楽しいひとり温泉

温泉+いにしえの喜び 奈良公園に建つ新しい温泉リゾート「ふふ 奈良」

県をまたぐ移動自粛要請の緩和により、少しずつ旅を始めました。今回の行き先は、いにしえの都・奈良。いったい何年ぶりでしょうか。せっかくなので、ゆっくりと春日大社や東大寺を訪れて、疫病や自然災害から人々を救おうと建立された大仏様もお参りして、こよいの宿へ。2020年6月に開業したばかりの新しい温泉リゾート「ふふ 奈良」です。

(トップ写真:東大寺の大仏様は疫病や自然災害から救いを求めて建立された)

■連載「楽しいひとり温泉」は、全国各地の温泉をめぐり、温泉・自然・食で美しくなる旅を研究する、温泉ビューティー研究家の石井宏子さんが、テーマごとにひとり温泉にぴったりなお宿を紹介します。

歴史を刻む大木と灯籠の明かり

レセプション

「ふふ 奈良」のレセプション

「ふふ 奈良」は、奈良県のプロジェクトにより奈良公園内に建てられました。建築基本デザインは隈研吾氏、古都奈良の自然と文化がテーマです。レセプションは、巨木が印象的。この地にあったクスノキを丸太のまま受付カウンターにしています。

回廊

奈良を象徴する灯籠(とうろう)の明かりが宿の回廊にも

宿泊棟は中庭を囲む2階建てで現代の数寄屋スタイル、灯籠(とうろう)の明かりに誘われて回廊を進み、部屋へと入ります。

部屋

墨色とグレーの色調で統一された部屋

「ふふ 奈良」は建物も部屋の中も、墨色とグレーで統一されていて、どっしりと落ち着いた雰囲気。まるで囲炉裏端のように座るリビングで、いにしえの奈良の暮らしを感じる低い目線で外の景色を眺めます。

テラスの温泉

各部屋のテラスには専用の温泉がある

テラスには露天風呂があり、竹林をそよそよと揺らす風を感じながら温泉につかります。温泉は奈良市内から運んでいて、泉質は単純温泉。しっとりとした肌触りの癒やし湯です。湯上がりは、ふわふわのバスローブを羽織って、ごろりと横になれるソファでうたた寝。チイチイと澄んだ声で鳴く小鳥の声が響く、静かな時間が過ぎていきます。

歴史的文化財を復元した庭園を通って食事処へ

石段

奈良公園の庭園の石段を下りて食事処へ

宿泊棟に隣接する庭園は、瑜伽山園地(ゆうがやまえんち)として1927(昭和2)年に国指定文化財「名勝奈良公園」に追加指定された、旧山口氏南都別邸庭園があった場所です。奈良県が美しく復元し、散策できるように整備するのと同時進行で、「ふふ 奈良」も建設されました。すがすがしい竹林の中にどっしりとした巨木。埋もれていた石灯篭(どうろう)や、飛び石も掘り出され、かつての茶室も復元されています。

滴翠

日本料理「滴翠(てきすい)」も隈研吾氏設計

庭園の先には、日本料理「滴翠(てきすい)」が。「ふふ 奈良」の食事処でもあり、宿泊者以外の食事利用も可能です。こちらも隈研吾氏の建築で、墨色が使われていてシックなたたずまいです。

鷺池

隣接する鷺池(さぎいけ)の水面に映る夕焼け空にうっとり

暮れゆく庭園を眺めながらの夕食。2階には浮見堂(うきみどう)と鷺池(さぎいけ)が望めるテーブルもあります。この日は、夕日が雲をあかね色に染める風景が水面に映り込み、息をのむほどドラマチックな瞬間に出会いました。

挑戦的な食の組み合わせで奈良を楽しむ

八寸

鹿を描いた盆にのった八寸

鹿模様の盆にのった八寸。奈良で古くから生薬として使われてきた「大和当帰(やまととうき)」の天ぷらは、ほんのりと感じる苦みがおいしい。奈良漬けとフォアグラの春巻きなど楽しい驚きがあります。

