海の見える駅 徒歩0分の絶景

日本海の白波が打ち寄せる、大迫力の無人駅 新潟県・青海川駅

一面の真っ青な海面に、ぴたりと寄り添ったホーム。日本海の荒波が正面から迫り、目の前のごつごつとした礫浜(れきはま)で砕け散る。波音が崖にこだまして、全身を包み込む。時は2017年4月。日差しの心地よい春真っ盛りだというのに、波の勢いにはどこか、冬の荒々しい日本海のイメージが重なった。

■連載「海の見える駅 徒歩0分の絶景」は、アマチュア写真家の村松拓さんが、海のそばにある駅で撮った写真を紹介しながら、そこで出会ったこと、感じたことをつづります。

ドラマ「高校教師」のロケ地 「日本海に最も近い駅」

新潟県柏崎市にある青海川(おうみがわ)駅は、JR柏崎駅から信越線で2駅の場所にある無人駅だ。ホームのすぐ北側には青海川海水浴場が広がり、日本海に打ち寄せる波の様子が、手にとるように見える。日本海を望む駅はあまたあるが、ここは「日本海に最も近い駅」といえる。かつてテレビドラマ「高校教師」のロケにも使われ、海の見える駅としては、国内でも比較的名高い。

日本海の白波が打ち寄せる、大迫力の無人駅 新潟県・青海川駅

そんな素晴らしい日本海ビューを誇る青海川駅だが、私には以前から気になることがあった。

青海川駅のロケーションは、海側のみならず、山側もなかなかダイナミックだ。ホームのすぐ裏は、高さ約50mの急峻(きゅうしゅん)な崖。2007年の新潟県中越沖地震ではこの崖が崩れ、青海川駅のホームが土砂に埋没したこともある。崖の上には国道8号が通り、いくつもの家々が点在している。

日本海の白波が打ち寄せる、大迫力の無人駅 新潟県・青海川駅

青海川駅と隣り合う崖。待合室が新しいのは、新潟県中越沖地震の土砂崩れ後に建て直したためだ(2012年8月撮影)

「あの崖の上からの景色は、いったいどんなだろう」。信越線で青海川駅を通るたびに感じていた、冒険心ともいえる疑問。今日はいよいよ、そいつを解決したい。ホームでの滞在もほどほどに、自らの足で崖の上へと向かうことにした。ゴールの目印は、頭上に架かる、国道8号の真っ赤な米山大橋。その東のたもとを目指す。

日本海の白波が打ち寄せる、大迫力の無人駅 新潟県・青海川駅

右手の赤い橋が米山大橋(2012年8月撮影)

高さ約50mの崖上から見る、深い青の世界

まずは、駅の東を流れる谷根(たんね)川に沿って内陸へ。谷根川は、毎年11〜12月にサケが遡上(そじょう)する清流だ。それを観察できるという「柏崎さけのふるさと公園」 の脇を抜け、集落のさらに奥へと進む。

日本海の白波が打ち寄せる、大迫力の無人駅 新潟県・青海川駅

道中で見つけた看板。「日本一海に近い駅」の筆頭候補は長崎県の大三東駅だが、青海川駅も十分に海に近い

そして、折り返すように長い坂を上る。ようやく視界がひらけると、思わず息をのんだ。――はるか眼下を、一面の青が覆い尽くしている。

日本海の白波が打ち寄せる、大迫力の無人駅 新潟県・青海川駅

一面の日本海に目を奪われていると、新潟の地酒がテーマの観光列車「越乃Shu*Kura」が到着。青海川駅にも何分か停車し、乗客がホームで景色を楽しんでいた

深い青をたたえ、延々と広がる日本海。ホームで見る海も十分迫力があったが、視界に占める海の存在感がまるで違う。さっきまでいた青海川駅も、ずいぶんと小さく見えた。「崖の上に、こんな世界があったとは……」。目の前の光景をかみしめながら、いくつかの列車が通り過ぎる様子を、カメラに収めた。

後ろ髪を引かれつつ、崖を下りて、青海川駅へと戻る。帰りは、ちょうど目の前にあった「六割坂」という細い急坂を下りることにした。六割坂は、旧北国街道の一部。人ひとりが通れる幅の細い道が、つづら折りになって海へと続いていた。ときおり潮風にあおられながら、一歩一歩、慎重に下りていく。かつての旅人たちも、こんなふうに同じ景色を見ながら歩いていたのだと思うと、感慨深い。

日本海の白波が打ち寄せる、大迫力の無人駅 新潟県・青海川駅

六割坂。坂+海の組み合わせも、たまらなく旅情を誘う

六割坂を下りた先は、青海川海水浴場だった。何組かの人々が浜辺を眺めつつ、散歩をしている。そのまま、谷根川の河口を越え、かがみたくなるような背の低いトンネルで線路をくぐると、青海川駅前に戻ってきた。額には、すっかり汗がにじんでいた。

日本海の白波が打ち寄せる、大迫力の無人駅 新潟県・青海川駅

青海川海水浴場を横切る、谷根川の河口

徒歩0分の絶景、などと言いつつ、この日は1時間以上歩いた。しかし、冒険心に耳を傾けて、自分の足で歩いたからこそ出会える絶景があった。勇気を持って、列車を降りる。さらに、駅の外に飛び出してみる。そうすると、旅の思い出は、もっと忘れがたいものになるのだ。

■JR東日本
https://www.jreast.co.jp/estation/station/info.aspx?StationCd=302

BOOK

日本海の白波が打ち寄せる、大迫力の無人駅 新潟県・青海川駅
海の見える駅
海の見える駅を巡る村松拓さんの旅をまとめたガイドブックです。これまでに訪問した約300駅の中から70カ所を選び、駅の写真、簡単な説明とともに紹介しています。
雷鳥社 
定価:1500円(税別)

PROFILE

村松拓

アマチュア写真家
1991年1月生まれ。川崎市出身。
2004年の夏休み、初めての一人旅で見た常磐線の車窓が忘れられず、2005年に末続駅(福島県いわき市)を訪問。それから海の見える駅の旅を始め、これまでに約300駅を取材。2006年にWebサイト「海の見える駅」を開設。現在は東京・新橋で会社員として働く傍ら、余暇で旅を続ける。著書に『海の見える駅』(雷鳥社・2017年)。

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