永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶

(66)衣装からにじむ民族の誇り 永瀬正敏が撮った台湾

国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回は、もともと住んでいる主権者という意味を込め台湾では「原住民」と呼ばれる先住民族の鮮やかな伝統衣装姿です。永瀬さんにとって、この写真には格別の思いがあるのです。

(66)衣装からにじむ民族の誇り 永瀬正敏が撮った台湾

©Masatoshi Nagase

僕には撮りたいシリーズものがいくつかある。

全てをまだここでは発表できないが、その一つが「全台湾原住民の写真集」。

台湾に伺うたび原住民の方の伝統的な衣装の美しさに目を奪われ、
伝統を重んじる文化の継承に感動を覚える。

原住民の方の写真集がないか? 探してみるのだけれど、
今のところ歴史書的なものか、観光ガイドのようなものしか見つけられずにいる。

この作品はシンガーのルオ・メイリンさんにお願いして撮らせていただいた。
彼女はタイヤル族。タイヤル族の衣装もとても美しい。
その伝統衣装をわざわざ持ってきてくださり、この日撮影させていただいた。

この時、他の方も少し撮影させていただいたのだけれども、
伝統衣装を身につけると、男性はより勇ましく、女性はより憂いを帯びるように感じられる。
やはり自分たちのルーツに誇りを持ち、将来を見つめていらっしゃるからだろう。

あの日以来まだ他の原住民の方の撮影は進んでいないけれども、
ぜひ早い時期に撮影再開できれば。

認定されているだけでも16民族ある台湾の原住民。
全ての民族を網羅した写真集をいつか残せれば。そう願っている。

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PROFILE

永瀬正敏

1966年宮崎県生まれ。1983年、映画「ションベン・ライダー」(相米慎二監督)でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督「ミステリー・トレイン」(89年)、山田洋次監督「息子」(91年)など国内外の約100本の作品に出演し、数々の賞を受賞。カンヌ映画祭では、河瀬直美監督「あん」(2015年)、ジム・ジャームッシュ監督「パターソン」(16年)、河瀬直美監督「光」(17年)と、出演作が3年連続で出品された。近年の出演作に常盤司郎監督「最初の晩餐」、オダギリジョー監督「ある船頭の話」、周防正行監督「カツベン!」、甲斐さやか監督「赤い雪」など。写真家としても多くの個展を開き、20年以上のキャリアを持つ。2018年、芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞。

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