ちょっと冒険ひとり旅

飽きることのないカトマンズの散策 ネパールひとり旅#1

いろんなことに疲れたな、という時、決まって行きたくなるのがネパールだという旅行ライターの山田静さん。登山客だけではなく、世界の旅人をひきつける小さな国の魅力を4回にわたって紹介します。

(トップ写真はカトマンズの仏教寺院・スワヤンブナート)

■何回目かのひとり旅、ちょっとだけ冒険してみたい。そんな旅人のヒントになりそうな旅先や旅のスタイルを紹介している連載「ちょっと冒険ひとり旅」。京都で旅館の運営をしながら、旅行ライターとしても活躍する山田静さんが、飛行機やバスを乗り継いで比較的簡単に行ける、旅しがいのあるスポットをご紹介していきます。バックナンバーはこちら

本連載では毎回、一度の旅について紹介してきたが、今回は「ネパール旅」をご案内したい。

人生のちょっとした節目や、なんだか疲れた……というときに私が行きたくなるのがネパールで、思い出すだけで2018年までに10回以上は訪れている。ネパールといえばヒマラヤ登山の国、というイメージもあるが、特に登山が好きというわけでもない。では何にひかれているのか語っていきたいと思う。

空気が悪いカトマンズ

まずは首都・カトマンズ。さぞかしヒマラヤの眺めがいいはず、と思いきや、眺望どころか世界有数の大気汚染がひどい都市と言われている。黒い排ガスを盛大に排出する古い車が整備されていない道を土ぼこりをたてながら走り、あっちこっちで道路工事もしている。盆地なので悪い空気がよどみ、交通量の多いところではネパール人もマスクやスカーフで口元をガードしているほどだ。2008年に王制が廃止され連邦民主共和国になったものの、国民のための政治がスムーズに動いているとはまだ言いがたく、17年に訪れたころまでは計画停電や断水もよくあった。15年にカトマンズの北西で発生した大地震からの復興も道半ばで、町なかには壊れかかった建物もまだ放置されていた。

三輪の車

三輪の車が走る


電線

このぐしゃぐしゃの電線を見ると、カトマンズに帰ってきたと思う。たまにショートして停電の原因になる

と、ここまで書くと全然よさそうでも楽しそうでもないが、何度行っても妙に飽きないし、延々と散歩してしまう。

カトマンズを歩こう!

散歩の拠点となるのはタメル地区だ。アジアの中でも古い安宿街のひとつで、かつてはヒッピーが集まる場所として有名だった。ドミトリー1ベッド3〜4ドルといった安宿から1部屋20ドル程度の中級ホテル、100ドルくらいする高級ホテルやデザイナーズホテルまで、1時間もあれば一通り見て回れる狭いエリアに宿が密集している。宿と宿の間には土産物屋やスタンドジュース屋、カフェ、安くておいしいメシ屋、高級レストラン、旅行会社などがこれまた密集。トレッキングを終えた旅人が売り払った山道具を扱う中古アウトドアグッズ店はタメルならではのお店で、長旅の途中、ネパールで登山をしたいという旅人も、タメルに来れば山道具が一式手に入る。自分の登山が終わったら、また売ればいいのだ。

タメル地区

タメル地区。狭い道を挟んでお店がみっしり。舗装路も増えてきた

「日本人宿」

以前より減ったが、日本語対応のいわゆる「日本人宿」も健在

晴れた日はほこりっぽく、雨が降ったあとは泥はねがひどいタメル。世界じゅうから来たさまざまな服装の旅人にまじって「ナマステ」なんて店の人と言い交わしながら歩いていると、「おお、私は旅に出ている!」という実感がむくむくと湧いてくる。

こういった旅人街は、何かと人をだましにかかる悪いやつが集まりがちだが、なぜかタメルはいつ行ってもわりと平和(悪いやつもいることはいる)。おとなしいネパール人の雰囲気も手伝って、旅人たちもインドにいるときの緊張をゆるめて、穏やかな表情を浮かべている人が多い。いつ行ってもくつろげる広々したカフェやオープンテラスのレストランがいっぱいあるのも、私がタメルを気に入っている理由だ。

グッズショップ

手先が器用なネパール人は手工芸品も品ぞろえがいい。ちょっと部屋に取り入れるのには勇気がいるが、かわいいグッズショップ

タメルの店

タメルで必ず行く「PILGRIMS BOOK HOUSE」。ネパールに関するビジュアルブックや地図、料理本など豊富にそろい、紙の小物やオリジナルグッズなどお土産物もそろい、値段も安いので旅人に人気

