楽しいひとり温泉

温泉+サンセット 東シナ海に沈む夕日が見たくて 天草下田温泉「五足のくつ」

スカーンと、何もかも忘れて旅の世界に浸りたくなると、2018年に訪れた天草諸島の温泉宿「石山離宮 五足のくつ」を思い出します。深いブルーの東シナ海に、大きな濃いオレンジ色の太陽が沈むサンセット。最後は線香花火のように小さくなって水平線へ消えていきます。ディナーが終わると、きらめく星空、天草古来種と南洋植物が競い合うように茂る樹林から、虫なのか、鳥なのか、不思議な鳴き声が聞こえてきます。
(トップ写真:宿の前の鬼海ヶ浦から眺める大パノラマの夕日)

■連載「楽しいひとり温泉」は、全国各地の温泉をめぐり、温泉・自然・食で美しくなる旅を研究する、温泉ビューティー研究家の石井宏子さんが、テーマごとにひとり温泉にぴったりなお宿を紹介します。

密林の露天風呂で旅の空想にひたる

露天風呂

ヴィラC-1の部屋専用の源泉かけ流し露天風呂

「石山離宮 五足のくつ」は、天草諸島・下島の天草下田温泉にあります。オーナーの山﨑博文さんの豊かな発想が、独特の非日常感を生み出しています。「日本でもないアジアでもない天草」というエキゾチックな文化を体感できる空間。真っ赤に燃える太陽と青い空、海、星空しかみえない場所を探し歩いて見つけた天草陶石の石山に、ヴィラスタイルの宿を築きました。

全室に専用の温泉がついています。部屋についたら、とにもかくにも温泉へ。露天風呂のエキゾチックな光景は、ここが日本であることを忘れてしまいそう。遠くで聞こえる潮騒の音、生命力あふれる緑の香り、とろけるようなつるつるの湯の感触に包まれて、ただただ、ぼんやりと時を過ごします。天草下田温泉の源泉かけ流しで、泉質はナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉、pH7.5の弱アルカリ性。古い角質を落として肌をなめらかに整える炭酸水素塩泉と、しっかり温めてぽかぽか&しっとりが持続する塩化物泉の相乗作用で日常の疲れがほどけていきます。

オープンデッキ

ヴィラC-3は、広いオープンデッキが特徴

ふわふわのガウンを羽織って湯上がりビール。今、何時なのかは、全く気になりません。なぜなら、サンセットまでは、温泉とうたた寝で過ごす気ままなひとり旅ですから。

海外リゾートのような部屋

1泊でも海外リゾートに来たような気分が味わえる

部屋は15室で全室に専用の温泉があります。海を見下ろす石山に客室やレストランなどが点在し、雰囲気の異なる三つのゾーンになっています。ヴィラCゾーンは5室のプレミアム客室があり、石山の一番上。AとBのゾーンとはレストランも食事内容も異なります。部屋にはキングサイズベッドが二つあり、海外リゾートのような特別感に浸れます。

太陽も海も空も、鮮やかに染まる

夕日

毎日がドラマチック、同じ夕日は二度とない

ドラマチックな時間がやってきました。やった。今日は美しいサンセットが眺められそうです。部屋を飛び出して、宿が建つ石山の急な坂道をてくてくと下り、鬼海ヶ浦へと向かいます。さっきまでギラギラとまぶしかった太陽が、大きなオレンジ色の玉となって空を染めていきます。すごい。すごい。何もかもが黄金色。石山を下りて、道を渡ると鬼海ヶ浦の展望台にたどり着きます。目の前には大パノラマで広がる東シナ海。太陽が地平線へ近づくにつれて、だんだんと小さくなって、空と海の濃いブルーの世界にのみ込まれていきました。

