クリックディープ旅

どんな意味? なぜこの名前? アジアの難解標識、不思議な看板

これまで世界各地を旅してきた旅行作家・下川裕治さん。今回は、下川さんを考え込ませてしまったアジアの標識や看板が登場します。音声付きの長編動画では、シーン11に登場する窓のない部屋や、看板の進化について語ります。

本連載「クリックディープ旅」(ほぼ毎週水曜更新)は、30年以上バックパッカースタイルで旅をする旅行作家の下川裕治さんと相棒の写真家・阿部稔哉さんと中田浩資さん(交代制)による15枚の写真「旅のフォト物語」と動画でつづる旅エッセーです。

(写真:シーン6は下川裕治撮影、シーン9、11は阿部稔哉撮影、ほかは中田浩資撮影)

アジアのナゾ標識

世界にはさまざまな標識や看板がある。なにげなく目にして、ふと立ち止まる。意味がわからない。もしかして……。いや、違う……。などとその前で悩んでしまう。

今回はクリックディープ旅で目にしたアジアのナゾ標識を集めてみた。

新型コロナウイルスの影響で、掲載がはじまる予定だった、「沖縄の離島を走る路線バスの旅」はしばらく延期。そこで未掲載の写真や、別の視点でアジアを俯瞰(ふかん)してみた。やはりアジアはナゾに満ちている。

長編動画

車窓風景はパキスタン。ペシャワルからラホールに向かうバスの眺めをバックに、アジアのナゾ標識の話を中田浩資カメラマンと語ります。

音声はテレワークでよく使われるアプリZoomを利用して録音しました。

Scene01

ミャンマーの列車の表示

ミャンマーの列車。入り口のドア横に禁止事項の表示が。禁煙、つばの吐き捨て禁止、ゴミのポイ捨て禁止……と右に進み、その先の表示で固まってしまう。キスの禁止? ミャンマーの国鉄はそこまで口出しする? なにか別の意味が込められているのではないか……。周りの乗客に聞くのもはばかられ、ナゾは解けず。(2016年)

Scene02

インドネシアの列車の表示

インドネシアの列車にはこんな禁止事項が。列車のなかで、ご飯を炊いたり、湯沸かしは禁止。そして、床に寝てはいけません表示。かつてインドネシアの長距離夜行列車はたしかにすごかった。煮炊きや床寝はあたり前だった。で、その後、全席予約制になり、一気にマナー向上。インドネシアのシニアには懐かしい表示?(2017年)

Scene03

タイの列車の表示

タイは2014年から、列車は禁酒になった。それまでは車内に乗り込んでくる売り子が平気でビールを売っていたのだが。列車内禁酒は世界的な流れなのか、インドやロシアでも列車内は禁酒。車内で酒が飲めないとなると、もう寝るしかない? その気持ちわかります。(2015年)

Scene04

タイの列車

日本では小乗仏教とも呼ばれる上座部仏教を信仰するタイ。乗り物には僧侶専用席が設けられている。バスは車掌の判断で専用席がきめられるが、列車にはこんな表示が掲げられている。どんなに混みあっても、一般の乗客はこの席には座らない。僧侶が少ないときは、車掌や車内販売員の休憩席になる。(2012年)

Scene05

台中の温泉

漢字文化圏の台湾でも、看板や表示の前でしばし悩むことになる。ここは台中の温泉。そこにあった「裸湯」……。言葉通りの意味だ。風呂は裸で入るものなのに、なぜ裸湯? 台湾には日本式に裸で入る温泉と水着着用で入る温泉の2種類がある。で、ここは日本式。「それを強調するために裸湯にしました」とオーナーの弁。(2019年)

Scene06

給湯器

知りませんでした。台湾の水は沸騰すると102度になる? ここは台湾の蘇澳(スーアオ)の安宿。台湾では廊下に給湯器が置かれている宿が多い。宿泊客はコップに茶葉を入れ、そこにこの機械から湯を注ぐ。で、僕も給湯器の前に立ったのだが、その温度に悩んでしまった。故障? しかしそういう温度設定がある……。また悩む。(2012年)

Scene07

人形

台湾の中央山脈につくられた道を進む。カーブが多い坂道が続き、ところどころに、「スピード出しすぎに注意」の人形。目立つように黄色の雨具らしきものを身に着け、黄色のヘルメット。しかしなにかがない……足でした。そこまでつくる予算がなかったのだろうか。しかし夜、この人形を目にするとちょっと……。(2019年)

Scene08

カフェ

タイのサムローン。ショッピングモールの1階にあったKISSATEN CAFE。喫茶店? 日本人だけが悩んでしまう店名だ。客であるタイ人は、その意味がまったくわからないはず。日本料理店が多いタイだが。店員に聞いたが、店名の由来はわからないとか。店はタイにはよくあるカフェでした。(2019年)

