 花温泉 76」(マガジンハウス)、「感動の温泉宿100」(文春新書)などのほか、「全国ごほうびひとり旅温泉手帖 いい湯、いい宿、旅ごはん!」(世界文化社)が11月に発売された。

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