ちょっと冒険ひとり旅

争いの傷痕が残るコソボの古都へ バルカン半島4カ国ひとり旅#05

長く続いた争いの時代を経て、いま旅人の間で注目を集めているバルカン半島。旅行ライターの山田静さんが2019年秋に旅したバルカン半島4カ国の旅を7回に分けて紹介します。前回に続き、5回目もコソボの旅。オスマン帝国時代の街並みが残る古都プリズレンです。

(トップ写真はプリズレンの街並み)

■何回目かのひとり旅、ちょっとだけ冒険してみたい。そんな旅人のヒントになりそうな旅先や旅のスタイルを紹介している連載「ちょっと冒険ひとり旅」。京都で旅館の運営をしながら、旅行ライターとしても活躍する山田静さんが、飛行機やバスを乗り継いで比較的簡単に行ける、旅しがいのあるスポットをご紹介していきます。バックナンバーはこちら

絵になる古都プリズレン

わっ、かわいい!

車窓いっぱいに広がる光景に柄にもなく声をあげてしまった。

プリシュティナからバスで1時間半。到着したのはコソボ滞在の2都市目、プリズレンだ。起源はローマ時代にさかのぼるという古都で、街の中心を流れるビストリツァ川の特に南側にはオスマン帝国時代の建物が多く残され、赤い屋根が連なる様子はなんともかわいらしい。川沿いでは絵描きやストリートミュージシャンが腕をふるい、ジェラート片手に散策する旅行者たち。なんとものどかな風景だ。

さっきまでいた首都プリシュティナの奇抜な建築や、クリントン像とはまた全然違う雰囲気に、戸惑いつつも旅気分が盛り上がる。

川沿い

川沿いには屋台や路上アーティストの姿が

カフェ

カフェもいっぱい。今回の旅では、どの街でもこんなオープンエアのカフェに出合えた。ひと休みにぴったり

街路樹

中心部の街路樹にはこんなかわいいデコレーション

民族衣装

1878年、アルバニア人が「プリズレン連盟」を結成し民族団結を誓った街にある「プリズレン連盟博物館」。セルビア人勢力との紛争で建物は損壊したそうで、修理中の屋内にアルバニアの民俗資料や当時の文書資料がぽつりぽつりと展示されていた。民族衣装がかわいい!

眺望

街を見下ろすプリズレン城塞(じょうさい)からの眺望。オスマン帝国時代に現在のような街並みが出来上がったそう

教会とモスクと

天気もよく人も明るくご飯もおいしく街はかわいい。これ以上ない旅日和にうきうきしながら散歩を続け、川の北側にあるリェヴィシャの生神女(しょうしんじょ)教会を訪れて足が止まった。

リェヴィシャの生神女教会

リェヴィシャの生神女教会。有刺鉄線が張り巡らされて中には入れない。内部も荒れたままになっているようだった

内部にある有名なフレスコ画を、有刺鉄線ごしに写真に撮れないかと周囲をぐるぐると歩いていたら、建物横にある小さな交番から、警官らしき人物がじっとこちらを見ている。ここは退散したほうがよさそうだ。

スィナン・パシャ・ジャミーア

教会の多くが放置されているいっぽう、モスクはしっかり修復されている。内部の装飾が美しいスィナン・パシャ・ジャミーアには礼拝に訪れる人も多かった

もともとアルバニア人が多く暮らしていたプリズレンは、コソボ紛争以降はセルビア系勢力との争いの舞台となった。こういうときに民族の象徴として狙われるのが宗教施設だ。12世紀創建のセルビア正教・リェヴィシャの生神女教会は2004年、アルバニア人によって破壊され、修復もままならないまま、警戒態勢が続いているのだという。

美しい自然や街並みと同時に目に入ってくる生々しい戦いの痕跡。どちらもむきだしで旅人の目の前に提示される。バルカン半島の旅は、感情が忙しい。

木造建築の街ジャコヴァへ

プリズレンから、面白そうな街に出かけてみた。旅ブログで京都に似ている、などと紹介されていた小さな街ジャコヴァだ。プリズレンから北西に30キロあまり、タクシーで30分の距離だ。背の低い木造家屋がずらりと並ぶ風景は、京都というか街道沿いの宿場町のよう。ここも紛争時にかなり破壊されたというが街の修復は進み、バーやカフェが集まるエリアは若者でいっぱいだ。

ここから写真で紹介していこう。

木造建築

中心部からオールドバザールへと続く道沿いは、ほとんどが平屋の木造建築。なぜか昭和の雰囲気だ

床机に似たもの

日本でいうところの「床机(しょうぎ)」に似たベンチもある。使わないときは壁側にたたんでおけるのも、日本の町家と似ている

街並み

街並み

特に観光地というわけでもなく、土産物屋やカフェもあるが、多くの家にはふつうに人が暮らしている

木彫り

木工の街だったのだろうか。美しい木彫、木工店も多く見かけた

スーパーマーケット

二階建ての家もある。こちらはスーパーマーケット。ちょっと傾いているのがまたいい

オールドバザール周辺

オールドバザール周辺はレストランやカフェがいっぱい。歩いていると何人もから「ジャパン!」「一緒に写真撮ろうよ!」と声をかけられた。陽気で人なつこい人が多いな、というのもコソボの印象

ブルスケッタ

オールドバザールのカフェでひと休み。オリーブとチーズのブルスケッタ。南に下るにつれ、料理がイタリア風になってきた

コソボに行ったらプリズレンは外せないよ、と旅の間も何度もすすめられたプリズレン。のどかで明るく、何日かのんびりしてもいいな、なんて思わせる素敵な街だった。

夕暮れのプリズレン

夕暮れのプリズレン。絵になる街だ

さて、次はいよいよ旅の目的地、アルバニアへ。

「アルバニア行きのバス停がどこにもない……」

いきなりの困惑からはじまる旅だった。

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BOOK

争いの傷痕が残るコソボの古都へ バルカン半島4カ国ひとり旅#05

京都で町家旅館はじめました(双葉社)

京都に開業した町家旅館のマネジャーをつとめることになった著者が、開業準備から実際の運営に至るまでのドタバタとドキドキ、そして京都のお気に入りスポットなどを綴(つづ)ったエッセーガイド。1540円(税込み)。

 

争いの傷痕が残るコソボの古都へ バルカン半島4カ国ひとり旅#05

旅の賢人たちがつくった
女子ひとり海外旅行最強ナビ(辰巳出版)

連載「ちょっと冒険ひとり旅」著者の山田静さんが、海外ひとり旅に行きたいすべての人にお届けする、旅のノウハウをぎゅっと詰め込んだ1冊。行き先の選びかた、航空券やホテルをお得に効率よく予約する方法、荷物選びと荷造りのコツ、現地での歩きかたのツボ、モデルルート、遭遇しがちなトラブルとその回避法など、準備から帰国までまるっとカバーしました。旅の達人によるコラム記事やアンケートも満載で、ひとり旅の準備はまずこの1冊から。1650円(税込み)。

PROFILE

山田静

女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『旅の賢人たちがつくったヨーロッパ旅行最強ナビ』(辰巳出版)、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。2016年6月中旬、京都に開業した小さな旅館「京町家 楽遊」の運営も担当。

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