楽しいひとり温泉

温泉+あつ湯 自家源泉と郷土料理を楽しむ 野沢温泉「村のホテル 住吉屋」

きりりと熱い温泉に身を沈め、くぅううう。と、うなる。大地のパワーをぎゅっと詰め込んだ湧きたて温泉のエネルギーが、体中をじんじんと駆けめぐる。この感じ、この感覚は、やはり、実際に温泉に入らないと味わえない醍醐(だいご)味だと思います。旅に出られるようになったら行きたい温泉のひとつ、信州・野沢温泉の旅です。

(トップ写真:ステンドグラスの光に癒やされる住吉屋の内湯)

■連載「楽しいひとり温泉」は、全国各地の温泉をめぐり、温泉・自然・食で美しくなる旅を研究する、温泉ビューティー研究家の石井宏子さんが、テーマごとにひとり温泉にぴったりなお宿を紹介します。

温泉とともに暮らす野沢温泉村

麻釜

100度近い熱湯を湧出する麻釜は暮らしに密着した地域の台所

野沢温泉には30ほどの自然湧出(ゆうしゅつ)源泉があります。自然湧出とは、大地から源泉の力だけで自然に湧いている温泉のことで、生きている地球のパワーを感じる温泉地です。地名に温泉村とついているのは日本で唯一。野沢温泉村への旅は、温泉とともに生きる暮らしを感じる楽しみもあります。温泉街の中心は麻釜(おがま)。源泉がぐらぐらと湧いている天然の湯の釜があり村民が利用する台所です。一般の利用はできませんが、地元の人、お宿のご主人やおかみさんが、野菜をゆがいたり、温泉たまごを作ったりする様子を見ることができます。

大湯

外湯「大湯」は地元の方々と一緒に入れる共同浴場

地元のみなさんが愛してやまない外湯(共同浴場)は、住民が当番制で管理しています。温泉街のあちこちにある外湯は、誰でも入ることができるので、お散歩がてら外湯めぐりへ。湯屋建築が美しい「大湯」は、「あつ湯」と「ぬる湯」の二つの湯船があるのですが、旅人にとっては、「ぬる湯」でも、かなり熱い。野沢温泉の方々は、この熱い湯を愛しているので、郷に入っては郷に従え、と、挑戦です。極意はかけ湯十杯。足先から上へと少しずつかけ湯するうちにだんだん体が湯の温度に慣れてきます。

飲める源泉と温泉まんじゅう

まんじゅうと飲泉

温泉まんじゅうと飲泉でひと休み

「村のホテル 住吉屋」は、12時からチェックインできるので早めにお部屋へ。2018年秋に泊まった時には、部屋にこたつがありました。上には、温泉まんじゅうと「とっくり」が置かれています。えっ?とっくり? よく見ると、住吉屋源泉と書かれています。宿の敷地には自然湧出する自家源泉があり、飲むこともできるのです。玄関に飲泉口があるのですが、これを部屋でも飲めるようにとっくりで用意。飲泉はおちょこ1杯くらいの量をちびちびと、少しずつ飲むことで内臓を整えてくれるそうです。ほんのりコクと塩味があっておいしい。

温泉+あつ湯 自家源泉と郷土料理を楽しむ 野沢温泉「村のホテル 住吉屋」

全14室。ひとり宿泊は、電話で相談して予約する

チェックアウトは翌日の11時。23時間もゆっくりできます。温泉に入ったら、浴衣で畳の上で大の字になれる和室。窓からは温泉街や山が見渡せます。

色ガラスの光に癒やされる大浴場

内湯

内湯の外には、露天風呂もある

色ガラスの窓からの光がロマンチックな内湯、自然湧出する新鮮な源泉がかけ流しで注がれています。宿の温泉もやっぱり熱め。でも、入ってしまうと心地よい。だんだん、野沢温泉のあつ湯の魅力にはまってきます。泉質は、含硫黄-ナトリウム・カルシウム-硫酸塩温泉、pH8.9アルカリ性。白濁にはならないのですが硫黄の香りたっぷり。硫黄の毛細血管拡張作用で血行が促進され、みるみる巡りがよくなって汗がにじんできます。硫酸塩泉の保湿作用で湯上がり肌はしっとりつやつや。

郷土料理と会席料理の二本立てがうれしい

料理

取り回し鉢を3種類選べる宿泊プランもある(通常は2種類)

地域の食材をおいしく味わう知恵が詰まった郷土料理。この宿では、地元の方々が作る郷土料理の取り回し鉢と、板前さんが腕を振るう会席料理の二本立てが名物です。取り回し鉢は8種類ほどあって、スタンダードプランでは日替わりの2種類、ひとり宿泊の場合は、2種類がひとり分の小鉢ででてきます。

