永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶

(63)廃虚に息づく見えない縁 永瀬正敏が撮った台湾

国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回は、本連載初登場の台湾を撮ったカットです。廃屋にたたずむ後ろ姿に、永瀬さんが込めた思いとは。

(63)廃虚に息づく見えない縁 永瀬正敏が撮った台湾

©Masatoshi Nagase

ちょうど30年前、僕は初めて台湾へ伺った。
あの時期の台湾映画界はエドワード・ヤン監督、ホウ・シャオシェン監督などがまさに世界にうって出た時で、
台湾ニューシネマのものすごい波がうずまき、そこら中にすさまじいパワーの熱を放射していた。
そんな時期に台湾へ伺えたこと、
そしてエドワード・ヤン監督と知り合い、共に仕事が出来たことは一生の宝だ。
ヤン監督の後世に残る大傑作映画「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」の撮影に立ち会え、
僕が出演した「アジアン・ビート〜シャドー・オブ・ノクターン」ではプロデュースをしていただいた。

今でもあの時からのご縁がずっと続いていて、
2014年公開の台湾映画「KANO」に出演させていただいてからは、ほぼ毎年台湾へ伺っている。
見えない縁が切れずに続いていることは、僕にとってかけがえのないことだ。

僕は本当に出会いに恵まれている。ほかには何もないが、唯一自慢出来ることが「出会い」だ。

この写真は見えない「縁」を表現しようと、ミュージシャンのFAYE(フェイ)さんにモデルをつとめていただき、台北市内の廃虚で撮影した。

彼女の右手に巻かれた糸に、これからも途切れず永遠に続く「縁」を願ってシャッターを切った。

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PROFILE

永瀬正敏

1966年宮崎県生まれ。1983年、映画「ションベン・ライダー」(相米慎二監督)でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督「ミステリー・トレイン」(89年)、山田洋次監督「息子」(91年)など国内外の約100本の作品に出演し、数々の賞を受賞。カンヌ映画祭では、河瀬直美監督「あん」(2015年)、ジム・ジャームッシュ監督「パターソン」(16年)、河瀬直美監督「光」(17年)と、出演作が3年連続で出品された。近年の出演作に常盤司郎監督「最初の晩餐」、オダギリジョー監督「ある船頭の話」、周防正行監督「カツベン!」、甲斐さやか監督「赤い雪」など。写真家としても多くの個展を開き、20年以上のキャリアを持つ。2018年、芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞。

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