宇賀なつみ わたしには旅をさせよ

伊豆半島・川奈、名門ホテルでの濃厚な時間 宇賀なつみがつづる旅(10)

フリーアナウンサーの宇賀なつみさんは、じつは旅が大好き。見知らぬ街に身を置いて、移ろう心をありのままにつづる連載「わたしには旅をさせよ」をお届けします。今回は2017年の伊豆半島の旅。ホテルで見つけた「かわいい」ものとは?

(文・写真:宇賀なつみ)

「時空を超えて 川奈」

伊豆半島には、学生の頃から数え切れないほど訪れている。
レンタカーを借りて、仲間とワイワイ夏の海へ。
新幹線に乗って、彼と冬の温泉宿へ。

30代になってから、
これまでとは少し違う旅がしたくなった。

動きやすいTシャツとサンダルではなくて、
きちんとしたワンピースとハイヒールで出かけよう。

2017年6月。
私は、名門クラシックホテル・川奈ホテルにいた。

入ってすぐのロビーは、
重厚でありながら温かい雰囲気。
窓の外には豊かな自然と海が広がっていた。
チェックインを済ませれば、
大人のための優雅な時間が約束される。

1936年に最先端のリゾートホテルとして開業し、
以来、長く愛されてきた。

国の登録有形文化財にもなっている本館では、
シャンデリアやじゅうたん、大きな暖炉に趣のある階段など、
そのひとつひとつを、じっくりと鑑賞したくなる。

まるで美術館にいるような気分で、
自分の足音を気にしながら、静かに歩いていたのだが、
案内看板を見つけた時は、
思わず「かわいい」と声を出してしまった。

なんとも言えないレトロさに、胸がキュンとする。
訪れる人たちを、ここで長い間見守ってきたのだろう。

案内看板

 

淡いピンク色をしたプールサイドや、
赤くて丸いルームキー。
ティールームのケーキやカトラリーなど、
他にも、たくさんの「かわいい」を見つけた。

職業柄「かわいい」の乱用には気をつけたいところだが、
優しくて柔らかくて愛くるしくて、
ついつい、乙女心をくすぐられてしまう。
こんな気持ちを「かわいい」以外で表現できるだろうか?

夜はメインダイニングで食事をした。
格式高い空気が漂い、自然と背筋が伸びる。

これまで、国内外の賓客がここで食事をしたというが、
どんな表情で、どんな会話を交わしたのだろう。

室内

会ったことのない誰かに思いをはせながら、
ワインをゆっくり飲むと、
時空を超えたような気分になる。

静かに、夜が更けていった。
わざとぐるぐる遠回りをして、部屋に戻った。

階段

 

翌朝、チェックアウトをして、
帰りにうなぎ屋に寄った。

その店では、山椒(さんしょう)の代わりにわさびをおろしてのせる。
ふわふわのウナギと新鮮なわさびの相性は抜群で、
一気に食べきってしまった。

よし、明日からも頑張ろう。

急に現実に引き戻されたが、
体中にエネルギーが満ちあふれていた。

たった1泊だと思えない、濃厚な時間だった。

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PROFILE

宇賀なつみ

東京都出身。テレビ朝日「報道ステーション」の気象キャスターとしてデビュー。同番組スポーツキャスターとして、トップアスリートへのインタビューやスポーツ中継等を務めた後、「グッド!モーニング」「羽鳥慎一モーニングショー」など、情報・バラエティー番組を幅広く担当。2019年にフリーランスとなり、現在はテレビ朝日「池上彰のニュースそうだったのか!!」や、自身初の冠番組「川柳居酒屋なつみ」を担当。TBSラジオ「テンカイズ」やTOKYO FM「SUNDAYʼS POST」など、ラジオパーソナリティーにも挑戦している。2020年4月からは、MCを務める、関西テレビ・フジテレビ系「土曜はナニする!?」がスタートした。

ハワイで自分へのご褒美旅 宇賀なつみがつづる旅(9)

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