永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶

(61)地下鉄駅に現れた異次元 永瀬正敏が撮ったニューヨーク

国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回は、米国ニューヨーク。地下鉄駅でシャッターを切った永瀬さんは、不思議な思いにとらわれていました。

(61)地下鉄駅に現れた異次元 永瀬正敏が撮ったニューヨーク

©Masatoshi Nagase

「Exit」という標識が奥へ奥へと連なる空間に興味をそそられた。
なぜかその空間に、非日常へ誘われているような気がして、シャッターを切った。
歩く人、ベンチで電車を待つ人々、何本も立ち並ぶ柱……。
奥の清掃作業員の方が異次元へ帰っていくような、
そんな気がした時だった。

この全てがそろうのは偶然でしかない。
この瞬間は二度と訪れない。
“その時”にしか写せなかった写真。

写真は“その時”にしか写せなかったものしかないのだろう。
そこに居合わせた幸運を記録する、または記憶する。
運も味方につけて。
同じものは決して撮影できない。

ニューヨークのシティーホール駅で撮影できたこの写真も、
いつかまたあの場所に立ったとしても、同じ写真は絶対に撮れない。
全て幸運が撮らせてくれた一枚なのだ。

バックナンバー

>>連載一覧へ

PROFILE

永瀬正敏

1966年宮崎県生まれ。1983年、映画「ションベン・ライダー」(相米慎二監督)でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督「ミステリー・トレイン」(89年)、山田洋次監督「息子」(91年)など国内外の約100本の作品に出演し、数々の賞を受賞。カンヌ映画祭では、河瀬直美監督「あん」(2015年)、ジム・ジャームッシュ監督「パターソン」(16年)、河瀬直美監督「光」(17年)と、出演作が3年連続で出品された。近年の出演作に常盤司郎監督「最初の晩餐」、オダギリジョー監督「ある船頭の話」、周防正行監督「カツベン!」、甲斐さやか監督「赤い雪」など。写真家としても多くの個展を開き、20年以上のキャリアを持つ。2018年、芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞。

(60)愛にあふれた空間にいた少女 永瀬正敏が撮ったアメリカ

一覧へ戻る

(62)アートが「存在した事実」焼き付けた 永瀬正敏が撮ったマンハッタン

RECOMMENDおすすめの記事