楽園ビーチ探訪

ゴンドラをクレーンでつり上げ上陸 沖縄とヤマトが交わる孤島・南大東島

沖縄本島の那覇から東へ約360キロ、50人乗りの小型機で空路約60分。沖縄で古くから「はるか東の海のかなたにある島」という意味の「ウフアガリジマ」という名で語られていた島の一つが、南大東島です。周囲20.8キロ。切り立つ断崖に囲まれた島は、数度にわたる環礁の隆起によって誕生したサンゴの島です。
(トップ写真は島の東側にある岩場をくりぬいた「海軍棒プール」 ©南大東村観光協会)

連載「楽園ビーチ探訪」は、リゾートやカルチャー、エコなどを切り口に、国内外の海にフォーカスした読み物や情報を発信するビーチライターの古関千恵子さんが訪れた、世界各地の美しいビーチや、海のある街や島を紹介いたします。

上陸はゴンドラに乗りクレーンで

深い海から断崖が急激に立ち上がった地形ゆえ、消波ブロックを設置することができず、悪天候時には強烈な高波が打ち付けることも。そのため、上陸する場所は水面から数十メートル高い位置に築かれています。

となると、厄介なのが上陸方法。漁や釣り、ダイビングなどの小型船は、人が乗ったままクレーンで陸揚げされます。フェリーの場合は、貨物や車はもちろん、乗客はゴンドラに乗ってクレーンで宙を移動し、ランディング。この上陸方法は南大東島や北大東島の名物になっています。

ゴンドラをクレーンでつり上げ上陸 沖縄とヤマトが交わる孤島・南大東島

フェリーから上陸する際はこのゴンドラに乗ります。那覇からフェリーは片道15時間。この体験のために、あえてフェリーを利用する人も ©南大東村観光協会

この特異な地形から、南大東島は人を寄せ付けない存在でした。初めて発見されたのは、1820年のこと。ロシア海軍によって、でした。その時の船の名前「ボロジノ」号から、「ボロジノ島」と英国の地図に記されました。

ゴンドラをクレーンでつり上げ上陸 沖縄とヤマトが交わる孤島・南大東島

港のために断崖を掘削した際、砕いた琉球石灰岩を防波堤に再利用 ©南大東村観光協会

日本の領土、沖縄県の帰属となったのは1885年。その頃はまだ無人島で、開拓がはじまったのは1900年のこと。八丈島からやってきた、玉置半右衛門率いる23人が今の西港に上陸し、有人島になりました。

ゴンドラをクレーンでつり上げ上陸 沖縄とヤマトが交わる孤島・南大東島

大池に広がる、珍しい内陸のオヒルギ(マングローブの一種)の群生地。国の天然記念物です ©南大東村観光協会

風土としては沖縄ながら、暮らす人々は八丈島出身。そこで、不思議な「化学変化」が起きました。沖縄的なもの、八丈島(ヤマト)的なもの、ミックスしたもの、島固有のものが、混然一体となっているのです。

ゴンドラをクレーンでつり上げ上陸 沖縄とヤマトが交わる孤島・南大東島

展望台から見た島。畑が整然と区割りされています

たとえば大東神社の豊年祭ではみこしが担がれ、お盆には沖縄の伝統芸能「エイサー」が練り歩く。火よけの神をまつる秋葉神社、金毘羅(こんぴら)宮、観音山など、「いろんな神様ごとに、島では年に何度もお祝いの祭りがある」のだそうです。

ゴンドラをクレーンでつり上げ上陸 沖縄とヤマトが交わる孤島・南大東島

コンビニも、ビーチクラブもないけれど、粗削りな大自然で過ごす時間がぜいたく ©南大東村観光協会

食文化で八丈島の流れを感じるのは、「大東寿司(すし)」。家庭やお店によってレシピは異なりますが、みりんやしょうゆにつけた刺し身を、甘めの酢飯で握ったものが基本形。ちなみに、ガジュマルのあくを使う「大東そば」、島産のラム酒「コルコル」も、南大東島に来たら味わいたい名物です。

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「サトウキビの名産地になぜラム酒がない?」と生まれた、島のサトウキビを原料にした100%国産のラム酒「コルコル」©南大東村観光協会


ゴンドラをクレーンでつり上げ上陸 沖縄とヤマトが交わる孤島・南大東島

旧南大東空港ターミナルビルをラム酒の蒸留所に

また、島の方言も、八丈島の影響があるそうです。中でも、語尾に付ける「やれ」は、少し厄介。英語の「プリーズ」的な気持ちが込められていて、「これ、取ってください」というお願いは、「これ、取ってやれ!」。そう言われた島外の人は「なんで命令されなくちゃならないの!」と、カチンと来てしまうのだとか。ややこしいです。

南大東島には、ほかには見られない生き物もいろいろ。心ひかれるのは、足が短く、立ち姿が愛らしい「大東犬」。今、島内に生存している数も少なく、何匹いるのかわからない、と島の人。

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希少な大東犬。飼い主に忠実な性格だそう ©南大東村観光協会

ゴンドラをクレーンでつり上げ上陸 沖縄とヤマトが交わる孤島・南大東島

畑の下に広がる鍾乳洞「星野洞」。島には100カ所以上鍾乳洞があると言われます

沖縄とヤマトが混在するのは、陸上の文化だけではありません。水中も同様です。マンタが現れる一方で、伊豆諸島でよく見られるミギマキや、八丈島の代表的な魚のユウゼンが泳いでいることも。南大東島の沖は、いろんな海からやってきた魚が行き来する交差点のようです。

ゴンドラをクレーンでつり上げ上陸 沖縄とヤマトが交わる孤島・南大東島

八丈太鼓を起源とする勇壮な大東太鼓。リズムを刻む上に、アドリブの個人技をかぶせていきます ©南大東村観光協会


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サトウキビを製糖工場へ運搬するのに使われていた南大東島シュガートレインのレール跡 ©南大東村観光協会

かつてサトウキビ運搬用に走っていた鉄道のレール跡を見つけ、大東太鼓碧(あおい)会の練習風景を見学する――。南大東島にはわかりやすい観光スポットはないけれど、見どころはたくさん。訪れる前までは「絶海の孤島」というイメージでしたが、ユニークな体験と明るくおおらかな島の人たちが待っていました。

【取材協力】

南大東村観光協会
http://www.borodino.okinawa.jp/
 
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PROFILE

古関千恵子

ビーチライター。リゾートやカルチャー、エコなどを切り口に、国内外の海にフォーカスした読み物や情報を発信する。ダイビング雑誌の編集者を経てフリーとなり、“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”を繰りかえすこと四半世紀以上。『世界のビーチ BEST100』(ダイヤモンド・ビッグ社)の企画・執筆、『奇跡のリゾート 星のや 竹富島』(河出書房新社)の共著のほか、ファッション誌(『Safari』『ELLE Japon』など)やウェブサイトに寄稿。ブログも配信中。

海底遺跡やハンマーヘッドシャークの群れ 日本最西端の与那国島

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