もちろんタメルだけがカトマンズなのではない。ここから一歩出ると、「ザ・ネパール」といった雰囲気の寺院や、ローカルな市場や地元の商店街と出合える。混沌(こんとん)としていながらなんとなくのんびりとしていて、角を曲がればそこには神様。そんなカトマンズの街歩きが私は大好きだ。

よく歩く散歩ルートを写真で紹介していこう。
 

タメル

スタートはタメル。ここから旧市街を南下して、かつて王宮があったダルバール広場を目指す。2キロ弱、だいたい30分の道のりだ。インドの下町だとぶらぶら歩いているだけで客引きにつかまるが、タメルではみんな暇なときには暇そうに寝っ転がったりしている。ネパール人は全体的に控えめで急がない

犬

犬もよく寝っ転がっている。タメルあたりの犬たちはどこかでご飯をもらっているのか、体格も毛並みもいい

岩塩

地元の商店街みたいな道を進んでいくと、スパイスショップやホウキなどを売る雑貨屋が増えてくる。これはお茶屋さんで、ネパール特産の岩塩も売っている。背後のお茶の缶がいわゆる一斗缶なので、比べるといかに巨大な塩の塊かわかる

広場

道が交わるところには広場(ネパールではチョークと呼ばれ、交差点の意味もある)があり、たいていヒンドゥー教の寺院か仏教寺院、神様のほこらがある

工房

窓が開いている家のなかをのぞくと、何かの衣装を作る工房があった。寺院や宗教行事が多いネパールには、伝統工芸を引き継ぐ職人も多い

門

たまにこんな美しい門があって目を奪われる。描かれた目玉は世界を見渡すというブッダの目。仏教寺院によく描かれている

ダルバール広場

ダルバール広場到着。かつて王国の中心部だった場所で、20以上の壮麗な寺院や建物が立ち並ぶ広場だったが、2015年の地震で多くが倒壊し、現在も修復が続いている。生き神・クマリの館もここにある。写真は2017年に撮影

塔

2017年当時は、こんなつっかい棒で塔を支えていて見ていてハラハラ

カーラ・バイラブ

広場にある大きな石像・カーラ・バイラブ。ヒンドゥー教のシヴァ神の化身で、この前でうそをつくと即死してしまうと信じられている

ほこら

立派な寺院だけでなく、日本でいうお地蔵様のような感じであちこちに小さなほこらがある

仏塔

道を横に入ると、小さな仏塔にもよく出合う。ネパールの場合、ヒンドゥー教と仏教のエリア分けはあまりなく、町のなかで混在している

ダルバート・タルカリ

歩き疲れたら腹ごしらえ。ネパールを推す理由のひとつが、食事がおいしいことだ。第4回で詳しく紹介していきたいが、ネパールではネパール料理、チベット料理に加えて各国の味が楽しめる。写真はネパールの典型的な定食、ダルバート・タルカリ。ダル(豆)スープ、バート(米)、タルカリ(カレー味のおかず)がセットになったもので、店ごとに味が違うので食べ比べているときりがない

次回はカトマンズを離れて、山に行こう。人気の山岳リゾート、ポカラを紹介する。

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BOOK

飽きることのないカトマンズの散策 ネパールひとり旅#1

京都で町家旅館はじめました(双葉社)

京都に開業した町家旅館のマネジャーをつとめることになった著者が、開業準備から実際の運営に至るまでのドタバタとドキドキ、そして京都のお気に入りスポットなどを綴(つづ)ったエッセーガイド。1540円(税込み)。

 

飽きることのないカトマンズの散策 ネパールひとり旅#1

旅の賢人たちがつくった
女子ひとり海外旅行最強ナビ(辰巳出版)

連載「ちょっと冒険ひとり旅」著者の山田静さんが、海外ひとり旅に行きたいすべての人にお届けする、旅のノウハウをぎゅっと詰め込んだ1冊。行き先の選びかた、航空券やホテルをお得に効率よく予約する方法、荷物選びと荷造りのコツ、現地での歩きかたのツボ、モデルルート、遭遇しがちなトラブルとその回避法など、準備から帰国までまるっとカバーしました。旅の達人によるコラム記事やアンケートも満載で、ひとり旅の準備はまずこの1冊から。1650円(税込み)。

PROFILE

山田静

女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『旅の賢人たちがつくったヨーロッパ旅行最強ナビ』(辰巳出版)、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。2016年6月中旬、京都に開業した小さな旅館「京町家 楽遊」の運営も担当。

移動の多かった旅の経費は? バルカン半島4カ国ひとり旅#番外編

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