クリックディープ旅

久米島からスタート 沖縄の離島路線バスの旅1

今回からいよいよ、下川裕治さんが沖縄の離島の路線バスを乗り尽くす旅が始まります。第1回は2月に取材していた久米島です。

本連載「クリックディープ旅」(ほぼ毎週水曜更新)は、30年以上バックパッカースタイルで旅をする旅行作家の下川裕治さんと相棒の写真家・阿部稔哉さんと中田浩資さん(交代制)による15枚の写真「旅のフォト物語」と動画でつづる旅エッセーです。

(写真:中田浩資)

沖縄の離島旅・久米島

久米島バス系統図

※記事に登場する主なバス停だけを表示するなど、簡略化しています

10年ほど前まで、沖縄に入れ込んでいた。熱病のようだった。多いときは月に1回ぐらいは通っていた。目的があったわけではない。少し甘いにおいのする沖縄の空気に触れているだけでよかった。通った先は沖縄本島の那覇が中心だった。そこで沖縄そばを食べ、夜は泡盛を飲む。それだけで満足し、東京に戻ってきたものだった。しかし沖縄は変わった。とくに那覇の変化は激しかった。本土化が進み、僕の居場所はしだいになくなっていった。いつも泊まっていたのは、沖縄の離島からやってきた人が多く泊まるホテルだった。そこも本土風のホテルに建て替えられることになった。

どうしようか……。そうだ、離島に行こう。思いついたのが離島を走る路線バスだった。

今回から離島のバスを制覇する旅がはじまる。

1回目は久米島編──。

今回のシリーズは、一部、沖縄関連の著書の多い作家、仲村清司氏の協力で進めます。

今回の旅のデータ

久米島に行くには、那覇まで飛行機。那覇から飛行機かフェリーという選択肢になる。夏のシーズンになると、東京から直行便も運航される予定だ。那覇までは日本各地から多くの便が就航している。東京からは、日本航空、全日空、スカイマークのほか、ジェットスター・ジャパン、ピーチ・アビエーションといったLCCも就航している。運賃は片道6千円前後から。那覇から久米島までの飛行機は片道8千円前後から。直前になると1万2千円台に。フェリーは1日1~2便。片道3450円。久米島にはホテル、民宿が充実している。民宿は素泊まりで4千円台から。僕らは予約なしで、夜になって民宿を探したが、2軒に断られた。事前に予約したほうがいい雰囲気だった。

長編動画


離島へはやはりフェリーで。前半は那覇の泊ふ頭の出港風景。後半は久米島の兼城(かねぐすく)港への入港シーンを。離島旅がはじまる。中田浩資カメラマンとの船旅話も。

短編動画1


久米島町営バス営業所。サトウキビ畑を渡ってくる風が沖縄です。この営業所にはずいぶんお世話になりました。

短編動画2


久米島を一周するバスの車窓風景を。濃い緑と強い日差し。久米島のバスは、そのなかを快走中。

沖縄の離島旅・久米島「旅のフォト物語」

Scene01

フェリー

久米島まではフェリーにした。飛行機に比べてだいぶ安いこともあったが、やはり離島に行くならフェリー……そんなイメージが僕のなかにはある。予約もせずに、那覇の泊ふ頭旅客ターミナルへ。すんなり買うことができた切符を手に埠頭(ふとう)へ。船員たちはコンテナの積み込みに忙しい。フェリーを支えているのは、人より貨物?

Scene02

フェリーの中

船内はこんなゆる~い感じ。2月の沖縄は風が強く、セーターがほしいほどの体感温度。しかし船内はしっかり冷房が利いていた。乗客の多くは、そのなかで毛布をかぶってお昼寝タイム。これが沖縄の人が大好きな就寝スタイル。冷えた部屋で毛布です。沖縄のフェリーですなぁ。久米島までは約3時間。

Scene03

兼城港

フェリーが久米島の兼城港に。甲板から眺める港が好きだ。島旅……の気分に浸ることができる。フェリーは安いが、時間がかかり、ときに揺れる。船酔いしやすい体質で、乗る前は不安になるのだが、この日はベタなぎ。ほとんど揺れずに島に到着した。しっかり船内で寝たから頭もすっきり。いい船旅でした。

Scene04

バス

離島の路線バスを乗り尽くす旅がはじまる。久米島は東京の大田区ほどの広さ。島を一周する路線バスに乗れば、久米島のバスは制覇できる? そうもいかない。島一周路線から枝のようにのびる支線のような路線がある。そのひとつが久米島の空港に向かう路線。まずそのバスに乗ることにした。

Scene05

車窓

兼城港に近い「ホテルガーデンヒルズ前」のバス停からバスに乗った。仲泊の集落をすぎると、もうこんな車窓風景。刈りとり時期を迎えたサトウキビ畑が続く。この先に空港があるの?と不安になるほどだった。乗客は僕らも含めて8人。思っていたより多い……という感想は、翌日、みごとに覆されました。

Scene06

バスの出入り口

バスは久米島の空港に到着。運賃は140円。バスを降り、車体を見ると、「有償運送車両 自家用」の文字。ナンバーは白。……? 調べると違法ではありませんでした。久米島では以前、久米島交通が路線バスを走らせていたが撤退。久米島町が有償バスの形で運行させていた。だから自家用、白ナンバーでもOK。疑ってすいません。

