ちょっと冒険ひとり旅

旅の最終目的地アルバニアへ バルカン半島4カ国ひとり旅#06

長く続いた争いの時代を経て、いま旅人の間で注目を集めているバルカン半島。旅行ライターの山田静さんが2019年秋に旅したバルカン半島4カ国の旅を7回に分けて紹介します。前回はコソボの古都を巡りました。6回目は最後の訪問国で旅の目的地・アルバニアへ。

(トップ写真はアルバニアのベラティ)

■何回目かのひとり旅、ちょっとだけ冒険してみたい。そんな旅人のヒントになりそうな旅先や旅のスタイルを紹介している連載「ちょっと冒険ひとり旅」。京都で旅館の運営をしながら、旅行ライターとしても活躍する山田静さんが、飛行機やバスを乗り継いで比較的簡単に行ける、旅しがいのあるスポットをご紹介していきます。バックナンバーはこちら

バスはどこ?

ネットで見ても宿の人に聞いても、プリズレンのバスターミナルは一つだけで、アルバニアの首都ティラナ行きのバスもそのターミナルから出発するはずなのだが。

「ティラナ行きのバスはここからは出ないよ」

ターミナルに到着して窓口で聞くと、意外な答え。周囲にいた人たちに手当たり次第に聞いていたら、旅行会社の青年が案内を買って出てくれた。

助かった、と同行すると、彼はスタスタと歩いてバスターミナルの外に出てしまった。ターミナルの出入場口の横で足を止めて振り向き、

「このあたりだよ。じゃあね、いい旅を!」

と、言われても、バスは1台も止まっていないし、バス停らしき看板もない。不安になって近くに立っていた旅行者らしき人に「ティラナ?」と聞くと、大きくうなずいてくれた。

バスターミナルの場所は正しかった。だが、アルバニアのバスはターミナルの中では乗れないらしい。

「アルバニア旅行はバスが便利だけど、バス停がない」

いくつかの旅ブログで見た記載に首をかしげていたのだが、そのあとアルバニア国内を旅してみると、バス停がない、というより場所が漠然としているので、ぼんやりしていると目的のバスが見つからない。

ただ、自分の経験上、そういう未整備な部分を残す土地の旅では、助けてくれる人の数もすごく多い。アルバニア人も、どこに行ってもとびきり親切だった。

バス乗り場

ティラナ行きのバス乗り場。これは自分では見つけられない……

バス

定刻通りにティラナ行きのバスが来たが、すでにぎゅうぎゅう詰め。私を含め、待っていた乗客の半分くらいは乗れない。と、ドライバーがどこかに電話をして、あぶれた乗客はタクシーに乗せられ途中の町で待機するよう指示された

ドライブイン

しばらくタクシーで走ったあと、ドライブインで下車。30分ほど待っていたら、別の街から来た長距離バスが止まりタクシー乗車組を乗せてくれた。周囲の人々は慣れた様子で、よくあることなのだろう

そもそも、バルカン半島の旅でいちばん行きたかったのがアルバニアだった。

1940年代に共産主義国家となったアルバニアは60年代にソ連と断交、ワルシャワ条約機構も脱退してほぼ鎖国。謎に包まれた国となった。ソ連崩壊の頃に一気に自由化が進み「アルバニア共和国」に生まれ変わったが、自由経済に移行したとたんネズミ講が国全体で大流行。97年にネズミ講の破綻(はたん)とともに騒乱が起きた、という波瀾(はらん)万丈すぎる近代史を持つ国だ。この不思議な国にいつか行ってみたい、と長らく興味を抱いていた。

バス停一つとってみても、いままでのバルカン半島の旅とちょっと違う。これは、面白い旅になりそうだ。

念願のアルバニアへ!

