クリックディープ旅

宮古島の「盲腸路線」攻略に挑む 沖縄の離島路線バスの旅3

下川裕治さんが沖縄の離島の路線バスを乗り尽くす旅。前回から宮古島に入りました。なかなか作戦通りにはいかないなか、残された1区間を攻略しようと下川さんが奔走します。音声付きの長編動画では、宮古島でのバス旅の苦労と魅力を語ります。

本連載「クリックディープ旅」(ほぼ毎週水曜更新)は、30年以上バックパッカースタイルで旅をする旅行作家の下川裕治さんと相棒の写真家・阿部稔哉さんと中田浩資さん(交代制)による15枚の写真「旅のフォト物語」と動画でつづる旅エッセーです。

(写真:中田浩資)

沖縄の離島旅・宮古島2

宮古島バス系統図

※主に文章に登場するバス停を表記するなど簡略化。図はみやこ下地島エアポートライナーの路線を含んでいます

沖縄の離島の路線バスをすべて乗り尽くす……。久米島に次いで宮古島に渡った。離島といっても宮古島市は人口が5万人を超えている。路線バスは9路線。しかし宮古島も車社会。利用するのは高校生や老人で本数は少ない。それをどう組み合わせれば効率よく乗り尽くすことができるか……。路線バスの迷路に入り込む。そこで発覚してしまったのは、盲腸路線だった。利用客の便宜をはかるために、1日に1~2本、たった1区間の盲腸路線に入り込むダイヤが組まれていたのだ。そこをどう走破したらいいのか。そして隣接する伊良部島では、通学する高校生がいないと走らない路線が……。宮古島路線バスラビリンスは続く。

長編動画


池間一周線の始発バスの車窓風景を。暗いうちに出発し、やがて池間大橋。明るくなりはじめた池間島から宮古島市街へ。

短編動画


宮古島と伊良部島を結ぶ伊良部大橋。海のなか、やや明るい翡翠(ひすい)色の部分がサンゴ礁だ

今回の旅のデータ

宮古島、そして橋でつながる伊良部島・下地島、来間島、池間島に路線バスを運行させているのは4社。宮古協栄バス、八千代バス・タクシー、共和バス、中央交通である。系統図と原稿の内容は、バスに乗った今年2月のダイヤや運賃に基づいている。しかし今年の4月、宮古協栄バスのダイヤや運賃が変更になった。また若干だが、バス停も変わった。路線やルートは大筋同じだが、宮古島市の市街地で変更があったのだ。宮古協栄バスは、主に宮古島の島内を運行している。乗る際はホームページで確認してほしい。宮古協栄バスのサイトはhttps://385kyoei.com/route/

沖縄の離島旅・宮古島「旅のフォト物語」

Scene01

平良バス停

早朝の6時10分。池間一周線の始発に乗るために平良バス停へ。なぜ始発に? 路線図を見てほしい。成川というバス停に止まる盲腸路線がみつかるはず。成川に止まるバスは始発の折り返しバスと午後便の2便しかないのだ。日程を考えると、この始発に乗るしかなかった。写真左手の待合室に行くと運転手さんがいた。一緒に朝のコーヒータイム。

Scene02

海

まだ暗い宮古島の道を池間島に向かって進む。ようやく太陽が出てきたのは池間島の手前。東京に比べると日の出はだいぶ遅い。そして、全長1425メートルの池間大橋を渡った。天気もよく、爽快な早朝バス旅だが、僕はやや二日酔い。宮古島には、オトーリという泡盛の一気飲み+まわし飲みの風習がある。それは避けたのだが。

Scene03

バス停

乗客は僕らふたりだけ……と思っていると、池間島の漁協前の次の学校裏バス停から高校生がひとり乗ってきた。そこまでお母さんが車で送ってきていた。彼はその後、バスのなかで爆睡。平良バス停に着くと、運転手さんが起こしていた。宮古島のバスの運転手は優しい? それとも乗客が少なすぎる?

Scene04

うず巻パン

平良港のバス停へ。そこで「うず巻パン」の朝食。これは宮古島では知られたパンで、甘いバタークリームを塗って、ロールケーキのように巻いたパン。バタークリームにはザラメがまぶしてあるから、食べるとジャリッとくる。「せき込むほど」に「のけぞるほど」に甘く、癖になる。サトウキビ刈りのおやつの定番だったとか。

Scene05

バス

平良港近くのバス停から、みやこ下地島空港に向かうバスに乗る。このバスは、宮古島内のリゾートホテルと空港を結ぶ特急バス。乗客も観光客が多い。宮古島のローカルバスに乗り続けてきた身には妙に新鮮なバス。「座席の位置が高いからいいよー」と島の人がいう。なぜいい? これは次の写真で。

Scene06

伊良部大橋

みやこ下地島空港に向かうには、伊良部大橋を渡る。全長3540メートル。通行料がかからない橋では日本で最も長い。観光客のお目当ては、橋の上から見おろすサンゴ礁の海。翡翠色の海のところどころに円形のサンゴ礁がくっきりと見える。座席位置が高いとよく見えるという。その眺めは短編動画で。

Scene07

みやこ下地島空港ターミナル

みやこ下地島空港に着いた。この空港はもともと民間航空機などの離着陸訓練用だった。その機能を残しつつ、2019年に新ターミナルが開業し定期便も就航。ジェットスター・ジャパンや香港エクスプレスなどのLCCが乗り入れていた。ターミナルはバリ島の空港に似た設計で、リゾート気分を盛りあげている。

