永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶

(60)愛にあふれた空間にいた少女 永瀬正敏が撮ったアメリカ

国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回は、映画撮影中の一コマ。永瀬さんが出演した映画「パターソン」で共演した女の子を狙った場所は、温かな雰囲気に包まれていました。

(60)愛にあふれた空間にいた少女 永瀬正敏が撮ったアメリカ

©Masatoshi Nagase

この少女はジム・ジャームッシュ監督の作品「パターソン」に出演した少女。
同じ場面での共演はなかったが、あまりの可愛らしさに、
お母さんの許可を得て撮影させてもらった。

これは撮影中、ニュージャージーにある廃工場を利用したケータリングルームで、
ランチをとっていた時のもの。
廃工場といっても、その一部はギャラリーになっていたり、
とても味のある場所だった。
少女は食事を終え、デザートのフルーツを小さな手で握りしめて食べていた。
その光景がとても可愛らしくて、ずっとカメラで追っかけてしまった。

ジャームッシュはこの少女を含め、そこにいる全てのスタッフ、出演者に、
さりげなく、気さくに声をかけ、温かい空気を作っていた。
彼の撮影現場はいつも愛にあふれている。
それがFilmに焼き付いて、ジャームッシュ作品は、
スペシャルな何かが見る側に伝わるのだと思う。

“愛にあふれた”空間で写真を撮れたこと、
ジャームッシュ監督にもそっとお礼を伝えた。

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PROFILE

永瀬正敏

1966年宮崎県生まれ。1983年、映画「ションベン・ライダー」(相米慎二監督)でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督「ミステリー・トレイン」(89年)、山田洋次監督「息子」(91年)など国内外の約100本の作品に出演し、数々の賞を受賞。カンヌ映画祭では、河瀬直美監督「あん」(2015年)、ジム・ジャームッシュ監督「パターソン」(16年)、河瀬直美監督「光」(17年)と、出演作が3年連続で出品された。近年の出演作に常盤司郎監督「最初の晩餐」、オダギリジョー監督「ある船頭の話」、周防正行監督「カツベン!」、甲斐さやか監督「赤い雪」など。写真家としても多くの個展を開き、20年以上のキャリアを持つ。2018年、芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞。

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