天草のキリシタン文化を感じるレストラン

レストラン

教会のような雰囲気のレストランの個室で食事

レストラン「天正」は、ヴィラCのゲスト専用。グレゴリオ聖歌が流れる廊下を進み、海が見える個室でいただきます。

前菜

アワビの食感と味わいが引き立つ前菜

アワビと地野菜の前菜。新鮮なアワビの甘さとこりこりとした歯ごたえを味わい、オクラとジュンサイのつるんとした食感とのコントラストを楽しみ、甘い甘いトマトが爽やかに追いかける。これは、もう、スパークリングワインで美しい旅時間に乾杯です。

天草大王石焼き蒸し鍋

名物は天草大王石焼き蒸し鍋

ヴィラCのディナーの名物は「天草大王石焼き蒸し鍋」。天草大王は、日本最大級の迫力ある地鶏。この肉をまず、溶岩石で軽く焼き、そこへスープをかけて蒸し焼きにします。ぷりぷりとした身の締まり、ジューシーな肉汁の味わい深さがたまらず、絶叫してしまいそうです。

生ウニ

春と夏の天草は、生ウニまつり

春と夏の天草は「とろける生ウニまつり」です。5月中旬まではムラサキウニ、7月ごろから夏にかけては、アカウニです。その時期に行く時は、別注でウニ増量をお忘れなく。キンと冷えた白ワインで味わうもよし、ごはんにのせてウニ丼にするもよし。ああ、夏が待ち遠しい。

夜も朝も、部屋から10歩で温泉へどぼん

部屋の温泉

朝の光に包まれて、部屋の温泉へ

夜の温泉は、月明かりに照らされて月光浴。闇の密林は緑の香りがより一層強く感じられます。
見上げれば満天の星。朝、目覚めたら、ベッドから10歩で温泉へどぼん。部屋で気ままに入れる温泉は、ひとり旅の味方です。

朝食

自然乾燥で漁村の人たちが作るアジのみりん干しが絶品

ヴィラCの朝ごはんは、和食と洋食が選べます。この日は、アジのみりん干しが楽しみな和食。ゴシック様式が有名な海の天主堂・﨑津教会が立つ﨑津漁港の人たちがつくるアジのみりん干しです。ほのかに優しい甘さと、ふっくらやわらかな身の味わいが幸せを感じる朝ごはんなのです。

熊本県・天草下田温泉 石山離宮 五足のくつ
https://www.rikyu5.jp/

■「楽しいひとり温泉」ポイント
1. 圧倒的な別世界で日常を忘れる
2.自分だけの温泉で空想にひたる
3.天草でしか出会えない美食

BOOK

温泉+サンセット 東シナ海に沈む夕日が見たくて 天草下田温泉「五足のくつ」

全国ごほうびひとり旅温泉手帖 いい湯、いい宿、旅ごはん!

石井宏子さんの著書「全国ごほうびひとり旅温泉手帖 いい湯、いい宿、旅ごはん!」(世界文化社)が11月16日に出版されました。温泉ビューティー研究家・旅行作家ならではの、旅してみつけた、女性がひとりで安心して楽しめる温泉宿を紹介するハンディーな一冊。公共交通機関で行ける、自分へのごほうびで泊まりたい、いい宿を全国から厳選し、あわせて、女性目線で選んだ周辺の立ち寄り先、ランチやスイーツも取り上げます。ひとりでも楽しい観光列車も登場します。税別1400円。

PROFILE

石井宏子

温泉ビューティー研究家・トラベルジャーナリスト。日本・世界の温泉や大自然を旅して写真撮影・執筆をする旅行作家。テレビにも出演。温泉・自然・食で美しくなる旅を研究する。海外ブランドのマーケティング・広報の経験から温泉地の企画や研修もサポート。日本温泉気候物理医学会会員、日本温泉科学会会員、日本旅のペンクラブ会員、気候療法士(ドイツ)、温泉入浴指導員。著書に「癒されてきれいになる おひとりさま温泉」(朝日新聞出版)、「地球のチカラをチャージ! 海温泉 山温泉 花温泉 76」(マガジンハウス)、「感動の温泉宿100」(文春新書)などのほか、「全国ごほうびひとり旅温泉手帖 いい湯、いい宿、旅ごはん!」(世界文化社)が11月に発売された。

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