Scene08

タクシー

みやこ下地島空港と宮古島を結ぶもうひとつのバスに乗りブリーズベイオーシャンのバス停へ。理由は前日に乗った新里宮国線。野原公民館前への盲腸路線に入らない便に乗ってしまったのだ(前号)。この区間をどうする? 地図を見ると、ブリーズベイオーシャンから遠くない。タクシーを使えば盲腸路線を走るバスに間に合うかもしれない。

Scene09

バス停

野原公民館前の手前のバス停、東ツンマーにタクシーが着いた。バスに間に合いそうだった。昼時。この時間を逃すと昼食抜きになりそう。見ると近くに弁当屋があった。やってくるバスが気になり、バス停脇で弁当をかきこむ。宮古島まで来てなにをやっている? 風に揺れるサトウキビのざわざわという音が嘲笑にも聞こえてしまう。

Scene10

チョコレート

近くの弁当屋で買ったのは揚げサバ弁当、500円。焼きサバじゃありません。魚はなんでも揚げるのが沖縄の流儀。本土から届いたサンマも揚げて出てくる。弁当のおかずに沖縄を感じていると、店を切り盛りする中年女性が、「はいッ」とチョコレートを2個。「今日はバレンタインデーさー」。再び沖縄を感じてしまう。

Scene11

バス停の陰

急いで弁当を食べたというのに、バスはなかなかやってこない。2月なのだが、すでに日差しは強く……ジャンパーを脱ぎ、バス停の日陰に体を入れる。このバスを逃すと、夕方の6時台まで待つことになる。僕の不安をよそに、バスはいつもの顔をして姿をみせました。5分遅れで。これで盲腸路線をひとつ制覇できる……。

Scene12

車窓からの風景

残るのは2路線。平良港から伊良部島の佐和田車庫に向かう路線に乗る。再び伊良部大橋を渡り、この佐良浜港へ。ここから佐和田車庫へ……というところで、またしても盲腸路線がみつかってしまった。朝の一便だけ、高校前バス停に止まる。明日の朝にもう一度か……。伊良部島ののびやかな風景を見ながらつぶやいていた。

Scene13

佐和田車庫

終点の佐和田車庫に着いた。運転手に高校前のバス停の話をした。すると、「高校生がいないと行かないよ」。高校は伊良部高校である。廃校が決まっていて、2019年度から生徒を募集していない。2月時点の生徒数は、2年生5人、3年生15人だけ。このうちだれかが乗らないと盲腸路線を乗り尽くすことはできない……。

Scene14

サトウキビ畑

どうしたら高校前の盲腸路線を乗り尽くすことができるのだろう。伊良部高校に聞いてみた。「2年生は全員、伊良部集落ですから徒歩通学。3年生のなかにバスに乗る生徒がいるかどうか」。生徒に頼んで乗ってもらう? でもこれは反則。沿線のサトウキビ畑を眺めても答えは出ない。

Scene15

ルートビア

結局、高校前の盲腸路線が残ったまま時間切れ。宮古空港のターミナルにあるA&Wで好物のルートビアを飲みながらため息ひとつ。「宮古島に1週間ぐらい滞在したら、チャンスはあるかも」。その後、新型コロナウイルスの感染が拡大。宮古島に行くことは難しくなった。その間に伊良部高校の3年生は卒業。チャンスはさらに減少した。

※取材期間:2020年2月13日~2月15日
※価格等はすべて取材時のものです。

【次号予告】次回は竹富島のバス旅を。

■「台湾の超秘湯旅」バックナンバーはこちら
■「玄奘三蔵の旅」バックナンバーはこちら
■ 再び「12万円で世界を歩く」バックナンバーはこちら

BOOK

宮古島の「盲腸路線」攻略に挑む 沖縄の離島路線バスの旅3
12万円で世界を歩くリターンズ
[タイ・北極圏・長江・サハリン編] (朝日文庫)
リターンズ第二弾では、タイと隣国の国境をめぐり、北極圏を北上し、長江をさかのぼる旅へ、予算12万円で約30年前に旅したルートをたどる。さらに「12万円でサハリンに暮らす」ことにも挑戦。旅は、世界はどう変わったか?
朝日文庫
3月6日発売
定価:770円(税込み)

PROFILE

  • 下川裕治

    1954年生まれ。「12万円で世界を歩く」(朝日新聞社)でデビュー。おもにアジア、沖縄をフィールドに著書多数。近著に「一両列車のゆるり旅」(双葉社)、「週末ちょっとディープなベトナム旅」(朝日新聞出版)、「ディープすぎるシルクロード中央アジアの旅」(中経の文庫)など。最新刊は、「12万円で世界を歩くリターンズ 【タイ・北極圏・長江・サハリン編】」 (朝日文庫)。

  • 中田浩資

    1975年、徳島県徳島市生まれ。フォトグラファー。大学休学中の1997年に渡中。1999年までの北京滞在中、通信社にて報道写真に携わる。帰国後、会社員を経て2004年よりフリー。旅写真を中心に雑誌、書籍等で活動中。

時刻表を分析し、いざ宮古島へ 沖縄の離島路線バスの旅2

一覧へ戻る

観光客が戻りつつある竹富島へ 沖縄の離島路線バスの旅4

RECOMMENDおすすめの記事