飛鳥鍋

古代の「蘇」が驚きの味わいに変わる飛鳥鍋

飛鳥時代の日本で食されていた「蘇(そ)」は、牛乳を乾燥させて作る古代の乳製品。実は以前に食べたことがあるのですが、ぽそぽそしていて素朴な味わい、正直そんなにおいしくはなかったという思い出があります。ところが、名物料理「飛鳥鍋」にはビックリ。オマールエビの濃厚なスープに蘇を溶かしこんで仕上げると、この蘇がまるであん肝のようにとろける味わいに変わっていくのです。この挑戦的組み合わせはミラクルです。

大和和牛

大和牛の和紅茶焼き

大和牛は和紅茶をいぶして仕上げます。茶葉と肉の甘い香りが重なり合い食欲をそそります。野菜とともに添えられているのは、マンゴー。肉にのせて味わうと、うまみと酸味、甘みが複雑に広がって極上のおいしさに。さらに、ハスの実のソース、キハダの実が入った味噌(みそ)ソースと味わいを変化させることで、肉の深みのあるコクを引き出します。

薬湯の朝湯でシャキッと目覚める

薬湯

薬湯の袋を温泉に浮かべて

薬湯の朝湯。和漢生薬がぎっしり詰まった薬湯の袋が部屋に用意されています。「一晩じっくり湯船に浮かべておくといいですよ」と教えていただきました。奈良を代表する生薬・大和当帰は血の流れを整え、体を温めて元気を与えると言われています。

鹿

庭園の竹林に鹿もやってくる

朝食に向かう庭園にも鹿の姿が。今年は、鹿せんべいをもらえる機会が少なくなり、草食生活で鹿もスリムになったそうです。

朝食

優しい大和茶がゆではじまる朝食

大和茶がゆの朝食。優しい味わいに内臓がポカポカと温まってきます。ぐつぐつと煮立った小鍋が運ばれてきました。これが、なんと納豆汁。パンチの利いた粉山椒(ざんしょう)、ざく切り野菜と目玉焼きも入ったパワフルなおいしさに魅了され、先ほどまでの大和茶がゆのことはすっかりとんでしまうほどでした。

奈良県・奈良公園「ふふ 奈良」
https://www.fufunara.jp/

■「楽しいひとり温泉」ポイント
1.古都・奈良をゆっくり見物
2.文化財の庭を楽しむ
3.温泉と薬湯で2度楽しい

BOOK

温泉+いにしえの喜び 奈良公園に建つ新しい温泉リゾート「ふふ 奈良」

全国ごほうびひとり旅温泉手帖 いい湯、いい宿、旅ごはん!

石井宏子さんの著書「全国ごほうびひとり旅温泉手帖 いい湯、いい宿、旅ごはん!」(世界文化社)。温泉ビューティー研究家・旅行作家ならではの、旅してみつけた、女性がひとりで安心して楽しめる温泉宿を紹介するハンディーな一冊。公共交通機関で行ける、自分へのごほうびで泊まりたい、いい宿を全国から厳選し、あわせて、女性目線で選んだ周辺の立ち寄り先、ランチやスイーツも取り上げます。ひとりでも楽しい観光列車も登場します。税別1400円。

PROFILE

石井宏子

温泉ビューティー研究家・トラベルジャーナリスト。日本・世界の温泉や大自然を旅して写真撮影・執筆をする旅行作家。テレビにも出演。温泉・自然・食で美しくなる旅を研究する。海外ブランドのマーケティング・広報の経験から温泉地の企画や研修もサポート。日本温泉気候物理医学会会員、日本温泉科学会会員、日本旅のペンクラブ会員、気候療法士(ドイツ)、温泉入浴指導員。著書に「癒されてきれいになる おひとりさま温泉」(朝日新聞出版)、「地球のチカラをチャージ! 海温泉 山温泉 花温泉 76」(マガジンハウス)、「感動の温泉宿100」(文春新書)などのほか、「全国ごほうびひとり旅温泉手帖 いい湯、いい宿、旅ごはん!」(世界文化社)が11月に発売された。

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