永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶

(58)偶然の再会と思い立った時の瞬発力 永瀬正敏が撮ったニューヨーク

国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回は、思い立った時の瞬発力が生きた作品について。旧知のモデルと再会した永瀬さんが、撮影にかけた思いとは。

(58)偶然の再会と思い立った時の瞬発力 永瀬正敏が撮ったニューヨーク

©Masatoshi Nagase

僕がニューヨークに滞在していた時、
「ニューヨーク・ファッション・ウィーク」に出演するため、
たまたま同じ時期にこの地を訪れていたモデルの友人が連絡をくれた。

「時間が合えば会いましょう、いやせっかくなんで撮影しちゃおうか」
そういう軽いノリで始まった撮影は、以前伺った時に「ココいいなぁ」と思っていた、
NY在住のカメラマンさんの自宅アパートメントをお借りして行った。
衣装や小道具はすべてモデルの彼女の私物と、彼女が撮影のために用意してくれたもの。

よく「いつか撮影しよう」とか「一緒に映画やりましょう」という話が、
プライベートな時間に話されたりする。
その中でいくつかは実現し、形になったものもあるが、ほとんどは実現しなかったりする。
でも僕は、ただの話で終わらせるのではなく、その全てを実現させたいと、いつも思う。
被写体の方がいて、手元にカメラがあればすぐに……。
アイデアがすでにあり、監督がいてカメラマンがいて演者がそこにいれば、
特に短編映画であればすぐにできるんじゃないか?と。
その瞬発力が思いもしない作品を生むこともあると思う。
映画に関しては監督の「脳内映画」「心内映画」で終わってしまうのはあまりにも惜しい。
出口を考えすぎなくても、まず動いて作品を作り出せば、
いつかはその作品を皆さんに見ていただく機会が訪れると信じている。
写真も同じだ。「撮影してほしい」と言われることほどうれしいことはない。
思い立った時の熱量を最大限に生かし、必ず実現させようと動く。

これもその“思い立った時の瞬発力”が実を結んだ作品だ。
このシリーズはまだ未公開カットがたくさんある。
いつか皆さんにご覧いただければと思っている。

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PROFILE

永瀬正敏

1966年宮崎県生まれ。1983年、映画「ションベン・ライダー」(相米慎二監督)でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督「ミステリー・トレイン」(89年)、山田洋次監督「息子」(91年)など国内外の約100本の作品に出演し、数々の賞を受賞。カンヌ映画祭では、河瀬直美監督「あん」(2015年)、ジム・ジャームッシュ監督「パターソン」(16年)、河瀬直美監督「光」(17年)と、出演作が3年連続で出品された。近年の出演作に常盤司郎監督「最初の晩餐」、オダギリジョー監督「ある船頭の話」、周防正行監督「カツベン!」、甲斐さやか監督「赤い雪」など。写真家としても多くの個展を開き、20年以上のキャリアを持つ。2018年、芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞。

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