ちょっと冒険ひとり旅

ちぐはぐなようで魅力的、アルバニアの首都ティラナ バルカン半島4カ国ひとり旅#07

長く続いた争いの時代を経て、いま旅人の間で注目を集めているバルカン半島。旅行ライターの山田静さんが2019年秋に旅したバルカン半島4カ国の旅を7回に分けて紹介します。前回から念願のアルバニア入り。最終回はアルバニアの首都・ティラナとその近郊を巡ります。

(トップ写真はティラナの名物建築、通称「ティラナのピラミッド」)

■何回目かのひとり旅、ちょっとだけ冒険してみたい。そんな旅人のヒントになりそうな旅先や旅のスタイルを紹介している連載「ちょっと冒険ひとり旅」。京都で旅館の運営をしながら、旅行ライターとしても活躍する山田静さんが、飛行機やバスを乗り継いで比較的簡単に行ける、旅しがいのあるスポットをご紹介していきます。バックナンバーはこちら

ティラナに漂う共産主義の名残

特になにもないのに、なぜかひきつけられる街がある。

ティラナは久しぶりに出会ったそんな街だった。

「必見!」と言われる観光スポットもなく、旅人からすると交通の要衝というだけで通りすぎてもいいような場所なのだが、散歩したらすっかり気に入ってしまった。

公園が多く緑がいっぱい。大きな広場や広い歩道は歩きやすく、バルカン半島でよく見てきた武骨なアパート群の合間に見られる奇抜な建築も面白い。レストランのメニューにはパスタやピザが並び、イタリア語も聞こえてきて、すぐそこはイタリア、というのが実感できる。

気候も温暖で人ものんびり。誰かに話しかけるとぱっと明るい笑顔とおしゃべりが返ってくる。

この地はほかのバルカン半島の国々と似たところもあり、東欧風でもあり、イタリア風でもあり、どこかアンバランス。でもそのちぐはぐ加減が、他にない魅力を醸し出しているのかもしれない。

アルバニアの国立歴史博物館

国立歴史博物館。アルバニアの歴史と民族の誇りを描いた巨大なモザイク画はいかにも旧共産圏という雰囲気。展示はちょっとスカスカ気味だったが、紀元前にさかのぼる国の起源と民族について学べる

ティラナのピラミッド

共産主義時代の名残もあって、ティラナには変わった建築が多い。これは「ティラナのピラミッド」と呼ばれる廃虚。1940〜50年代にアルバニアの首相を務め、鎖国政策を推し進めたエンヴェル・ホッジャの記念館だ。だが本人も建物も人気がなかったようで自由化とともにほどなく閉館。再利用計画はあるが放置されており、市民が散歩がてら登って遊んでいる

農業農村開発省

ケーキの包み紙のような建物だが、まさかの農業農村開発省

教会

ちょっと不思議な形の教会。もとはモスクだったらしい。共産主義時代に宗教が禁じられたアルバニアは、いまも無宗教の人がいるという

省庁

こちらも省庁の建物。こぞって不思議な色合い

サッカースタジアム

サッカースタジアム。なぜこういう形や色を選ぶのか

バンカー

ティラナ散策のもうひとつのポイントは、バンカーめぐり。共産主義時代に造られた、「核戦争でも壊れない」という地下壕(ごう)がいくつも残っていて、一部は共産主義時代を振り返る博物館「バンカート」として使われている

展示

展示されているのは、当時の写真や武器、盗聴器など。国境地帯では亡命者を捕らえるために犬が使われていた

展示

市民の間にはスパイもいて、隣人同士での監視も行われていた。盗撮、盗聴も日常だったとか

葉の家

共産主義時代のより詳細な裏舞台を展示した「葉の家」博物館。秘密警察シグリミの本拠地だった場所で、シグリミの活動や、市民にも紛れていたスパイたちの活動内容が分かる。盗撮、盗聴、密告のオンパレードで、展示の様子だけで「あの頃には戻りたくない」という人々の強い気持ちが伝わってくる