いもなます

じゃがいもを使った「いもなます」

真っ白な「いもなます」は、じゃがいもから作られます。シャキシャキとした食感と上品な甘酸っぱさがたまらなくおいしい。他に、常盤牛蒡(ときわごぼう)の「ごぼう丸煮」や、ぷるぷるコリコリでピリ辛の「きくらげ山家煮」、てりってりの新じゃがの「塩煮芋」、花豆ふっくら煮など、何が出てくるかが楽しみです。

和牛

朴葉(ほおば)の上で肉厚の和牛を焼く

この日のメインは和牛香り焼き。薬味は塩、わさび、かんずりという地元名産の唐辛子の調味料。これが、肉の甘い香りやうまみを引き立てて、ついつい、お酒もすすみます。

温泉+あつ湯 自家源泉と郷土料理を楽しむ 野沢温泉「村のホテル 住吉屋」

発祥の地で味わう野沢菜は格別

やっぱり、野沢温泉で食べる野沢菜は違います。野沢菜が乾かないようにと葉にくるんで出してくれます。伝統野菜に認定されている野沢菜は、厳格に原種の種から栽培されています。塩だけで漬け込み乳酸発酵させる昔ながらの野沢菜漬けは、マイナス3度になる野沢温泉の冬の気候が、おいしく発酵させる秘訣(ひけつ)だそうです。

麻釜でゆでた、正真正銘の温泉たまご

内湯

ステンドグラスの光が湯面に映る内湯

大浴場は男女入れ替えで、朝はもうひとつの内湯へ。こちらは、湯船が少し小さめですが、丸いつるりとしたタイルの感触が優しく感じられます。きりりと熱めの新鮮な温泉で、細胞のすみずみまで目覚めていくような気分。

温泉+あつ湯 自家源泉と郷土料理を楽しむ 野沢温泉「村のホテル 住吉屋」

毎朝、麻釜でゆでる温泉たまごが絶品

朝ごはんのお楽しみは、野沢温泉の台所「麻釜」の源泉でゆでた、正真正銘の温泉たまご。ほんのり温泉の風味が感じられるごちそうです。

おうちのお風呂で楽しめる宅配温泉

住吉屋の温泉

住吉屋の温泉で自宅でも「ひとり温泉」

ステイホームで温泉が恋しくなったら、住吉屋の源泉を宅配で注文。ポリタンクにくんだ自家源泉を、10リットル500円+容器代630円+送料で送ってもらえます(電話か問い合わせメールで注文)。好きな量を自宅のお風呂へ注いで入ります。わたしの経験ですと、100リットルのお湯に対して2リットルくらい、家庭の浴槽だと3~4リットル程注ぐと、お湯の肌触りがやわらかくなり、体の芯までぽかぽかと温まります。空のペットボトルに源泉を入れて、湯船にぷかぷか浮かべておくと、温かい源泉になりますので、洗顔したり体にかけたりして楽しんでいます。

長野県・野沢温泉 村のホテル 住吉屋
https://sumiyosiya.co.jp/
※ひとり宿泊は電話0269-85-2005(9時~20時)で4月~12月中旬まで受け付け。
※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、2020年5月末まで臨時休業。
※外湯(共同浴場)も利用休止中。(2020年5月22日現在)

■「楽しいひとり温泉」ポイント
1.23時間滞在でのんびり
2.きりりとしたあつ湯でスッキリ
3.郷土料理がおいしい

BOOK

温泉+あつ湯 自家源泉と郷土料理を楽しむ 野沢温泉「村のホテル 住吉屋」

全国ごほうびひとり旅温泉手帖 いい湯、いい宿、旅ごはん!

石井宏子さんの著書「全国ごほうびひとり旅温泉手帖 いい湯、いい宿、旅ごはん!」(世界文化社)が11月16日に出版されました。温泉ビューティー研究家・旅行作家ならではの、旅してみつけた、女性がひとりで安心して楽しめる温泉宿を紹介するハンディーな一冊。公共交通機関で行ける、自分へのごほうびで泊まりたい、いい宿を全国から厳選し、あわせて、女性目線で選んだ周辺の立ち寄り先、ランチやスイーツも取り上げます。ひとりでも楽しい観光列車も登場します。税別1400円。

PROFILE

石井宏子

温泉ビューティー研究家・トラベルジャーナリスト。日本・世界の温泉や大自然を旅して写真撮影・執筆をする旅行作家。テレビにも出演。温泉・自然・食で美しくなる旅を研究する。海外ブランドのマーケティング・広報の経験から温泉地の企画や研修もサポート。日本温泉気候物理医学会会員、日本温泉科学会会員、日本旅のペンクラブ会員、気候療法士(ドイツ)、温泉入浴指導員。著書に「癒されてきれいになる おひとりさま温泉」(朝日新聞出版)、「地球のチカラをチャージ! 海温泉 山温泉 花温泉 76」(マガジンハウス)、「感動の温泉宿100」(文春新書)などのほか、「全国ごほうびひとり旅温泉手帖 いい湯、いい宿、旅ごはん!」(世界文化社)が11月に発売された。

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