Scene09

タイのトイレ

トイレの男性用と女性用のマーク。それでは味気ないということなのか、タイではこんな表示も。これだけ大きくすれば誰も間違えないはず。インドのニューデリー空港のトイレでは、実際の男性と女性の顔写真を、縦2メートル、横1メートルほどに拡大して貼ってあった。(2005年、連載開始前に撮影)

Scene10

キブラ

マレーシアのホテルに泊まる。疲れたなぁ……とベッドに横になると、天井にこれ。非常口の方向? 違います。これはキブラと読み、メッカの方向を示している。マレーシアの主要な民族であるマレー人の多くがイスラム教徒。メッカに向かっての礼拝は欠かせない。こうして方向を示してくれるととても便利。僕らにはなんの意味もありません。(2010年)

Scene11

カーテン

マレー半島の東海岸。ドゥングンという街の安宿に泊まった。目の前は海。部屋に入り、窓から海を眺めようとカーテンを開けると……壁でした。アジアでは安い宿に泊まると、窓がないことがよくある。しかしそれでは息が詰まるだろうと、壁にカーテンだけをとりつけて、窓がある気分だけ演出。カーテンだけなので、僕は純粋カーテンと呼んでいる。(2015年)

Scene12

中古列車

アジアの国々には、日本の中古列車が走っている。老朽化した車体が多いが、いまでもけなげに走り続けている。これはフィリピンに渡った列車。それに乗り込み、ボックス席に座ると、窓際のテーブルに日本語。これを懐かしいと思うのは、きっと50歳以上の日本人でしょうか。(2010年)

Scene13

ペシャワルの店

パキスタンのペシャワル。バスターミナルに行くと、「オーッ、セブン-イレブン!」。これから開店するようで売り物はまだなかったが。いや、よく見るとなにかが違う。緑色の筋がやけに太い。そしてTRIPLEとSHOPの文字。トリプルセブンと読む? セブン-イレブンのぱくり店でした。コンビニを渇望するパキスタン人の思いでしょうか。(2018年)

Scene14

毛刈館

日本のなかでは沖縄の看板や店名の前で立ち止まることが多い。これは多良間島。人口が1100人強という小さな島だ。島のなかの集落の道を歩いていると、一軒の理髪店が。沖縄は台風が多いため、店名は壁に直接、書き込まれることが多い。で、毛刈館。たしかにその通りなのだが、その直球というか、あまりの豪速球店名。(2012年)

Scene15

標語

多良間島の道を歩く。訪ねた当時、島に信号は1カ所のみだった。道は整備されているが、走る車は多くない。と、この標語。普通なら、「スピードの出しすぎに注意しましょう」といった標識が立つ道路脇なのだが。沖縄の風を感じてしまって、やはり立ち尽くしてしまいます。(2012年)

※料金等はすべて取材時のものです。

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【次号予告】次回はアジアの麺の世界を旅します。

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■「玄奘三蔵の旅」バックナンバーはこちら
■ 再び「12万円で世界を歩く」バックナンバーはこちら

BOOK

どんな意味? なぜこの名前? アジアの難解標識、不思議な看板
12万円で世界を歩くリターンズ
[タイ・北極圏・長江・サハリン編] (朝日文庫)
リターンズ第二弾では、タイと隣国の国境をめぐり、北極圏を北上し、長江をさかのぼる旅へ、予算12万円で約30年前に旅したルートをたどる。さらに「12万円でサハリンに暮らす」ことにも挑戦。旅は、世界はどう変わったか?
朝日文庫
3月6日発売
定価:770円(税込み)

PROFILE

  • 下川裕治

    1954年生まれ。「12万円で世界を歩く」(朝日新聞社)でデビュー。おもにアジア、沖縄をフィールドに著書多数。近著に「一両列車のゆるり旅」(双葉社)、「週末ちょっとディープなベトナム旅」(朝日新聞出版)、「ディープすぎるシルクロード中央アジアの旅」(中経の文庫)など。最新刊は、「12万円で世界を歩くリターンズ 【タイ・北極圏・長江・サハリン編】」 (朝日文庫)。

  • 中田浩資

    1975年、徳島県徳島市生まれ。フォトグラファー。大学休学中の1997年に渡中。1999年までの北京滞在中、通信社にて報道写真に携わる。帰国後、会社員を経て2004年よりフリー。旅写真を中心に雑誌、書籍等で活動中。

海峡、国境、大陸の東西南北 終着駅を巡る旅

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これはどこの麺でしょう? 旅で食したアジアの多彩な麺たち

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