像

美術館の裏を通ったら、レーニンやスターリンの像が放置されていた。これも共産主義時代の名残だ

スカンデルベグ広場

街の中心、スカンデルベグ広場。だだっ広い広場の存在は旧共産圏らしいが、大道芸人や子どもたちの遠足場所にもなっていて、今となるとなかなか気持ちのいい空間

アルバニアの民族英雄を訪ねて

旅の最終日、夜中のフライトまで時間があったのでちょっと奮発して50ユーロでタクシーをチャーターし、ティラナの北30キロほどにあるクルヤに出かけた。

ここはアルバニア民族の英雄スカンデルベグの居城。15世紀、強大な支配者だったオスマン帝国に反旗を翻し一時的だが独立を勝ち取った人物で、アルバニアがオスマン帝国からの独立を目指した19世紀には民族自立の象徴となった。というわけで、アルバニア人にとっては一度は訪れたいスポットなのだ。

オスマン帝国との決戦を描いた巨大壁画など派手な展示物が多い博物館がメインの見どころだが、それ以外の場所はなんとものどかな観光地。駐車場からお城までの道には露店が並び、アルバニアの美しい工芸品が目を引く。緑豊かな山にはカフェやホテルも並んで、のどかな山岳リゾートといった趣だ。

クルヤ城

クルヤ城。スカンデルベグはここでオスマン帝国を3度撃退したそう

博物館の壁

博物館の壁一面に描かれたオスマン帝国との決戦。中央の旗の下、ひときわカッコよく描かれているのがスカンデルベグだ

民族博物館

民族博物館もある。これは牧畜や農業に使われた道具

細工物

木工が盛んだったそうで、タンスや椅子など美しい細工物が多い

声をかける人

写真を撮っていたら上から「おーい」と声がして、上を見ると手をふっていた。こんな感じで声をかけられることも多く、人なつっこい人が多かった

バザール

クルヤ城の隣にバザールもあり、民芸品が売られている

夕暮れどき、タクシーに戻る前に道端で絵を描いていたおじいさんから小さな油彩を5ユーロで買ってタクシーに乗り込んだ。

山道が面倒だったらしく、なんでこんなところに日本人がひとりで、とぶつぶつ言っていたドライバーが聞いてきた。

「なんにもないだろ、アルバニア。楽しかったかい?」

もちろん。まだまだ見たいところがあるし、また来るよ!

クルヤ城と歩哨の絵

ほとんど買い物をしなかったので、これが唯一のバルカン半島旅の記念品。クルヤ城と歩哨の絵だ

さて、次回は番外編としてバルカン半島旅の食事や経費についてご案内したい。思った以上に安かった。

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BOOK

ちぐはぐなようで魅力的、アルバニアの首都ティラナ バルカン半島4カ国ひとり旅#07

京都で町家旅館はじめました(双葉社)

京都に開業した町家旅館のマネジャーをつとめることになった著者が、開業準備から実際の運営に至るまでのドタバタとドキドキ、そして京都のお気に入りスポットなどを綴(つづ)ったエッセーガイド。1540円(税込み)。

 

ちぐはぐなようで魅力的、アルバニアの首都ティラナ バルカン半島4カ国ひとり旅#07

旅の賢人たちがつくった
女子ひとり海外旅行最強ナビ(辰巳出版)

連載「ちょっと冒険ひとり旅」著者の山田静さんが、海外ひとり旅に行きたいすべての人にお届けする、旅のノウハウをぎゅっと詰め込んだ1冊。行き先の選びかた、航空券やホテルをお得に効率よく予約する方法、荷物選びと荷造りのコツ、現地での歩きかたのツボ、モデルルート、遭遇しがちなトラブルとその回避法など、準備から帰国までまるっとカバーしました。旅の達人によるコラム記事やアンケートも満載で、ひとり旅の準備はまずこの1冊から。1650円(税込み)。

PROFILE

山田静

女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『旅の賢人たちがつくったヨーロッパ旅行最強ナビ』(辰巳出版)、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。2016年6月中旬、京都に開業した小さな旅館「京町家 楽遊」の運営も担当。

旅の最終目的地アルバニアへ バルカン半島4カ国ひとり旅#06

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移動の多かった旅の経費は? バルカン半島4カ国ひとり旅#番外編

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