Scene07

民宿

同じバスに乗って、「久米アイランドホテル」のバス停に行く支線を乗り尽くしてきた。リゾートホテルを巡回する路線で、同じ道を行ったり来たりする。運賃は390円。終点の久米島町営バス営業所に着いたのは夜8時すぎ。近くの民宿を探したが、「どうしてこんな夜に来たのー」と2軒に断られ、食事なしを条件にこの民宿に泊めてもらいました。

Scene08

食事

夜の10時近くに夕食を食べに近くの居酒屋へ。久米島はクルマエビの養殖が盛ん。で、頼んでみました。2匹で500円。甘さがほんのり口のなかに広がる満足感。店は地元の家族連れが多く、子供も目立つ。夕飯、遅すぎない? 本土に比べると2時間ぐらいの差がある沖縄の暮らしです。

Scene09

朝食

翌朝、近くのコンビニで中田浩資カメラマンが選んだのは、「朝すば」と「じゅーしーおむすび」。朝用沖縄そばと、沖縄風炊き込みご飯のおにぎりです。「すば」は「そば」の沖縄方言だ。朝からそば? 中国に暮らしたことがある中田カメラマンは満足げ。中国圏は麺が朝食の定番ですから。沖縄に息づく中国の食文化。沖縄のコンビニでも。

Scene10

バス営業所

朝の7時に久米島町営バス営業所へ。7時半発の島尻線のバスに乗るためだ。これに乗らないと、次は午後2時20分発になってしまう。那覇に戻るフェリーに間に合わない。しかし発車時刻になっても運転手がやってこない。事務所にも誰もいない。乗り逃すと、久米島にもう1泊? 沖縄だから……と自分にいい聞かせて待つしかない。

Scene11

通学の子どもたち

7時40分になっても、運転手は現れなかった。このバスは島尻方面の子供が通学するために使うバスのはずだった。そういうスケジュールになっている。目の前を小学生が学校に向かって、サトウキビ畑の間の道を歩いていく。その後ろ姿をぼんやり眺める。島尻の子供たちは間に合うのだろうか。こちらが気をもむ。

Scene12

バスの中

軽トラを運転して運転手が現れたのは7時42分だった。制服も着ていないので、工事関係者かと思った。そのまますっとバスの運転席に。慌てて僕らも乗り込む。島尻集落まで約10分。バス停にひとりの小学生が待っていた。そのままUターンして仲里小学校近くのバス停へ。8時少し前に到着。間に合いました。乗客? 僕ら以外は小学生ひとりだけ。

Scene13

外壁

残すのは島一周路線の半分ほどと、兼城港までのわずかな区間。久米島町営バス営業所に戻り、左回り路線に乗って仲泊へ。以前、久米島の中心はこのあたり。台風で飛ばされないようにと、店名などを壁に直接書くのが沖縄流。でも、この「Wifiスポット」は……。もう少し丁寧に書いてもいいと思うのだが。

Scene14

そば

仲泊のバス停の前にあった「やん小(やんぐゎ)」に入ってみた。最近、増えている古民家を使った沖縄そばの店だった。案内を見ると、久米島でしか栽培していない惣慶(そけい)もやしのそばが人気とか。「島味噌(みそ)もやしそば」を頼んだ。970円。歯ごたえのあるモヤシ。スープはコクがある。庭から吹き込む風が心地よかった。

Scene15

フェリーと飛行機

最後に仲泊から兼城港までバスに乗り、久米島の路線バスにすべて乗った。那覇への戻りもフェリー。天候はよかったが、風が強く、フェリーは歩くことが難しいほど揺れた。こういうときは寝るしかない。体を横にしても船酔いは襲ってきた。やっと揺れが弱まり、甲板に出ると那覇が見えた。都会だなとつぶやいてしまう。

※取材期間:2020年2月11日~2月12日
※価格等はすべて取材時のものです。

【次号予告】次回から宮古島のバス旅を。

■「台湾の超秘湯旅」バックナンバーはこちら
■「玄奘三蔵の旅」バックナンバーはこちら
■ 再び「12万円で世界を歩く」バックナンバーはこちら

BOOK

久米島からスタート 沖縄の離島路線バスの旅1
12万円で世界を歩くリターンズ
[タイ・北極圏・長江・サハリン編] (朝日文庫)
リターンズ第二弾では、タイと隣国の国境をめぐり、北極圏を北上し、長江をさかのぼる旅へ、予算12万円で約30年前に旅したルートをたどる。さらに「12万円でサハリンに暮らす」ことにも挑戦。旅は、世界はどう変わったか?
朝日文庫
3月6日発売
定価:770円(税込み)

PROFILE

  • 下川裕治

    1954年生まれ。「12万円で世界を歩く」(朝日新聞社)でデビュー。おもにアジア、沖縄をフィールドに著書多数。近著に「一両列車のゆるり旅」(双葉社)、「週末ちょっとディープなベトナム旅」(朝日新聞出版)、「ディープすぎるシルクロード中央アジアの旅」(中経の文庫)など。最新刊は、「12万円で世界を歩くリターンズ 【タイ・北極圏・長江・サハリン編】」 (朝日文庫)。

  • 中田浩資

    1975年、徳島県徳島市生まれ。フォトグラファー。大学休学中の1997年に渡中。1999年までの北京滞在中、通信社にて報道写真に携わる。帰国後、会社員を経て2004年よりフリー。旅写真を中心に雑誌、書籍等で活動中。

串焼き、駅弁、サンドイッチ、麺 世界各地のテイクアウト

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