にっぽんの逸品を訪ねて

もう一度味わいたいグルメの逸品たち“ラーメン編”

約4年間ご紹介してきた全国の旅の中から、今回は、忘れられないラーメン店を集めました。全国にはさまざまなラーメンがありますが、人気店に共通しているのは、一杯にかける情熱とこだわり、そして「お客さんを喜ばせたい」という愛情でしょうか。思い出に残る4軒をご紹介します。

連載「にっぽんの逸品を訪ねて」は、ライター・中元千恵子さんが日本各地の逸品を訪ね、それを育んだ町の歴史や風土を紹介します。

麺もワンタンも手打ち。一本気なおやじさんが作る極上の白河ラーメン

まずは福島県白河市のご当地ラーメンから。白河市は、古くから奥州の玄関口として発展し、白河関跡や再建された白河小峰城が残る歴史のある町です。ここで愛されているのが、コシの強い手打ち麺(めん)が特徴の白河ラーメン。市内には白河ラーメンの店が100軒ほどあるといわれています。

地元でも人気の一軒が「手打中華 すずき」。

「手打中華 すずき」

「手打中華 すずき」

白河ラーメンの元祖ともいわれる「手打中華 とら食堂」の初代店主のもとで修業したご主人が、生真面目に手打ちを守り、コシのある縮れ麺が味わえます。

自家製手打ち麺

自家製手打ち麺にこだわっています

この日、注文したのは「手打ワンタンメン」。スープは、宮崎地鶏の鶏ガラと豚骨をベースにしたしょうゆ味で、さっぱりとした口当たりですが、コクがあります。力強い中太の縮(ちぢ)れ麺にうまみの濃いスープがからんで、おいしいこと。

チャーシューも、牧場から直接仕入れる豚内モモ肉を燻製(くんせい)し、しょうゆでじっくりと煮込んだ自家製です。

「手打ワンタンメン」

「手打ワンタンメン」

「手打中華 すずき」では、手打ちのワンタンも名物です。その舌ざわりは絹のようになめらか。ワンタンは「雲呑」と書くことがありますが、まさに雲を飲むような食感です。

皮も手打ちで作るワンタン

皮も手打ちで作るワンタン

ワンタン

つるんとしたワンタンは極上の味わい

白河市には、全国でもめずらしい、というより、おそらくこの地方にしか存在しないのではないかと言われる「飛翔(ひしょう)する狛(こま)犬たち」があります。神社の入り口などに置かれている一対の狛犬像が、雲に乗り、尾やたてがみを風になびかせた芸術的作品になっているものが見られます。

「なぜ、この地方に?」とルーツをひもとくと、そこには江戸時代に脱藩という罪を犯してまでこの地に住み着いた一人の高遠石工(たかとおいしく)の存在が……。狛犬めぐりは、歴史ロマンも感じられます。

狛犬

全国から芸術的な狛犬たちの見学者が訪れます

■紹介記事はこちら
城とラーメンの町で注目を集める新名物は“飛翔する狛犬たち”/福島県白河市ほか

ラーメンをこよなく愛する米沢の人たち。こだわりの“くちびるざわり”とは?

「米沢ではお客さんが来たら、ラーメンの出前をとってふるまうのが普通」という話を聞くほど、山形県米沢市では“米沢らーめん”が愛されています。約100年の歴史があると言われており、市内に店は100軒以上。全国にご当地ラーメンは多いですが、ラーメンで地域団体商標登録されたのは、米沢などごくわずか。

「昔から愛されてきた“米沢らーめん”の味が守られるよう、いち早く地元が団結して地域団体商標登録に動きました」と市内の岸製麺の社長さんが話してくれました。

市民にこよなく愛される米沢らーめんの魅力とは?

