にっぽんの逸品を訪ねて

行ったつもりで楽しむ自然の逸品“鋸山と車力道編”

「屋内で旅行気分を味わっていただこう」と作製した動画の第2弾は、房総半島の沿岸にそびえる鋸山(のこぎりやま)です。2019年6月にご紹介したように、かつて石切り場だった山上には「地獄のぞき」などの絶景スポットが点在。自然と人間の営みが作り出した壮大な風景が広がっています。この時の旅を、動画で改めて振り返ります。

連載「にっぽんの逸品を訪ねて」は、ライター・中元千恵子さんが日本各地の逸品を訪ね、それを育んだ町の歴史や風土を紹介します。

【動画】鋸山

ロープウェーで鋸山の山上へ

鋸山は、房総半島の富津(ふっつ)市と鋸南(きょなん)町にまたがる標高329メートルの山です。山上では江戸時代から昭和にかけて房州石が盛んに切り出され、今も日本最大級といわれる石切り場跡や、切った石を運んだ「車力道(しゃりきみち)」が残っています。

鋸山

鋸山はノコギリの刃のような山容

鋸山へ登るルートはいくつかありますが、鋸山ロープウェーを利用すると約4分で山頂駅に到着します。海や金谷港がみるみるうちに小さくなり、広大な森林もまるで小さなブロッコリーを集めたように見えます。

風景

山頂駅付近からの風景

山頂駅構内にある房州石の展示コーナーは必見。石を切り出す方法や、船で輸送した房州石が京浜地区で広く建築資材として使用されたことなどがわかり、房州石について理解が深まります。

展示コーナー

山頂駅構内には房州石の展示コーナーがある

山上には約1300年の歴史をもつ日本寺(にほんじ)の境内が広がり、岩山に彫った大仏や「百尺観音」などが見られます。なかでも希少な景観で知られるのが「地獄のぞき」です。この周辺もかつては石切り場であり、石を切り出した跡がそそり立つ壁となって残っています。

地獄のぞき

空中にせり出す「地獄のぞき」

地獄のぞきからの風景

「地獄のぞき」に立つと、こんな風景

最盛期の活気が思われる石切り場跡

日本寺の北口を出て山道を進むと、地獄のぞきがはるか頭上に。石壁の高さに、改めて房州石の切り出しが盛んだったことが思われます。

地獄のぞき

「地獄のぞき」がはるか上に見えます

やがて「岩舞台」とよばれる石切り場跡に出ました。木立の間から突然現れたその姿は、息をのむ圧倒的なスケール。高さ50メートル以上と思われる石の壁が何面も並び、巨大なビルのようです。

石壁

石壁の高さに圧倒されます

「岩舞台」は、当時、最も有力な石材業者だった旧芳家(よしけ)石材店の石切り場でした。周辺に残された機材や、壁面に刻まれた切り出し跡などを見ていると、ここで多くの人が働いていたころが思い浮かびます。

跡

石を切り出した跡

石切り場以外にも、山上には「地球が丸く見える展望台」などの見どころがあります。

展望台

「地球が丸く見える展望台」では水平線が丸く見える

石切り場跡から下る道も変化に富んでいます。石壁の脇を歩いたり、細い切り通しを進んだり。細い山道なので、標識がたより。そして、ときおりすれ違う登山者たちが「この先、分かれ道ですよ」などと教えてくれました。

細い道

細い道を進みます

標識

分岐点には標識あり

深いわだちが残る車力道

帰りは「車力道コース」を下りました。「車力」は房州石を運ぶ人のことで、主に石切り職人の妻たちが務めました。

切り出した房州石は、中腹までは石や丸太を敷いた樋道(といみち)を引き下ろし、そのあとは「ねこ車(猫車)」とよばれる木製の手押し車にのせて運びました。1回約240キロの石をのせ、1日3往復したそうです。

車力道

房州石を運んだ車力道

時代とともに石の運搬形態は変わり、車力の活躍も1960年ごろまでで終わりました。ですが、ねこ車につけたブレーキ代わりの金具が削った跡や、深いわだちが今も残り、歴史の面影を伝えています。

車力道

ねこ車が通ったころの面影をとどめています

【問い合わせ】
・たび旅富津
http://www.futtsu-kanko.info/whatsnew/6477/
・鋸山ロープウェー
http://www.mt-nokogiri.co.jp/pc/p010000.php
・日本寺
http://www.nihonji.jp/

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PROFILE

中元千恵子

旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの温泉宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。
全国各地のアンテナショップを紹介するサイト 風土47でも連載中

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