にっぽんの逸品を訪ねて

もう一度味わいたいグルメの逸品たち “厳選レストラン3軒”

旅先でのレストラン選びって、けっこう難しいと思いませんか? おいしいのはもちろんのこと、その土地ならではの食材や雰囲気が味わえて、しかも旅行費用を圧迫しないくらいの価格で……と、要望は盛りだくさん。今回は過去約4年間の連載の中から、そんな条件を満たしてくれるレストランを選びました。風土の魅力を感じながら、幸せな時間が過ごせた3軒です。

連載「にっぽんの逸品を訪ねて」は、ライター・中元千恵子さんが日本各地の逸品を訪ね、それを育んだ町の歴史や風土を紹介します。

忘れられない「寒干し大根」のスープ

一軒目は奥飛驒の深い山あいにある「ビストロ シェ・ボア」です。

ビストロ シェ・ボア

隠れ家のようなレストラン「ビストロ シェ・ボア」

この店がある岐阜県飛驒市神岡町は、養老年間(奈良時代)から金を産出していたと伝わる鉱山のまち。神岡鉱山は一時は「東洋一の鉱山」とよばれるほどの鉱石の採掘量を誇り、町も大いに繁栄しました。今も歴史を物語る昭和の町並みが残っています。

「ビストロ シェ・ボア」も、かつて花街だったレトロな町並みの一角に建っています。

歴史的な町並み

周辺の歴史的な町並み

神岡出身であるシェフの林暢之さんが、名古屋で修業した後にオープン。飛騨の山の幸、富山から運ばれる海の幸など地元食材を生かしたフレンチが、20年以上、地元で愛されています。

店内

ほっとくつろげる店内

似顔絵

店内にシェフの似顔絵?がありました

この日の一品目であるスープを飲んだ時の感激は忘れられません。イノシシの肉、寒干し大根、シイタケという飛驒の山の幸を取り合わせたスープでしたが、深いうまみとコク、やさしい甘み。滋味あふれる味わいは、そのまま奥飛驒の豊かな大地を表しているように感じました。

スープ

飛驒の山の幸を使ったスープ

林シェフによれば、味の重要な要素である「寒干し大根」は、神岡町の山之村地区の名産品。豪雪地帯であるこの地区では、冬の間の貴重な保存食として、昔から各家の軒下で厳寒期の約1カ月間、寒干しして作られてきたそうです。

話を聞きながら味わうと、雪景色や大根を干す人たちの姿が目に浮かびました。ひと皿の料理から風土を感じるという、旅の醍醐(だいご)味を味わえた一品でした。

寒干し大根(画像提供:飛驒市)

寒干し大根(画像提供:飛驒市)

軒下で大根を寒干しします(画像提供:飛驒市)

軒下で大根を寒干しします(画像提供:飛驒市)

メインディッシュは、飛驒地鶏のモモ肉のローストに、地元で採れたフキノトウのソースを合わせたもの。上品な味わいのジューシーな地鶏と、かすかな苦みのあるフキノトウのソースがよく合います。

地鶏のロースト

彩りも美しい地鶏のロースト

自家製デザートもスタイリッシュ。

お店は、現在は昼、夜とも2組合計6人までに限定して営業中とのこと。予約が必要です。

デザート

デザートは甘さ控えめで大人の味

■紹介記事はこちら
気分爽快! 奥飛驒の渓谷を走るレールマウンテンバイク

三浦半島の自然を感じるイタリアン

地元の風土を感じたレストランといえば、神奈川県横須賀市にある「SOLIS -Agriturismo-(ソリス アグリトゥーリズモ)」も忘れられない一軒です。

「SOLIS-Agriturismo-」

「SOLIS -Agriturismo-」

三浦半島の西海岸から少し入った山手にある店舗は、木立に囲まれた静かなロケーション。オープンキッチンの開放的な空間が広がる店内には、大きな窓からやわらかな光が注いでいます。座って窓の外を眺めていると時間がゆっくりと流れていくよう。ランチでも2時間以上かけてゆっくり味わう利用客が多いそうですが、それも納得です。

店内

時間がゆっくり流れるようです

「SOLIS」では、シェフの伊藤亮太郎さんが、地元の旬の食材にこだわって調理したイタリアンのコース料理が、ランチとディナーで味わえます。

伊藤亮太郎シェフ

伊藤亮太郎シェフ

食器やテーブルセッティングも、三浦半島の自然を表現するかのように明るくのびやかな印象です。

テーブルセッティング

心和むテーブルセッティングでした

前菜の「佐島(さじま)産ヤリイカと三浦セロリのサラダ」は、美しく軽やかな盛り付けにまず心を奪われました。訪れたときは2月だったのですが、近づいている三浦半島の春を表現したかのようでした。

