永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶

(54)ホースのシャワーにはじける笑顔 永瀬正敏が撮った京都 

国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回は、このシリーズで初めて紹介する、京都を撮った写真。狙ったのは名所旧跡ではなく、路地に輝く子供の笑顔です。撮影する永瀬さんの心には、時を超える思いが去来していました。

(54)ホースのシャワーにはじける笑顔 永瀬正敏が撮った京都 

©Masatoshi Nagase

誰かのお父さんが近所の子供たちを集めて路地で水遊びをしていた。
たくさんの子供たちの笑顔と響き渡る歓喜の声。
一緒に仲間に入れてもらう感じでシャッターを切った。

遠い彼方(かなた)からのデジャブのような、記憶との再会のような、そんな光景。

誰かのお父さんからホースを受け取り、子供たちが代わる代わる水を浴びせ、
他の子供たちは必死になって楽しそうに逃げ回っている。

最後にみんなに集まってもらって記念写真を撮った。
その時、再び誰かのお父さんが子供たちに向け、水のシャワーを発射。
子供たちは必死にピースサインをしながら、そのシャワーをはじけんばかりの笑顔で浴びていた。

僕の祖父は戦前、写真館を営んでいた写真家。
祖父の残した写真にも、子供たちの写る作品が多数ある。
特に当時の時代背景と理不尽な出来事で写真館を失ってから、
カメラ1台だけ持って外へ出向き、商売抜きで近所の子供たちを写した写真は、
今見ても僕に様々な感情を呼び起こさせる。

過去、現在、そして未来。
時代を超えて、子供たちの無邪気な姿はやはりかけがえのないものだ。

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PROFILE

永瀬正敏

1966年宮崎県生まれ。1983年、映画「ションベン・ライダー」(相米慎二監督)でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督「ミステリー・トレイン」(89年)、山田洋次監督「息子」(91年)など国内外の約100本の作品に出演し、数々の賞を受賞。カンヌ映画祭では、河瀬直美監督「あん」(2015年)、ジム・ジャームッシュ監督「パターソン」(16年)、河瀬直美監督「光」(17年)と、出演作が3年連続で出品された。近年の出演作に常盤司郎監督「最初の晩餐」、オダギリジョー監督「ある船頭の話」、周防正行監督「カツベン!」、甲斐さやか監督「赤い雪」など。写真家としても多くの個展を開き、20年以上のキャリアを持つ。2018年、芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞。

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