到着した首都ティラナからさらに南下して向かったのは世界遺産の街ベラティ。バスで2時間半、アルバニア有数の観光地なのだが、やっぱりバス乗り場が分からない。宿からバスターミナルまで乗せてもらったタクシードライバーに助けられて、ようやくベラティ行きの乗り場を発見。

バス

青い服がタクシードライバー。ランダムに停車するバスのなかからベラティ行きを探し出して、「この人はベラティに行くから」とバスの運転手に言い含めてくれた

道ばた

「ベラティだよ」と言われて降りると、ただの道ばた。一緒に下車した男性が、「ここからバスに乗るよ」と先導してくれて……

最後はローカルバスに乗車。前のバスを一緒に降りた男性が「この人はマンガレミ地区のホテルに行くから」と車掌に伝えると、乗客も一緒になって「次で下車だから用意しなさい」「ここで降りて」と世話してくれた。言葉がわからないので全部ジェスチャーだが。

千の窓の町に迷い込む

オスム川の斜面沿いに大きな窓のある家がびっしり並ぶことから「千の窓の町」と呼ばれるベラティ。オスマン帝国時代に完成した街並みが今も守られ、世界遺産に登録されている。

博物館などもあるものの、ベラティのベストな歩き方は「むやみに歩くこと」。千の窓の町を構成する家々はもちろん、ベラティ城砦(じょうさい)内部にも人々はふつうに生活している。民家に入り込まないように気をつけながら、昔のまま残されている狭い路地に迷い込み、いにしえの町に思いを巡らすのがとても楽しい。そんな町の雰囲気を、写真でご紹介していこう。

ベラティ

ベラティの街並み。川の両岸が丘になっていて、斜面に沿って家が密集する

斜面

下から見ると斜面はかなり急。この道を登り詰めてみる

路地

狭い路地が延々と続く。どの道がどうつながっているのか、Google マップを見ても全然わからない

猫

曲がり角から急にいろいろなものや人や猫が現れる

バイク

バイクも止まっていたが、この道を走るのは大変そう

ベラティ城砦

斜面を登り詰めたところにあるベラティ城砦。城砦の内部には遺跡や博物館もあるが、ほとんどの建物では人々がふつうに生活している

城砦からの景色

城砦からはなかなかの景色が楽しめる

展望台からの眺め

城砦のてっぺん、展望台からの眺め。川沿いに建設された都市だったのがわかる

ベラティの写真

街なかに展示されていた昔のベラティの写真。「千の窓の町」の景観はいまと変わらない

カフェ

歩き疲れて猫と一緒にカフェでひと休み

ベリー

あちこちで見かけた旬のベリー。酸っぱくておいしい

夜のベラティ

ほんのりライトアップされる、夜のベラティ。静かで美しい街だった

今回はここまで。次回は不思議建築巡りが楽しい、アルバニアの首都、ティラナへ。

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BOOK

旅の最終目的地アルバニアへ バルカン半島4カ国ひとり旅#06

京都で町家旅館はじめました(双葉社)

京都に開業した町家旅館のマネジャーをつとめることになった著者が、開業準備から実際の運営に至るまでのドタバタとドキドキ、そして京都のお気に入りスポットなどを綴(つづ)ったエッセーガイド。1540円(税込み)。

 

旅の最終目的地アルバニアへ バルカン半島4カ国ひとり旅#06

旅の賢人たちがつくった
女子ひとり海外旅行最強ナビ(辰巳出版)

連載「ちょっと冒険ひとり旅」著者の山田静さんが、海外ひとり旅に行きたいすべての人にお届けする、旅のノウハウをぎゅっと詰め込んだ1冊。行き先の選びかた、航空券やホテルをお得に効率よく予約する方法、荷物選びと荷造りのコツ、現地での歩きかたのツボ、モデルルート、遭遇しがちなトラブルとその回避法など、準備から帰国までまるっとカバーしました。旅の達人によるコラム記事やアンケートも満載で、ひとり旅の準備はまずこの1冊から。1650円(税込み)。

PROFILE

山田静

女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『旅の賢人たちがつくったヨーロッパ旅行最強ナビ』(辰巳出版)、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。2016年6月中旬、京都に開業した小さな旅館「京町家 楽遊」の運営も担当。

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