佐島漁港で水揚げされたヤリイカは甘く、それを自家製塩レモンの味付けが引き立てます。セロリも爽やか。

「佐島産ヤリイカと三浦セロリのサラダ」

「佐島産ヤリイカと三浦セロリのサラダ」

「青木農園の黄かぶのスープ」は、こだわりの野菜作りを行っている地元の青木農園のカブを使用。弱火で3時間煮込み、甘みとうまみを存分に引き出したひと品です。ローストしたクルミの香ばしさが味のアクセントに。

「青木農園の黄かぶのスープ」

「青木農園の黄かぶのスープ」

イシモチを一夜干しするところから手をかけ、それをアンチョビ風に用いた「チーマ・ディ・ラーパと自家製一夜干しのフェットゥチーネ」も「湘南豚とサボイキャベツのフレーグラ」もたっぷりと使った野菜のおいしさが際立ちます。

「湘南豚とサボイキャベツのフレーグラ」

「湘南豚とサボイキャベツのフレーグラ」

メインの「牛ほほ肉のペポーゾ」にも、デザートの「SOLIS風ヨーグルトのムース 季節のソースで」にも、もちろん地元の食材が使われていました。

デザート

デザートは彩りも華やかでした

■紹介記事はこちら
隠れ家レストランと海辺の絶景ホテル 横須賀西海岸のスローリゾート

旧銀行を改装したフレンチレストラン

3軒目は奈良県桜井市にある「ル・フルドヌマン~櫻町 吟(ぎん)~」です。

外観

クラシカルな外観が目を引きます

奈良県中央部の桜井市は、飛鳥時代以前のヤマト王権の中心地だったと考えられている地。多くの史跡が残っています。

そんな歴史の町で訪れた「ル・フルドヌマン~櫻町 吟~」は、昭和初期に建築された旧吉野銀行桜井支店を改装したフレンチレストラン。町が重ねてきた長い歴史の一端を感じながらの食事は、旅の思い出深い時間になりました。

建物

町の歴史を伝える建物です

店内に一歩足を踏み入れると、時間がさかのぼったかのよう。2階に回廊をめぐらした吹き抜けの空間や、木造の手すりや階段を見ていると、多くの人でにぎわっていた銀行時代のざわめきが聞こえてきそうです。

桜井市は明治時代から昭和にかけて、吉野杉と吉野檜(ヒノキ)の集積地として繁栄しました。銀行には多くの材木商が訪れていたことでしょう。

店内

重厚感とともに華やぎを感じる店内

材料には、自家農園や契約農家から届く野菜やフルーツ、大和牛やヤマトポーク、和歌山県由良直送の海の幸などを使っています。ランチは2200円~、ディナーコースは4400円~。

この日の前菜は、自家農園の野菜のマリネ、天使のエビのカダイフ包み、タイとホタルイカのマリネ、パテ・ド・カンパーニュの4種類。野菜あり、魚介あり、パテありと、食材も変化に富み、それぞれ丁寧に作られていて、味わっているとワインが進みます。カダイフという極細麺のパリパリの食感も楽しめました。

前菜

それぞれの味が楽しめる前菜4種

「アサリのフランと菜の花のスープ」は2層仕立て。鮮やかなグリーンのスープをすくうと、下からプリンのような食感のフランが顔を出します。アサリのうまみがたっぷり溶け込んだクリーミーなフランと、爽やかな菜の花のスープの相性が絶妙です。

「アサリのフランと菜の花のスープ」

「アサリのフランと菜の花のスープ」

魚料理は、ホタテの繊細な味わいが楽しめる「ホタテと水ダコのスフレ仕立て 海藻ソース」。肉料理は、炭火で焼き上げたジューシーな「大和牛イチボのグリル ヴィネーグルソース」。

「ホタテと水ダコのスフレ仕立て 海藻ソース」

「ホタテと水ダコのスフレ仕立て 海藻ソース」

「大和牛イチボのグリル ヴィネーグルソース」

「大和牛イチボのグリル ヴィネーグルソース」

デザートは、奈良県名産のイチゴ「あすかルビー」を使ったアイスクリームと、パティシエ特製のチーズケーキ。最後のひと口まで堪能したコースでした。

■紹介記事はこちら
歴史のまち「奈良県桜井市」に旧建築を生かした宿やレストランがオープン

【問い合わせ】最新の状況は各店舗にお問い合わせください。
・ビストロ シェ・ボア
https://chezbois.hida-ch.com/
・SOLIS -Agriturismo-
http://www.solis-agriturismo.com/
・ル・フルドヌマン~櫻町 吟~
https://sakuramachi-gin.gorp.jp/

■バックナンバーはこちら

PROFILE

中元千恵子

旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの温泉宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。
全国各地のアンテナショップを紹介するサイト 風土47でも連載中

行ったつもりで楽しむ自然の逸品“茶臼岳編”

一覧へ戻る

もう一度味わいたいグルメの逸品たち “風土が生んだ伝統のスイーツ編”

RECOMMENDおすすめの記事