宇賀なつみ わたしには旅をさせよ

独身最後、母と2人で石和温泉へ 宇賀なつみがつづる旅(8)

フリーアナウンサーの宇賀なつみさんは、じつは旅が大好き。見知らぬ街に身を置いて、移ろう心をありのままにつづる連載「わたしには旅をさせよ」をお届けします。今回は独身最後に母と2人で訪れた、山梨県の石和(いさわ)温泉。2人きりでたくさん話をしたそうです。

(文・写真:宇賀なつみ)

「おんなどうし 石和」

独身最後の旅行は、母とふたりで温泉。
結婚が決まった時から、ずっと思っていた。

2017年4月。
3年前の春、婚姻届提出の10日前に、
私は母を助手席に乗せて、まずは河口湖へ向かった。

東京の桜はすっかり散ってしまった頃、
こちらの桜がようやく見頃を迎える。

桜

あいにくの曇り空の下、
寒さに耐えて必死に咲く桜は、強く美しかった。
同じ場所にじっと立って、
しっかり見ておかないと失礼なような気がした。

桜の思い出はいくつもあるけれど、
その時々によって、全く印象が違うから不思議だ。

その後、ランチをしたり買い物をしたりして、
夕方、石和温泉に向かい、
ふたりでゆっくりと温泉につかって、宿の中を散策した。

池

コイに餌をやりながら、楽しそうにはしゃぐ母。
現役の保育士で、いつも幼い子供たちと接しているからか、
家族の中で、誰よりも若くて元気だ。

夜は、部屋で食事とお酒を楽しんだ。
浴衣姿になると、不思議と心がほぐれる。
20年以上一緒に暮らしていたのに、
知らなかった話をたくさん聞くことができた。

24歳で結婚して、26歳でわたしを産んで、
それから、まぁ、色々あったようで。

目の前にいるこの人も、
ただ、ひとりのおんなのひとなんだと、初めて気がついた。

私の中ではずっと絶対的なおかあさんだったけど、
この夜は、おんなどうしの話ができた。

どんなに技術が進歩して、生活が便利になっても、
男女のあれこれ、家族のあれこれって、変わらないんだなぁ。
小津映画を見たあとのような気持ちになって、
なんだかホッとした。

遅くまで飲んで、日本酒を2本空けたっけ。
翌朝、チェックアウトの際に、
「毎朝見てますよ」と、声をかけていただき、
母がうれしそうにしていたのが忘れられない。

そういえば、宇賀の姓で予約を取ったのは、
あれが最後だったかもしれない。

最近の母はとても楽しそうだ。
どこへ行った、何を食べたと頻繁に連絡をくれるし、
趣味のフラダンスにも精を出している。

「なっちゃんのママは美人だね」と、
友達から言われることが、ひそかに自慢だったけど、
これからは、もっと自分のために……、
まだまだ長い人生を、満喫して欲しい。

空

よく晴れた帰り道、
美術館にいって、ワイナリーに寄った。
母が生まれた山梨の風景は、なぜか懐かしく感じられる。

運転しながら思った。

これから始まる結婚生活、
まぁ、なんとかなるでしょう。

あれから3年、楽しくやってるよ。

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PROFILE

宇賀なつみ

東京都出身。テレビ朝日「報道ステーション」の気象キャスターとしてデビュー。同番組スポーツキャスターとして、トップアスリートへのインタビューやスポーツ中継等を務めた後、「グッド!モーニング」「羽鳥慎一モーニングショー」など、情報・バラエティー番組を幅広く担当。2019年にフリーランスとなり、現在はテレビ朝日「池上彰のニュースそうだったのか!!」や、自身初の冠番組「川柳居酒屋なつみ」を担当。TBSラジオ「テンカイズ」やTOKYO FM「SUNDAYʼS POST」など、ラジオパーソナリティーにも挑戦している。2020年4月からは、MCを務める、関西テレビ・フジテレビ系「土曜はナニする!?」がスタートした。

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