ぷるぷるした麺

ぷるぷるとした麺の食感がたまりません(東部食堂にて)

特徴的なのは、地元の人たちが“くちびるざわり”とよぶ、手もみ縮れ細麺のぷるぷるの食感です。水分を多く含んだ「多加水(たかすい)」といわれる麺を手もみし、熟成させることで、スープを含んだ麺がぷるぷるとくちびるではねる、独特の感触が生まれます。この麺と、鶏ガラと煮干しをベースにした品のよいスープの組み合わせが、米沢らーめんを「毎日食べても飽きない」といわしめています。

岸製麺を見学させていただくと、ひと玉ひと玉、手作業で麺に縮れをつけていました。

手もみ

手もみはかなり力と根気がいる作業です

麺

右側のストレート麺が、手もみをすると左側のように縮れます

米沢らーめんを味わったのは、米沢駅から徒歩約5分の東部食堂。ご夫婦で約35年間営んできたお店です。

「東部食堂」

「東部食堂」

ご主人は、経験に基づいて、その日の気温や湿度、麺の状態から最適な時間で麺をゆで上げます。

麺をゆでる

大鍋で麺をゆでます

開店以来、研究し続けてきたスープは、煮干しと鶏ガラがベース。しょうゆと合わせると美しい黄金色になり、見た目も食欲をそそります。

スープを注ぐ

すんだスープが注がれます

煮干しがきいたさっぱりとしながら奥行きのあるスープが、細めの縮れ麺にからんで、美味。一気に食べられます。

中華そば

東部食堂の「中華そば」

おかみさん

おかみさんの笑顔も味わいを増してくれました

■紹介記事はこちら
上杉の城下町で“米沢らーめん”と“米沢牛”の二大名物を味わう
※東部食堂 0238-23-2522/11:00~15:00/月曜(祝日の場合翌日)休(営業時間が変更されました)

甘辛く煮た豚バラ肉がたっぷり。まるですき焼きのような徳島ラーメン

特徴のあるご当地ラーメンといえば、徳島ラーメンもその一つです。
徳島市を中心に県内に数多くの店がありますが、印象的だったのが「徳島ラーメン奥屋 北島店」。

外観

スタイリッシュな外観

ジャズが流れる店内は、黒や赤を基調にしたシックな内装で、ゆっくり食事が楽しめる雰囲気です。
こんな貼り紙を見つけて、心が温かくなりました。

貼り紙

子ども連れでもゆっくりラーメンが味わえますね

徳島ラーメンは豚骨ベースにしょうゆをきかせた“茶系スープ”と甘辛く煮た豚バラ肉のトッピングが特徴。味が濃く見えますが、しつこくなく、食が進みます。

奥屋の徳島ラーメンは、濃厚な豚骨しょうゆスープと、中細ストレートのもちもちとした存在感のある麺がお互いを引き立て合います。生卵を落としてすき焼き風に食べるのもおすすめです。

「徳島ラーメンの肉玉入り」

「徳島ラーメンの肉玉入り」

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徳島で御朱印が人気の天神社、絶対食べたい名物グルメを巡る

味わえるラーメンは20種以上。麺の細さも使い分ける飛驒市の人気店

岐阜県飛驒市もラーメン店が多く、ラーメン好きの土地柄のようです。地元の方たちが「おいしくて人気があるよ」と連れて行ってくれたのが「HIRO’(ヒロダッシュ)」。一見すると、ラーメン店とは思えない外観です。

外観

看板も小さめのすっきりした外観です

伝統の飛驒ラーメンだけにとどまらず、20種類以上のさまざまな味が楽しめます。麺も極太、中太ストレート、中太ちぢれを使い分けているそう。

一番人気はトマトラーメンです。だしの風味が際立つまろやかなスープとチーズ、中太ストレート麺の相性がぴったり。カリカリに焼いた香ばしいチーズの香りも食欲をそそり、クセになる味です。

トマトラーメン

さっぱりとして食べやすい「トマトラーメン」

このお店は電話番号を公開していません。理由の一つには、調理に集中して来店客を大切にしたいという思いがあるのだとか。そんな点にもこだわりと心意気を感じます。

■紹介記事はこちら
『君の名は。』の舞台でティーセレモニー 飛驒市古川町

【問い合わせ】
・「手打中華 すずき」 0248-22-3392/11:30~18:00(材料がなくなり次第終了)、火曜(祝日の場合翌日)休

・東部食堂 0238-23-2522/11:00~15:00/月曜(祝日の場合翌日)休

・徳島ラーメン奥屋
http://okuya.co.jp/

・HIRO’
https://hirodash.jimdo.com/

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PROFILE

中元千恵子

旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの温泉宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。
全国各地のアンテナショップを紹介するサイト 風土47でも連載中

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