京都ゆるり休日さんぽ

創業93年の甘味処「甘党茶屋 梅園」が京都にある幸せ

寺町通と三条通が交わる角地。商店街のアーケードがそこだけパッと開け、道行く人がふと足を止めるその場所に、一軒の甘味処があります。「甘党茶屋」の冠で京都人から親しまれる「梅園」の三条寺町店。一年でもっとも忙しくなる夏本番を前に、「氷」の旗が揺れる三条寺町店を訪ねました。

■暮らすように、小さな旅にでかけるように、自然体の京都を楽しむ。連載「京都ゆるり休日さんぽ」はそんな気持ちで、毎週金曜日に京都の素敵なスポットをご案内しています。
(文:大橋知沙/写真:津久井珠美)

京都に根ざす、町の甘党茶屋として

かき氷

春から提供が始まるかき氷。夏場は行列ができる人気。こちらは「黒糖白玉+きなこ+黒寒天」(1150円・税込み)

京都市内に6店舗を構える1927年創業の「甘党茶屋 梅園」。中でもここ、三条寺町店はもっとも広く、レトロモダンな内装と立ち寄りやすい立地で、多くの人々に親しまれています。梅園名物のみたらし団子やわらび餅などを盛り合わせた「甘味点心」をはじめ、あんみつやかき氷などの定番メニュー、さらに近年取り組む甘味の手土産も購入できるとあって、地元客から観光客まで甘党の心をつかんでいます。

「子どもの頃から両親の仕事を間近で見てきたので、自分が梅園を継ぐことを『そういうもん』だと思ってきたんです。ところが、両親は違ったみたいで」

西川葵さん

3代目店主・西川葵さん。三条寺町店をはじめ、新店舗の空間デザインも手がける

そう笑うのは、3代目店主の西川葵さん。スタイリッシュな空間とホットケーキなどを提供する「うめぞの CAFE&GALLERY」を皮切りに、これまでにないスタイルの店舗や商品を次々と実現させてきました。最初は娘が店を継ぐことに消極的だった両親も、新しいことに生き生きと取り組む西川さんの姿を見るうち、応援してくれるように。6年ほど前、正式に店主に着任し、古きよき梅園を守りながらも、新たな店舗や新商品の開発に奮闘しています。

外観

寺町通と三条通が交差する場所。アーケードが開け、道行く人が思わず足を止める

三条寺町店は、梅園の中でも最も古い河原町店に続き「誰もが立ち寄りやすい街なかにもう1店舗を」と2017年にオープン。三条寺町店に前後して、洋菓子のようにフルーツやクリームをあしらった新食感のお菓子「かざり羹(かん)」を供する「うめぞの茶房」、ジェイアール京都伊勢丹のおもたせ専門店「梅園 oyatsu」もオープンし、店ごとに違ったコンセプトが楽しいと話題を集めています。

伝える、届ける。甘いものがもたらす幸せ

小学生のころからあんことお菓子作りが好きで、「あんこを使って、和菓子以外のお菓子も作ってみたい」という探究心から、さまざまな試作を繰り返していたという西川さん。新しいスタイルの店や商品で、その夢を少しずつ形にしてきました。けれど、店やメニューが増えても、梅園が大切にしていることは変わりません。

みたらしバターサンド

梅園の名物、四角いみたらし団子の焼き印を押した「みたらしバターサンド」(5個入り1188円・税込み)。バタークリームと甘じょっぱいみたらしソースの組み合わせがクセになる

国産の良品を使って作ること、毎日でも食べられる味であること、たくさんの人に喜んでもらうこと。それが、初代の頃から受け継がれてきた「甘党茶屋」としての梅園のあり方です。修学旅行生から外国人旅行客、地元の人までさまざまな人でにぎわうのは、手頃で安心できて飽きがこない、懐の深さを感じる甘味処だからこそ。新型コロナウイルスの影響で一時は全店舗を休業しましたが、再開後も気軽に立ち寄ってもらえるようにと、かき氷のテイクアウトや手土産にも力を入れています。

かき氷

テイクアウトのかき氷は600円〜。みるく、白玉(二つ)、小豆は各50円で追加できる

「父も、長年やってきてこんなことは初めてと言っていました。さまざまな選択肢を話し合う中で、私は、お店やスタッフを守りたかった。オンラインショップを立ち上げたり、伊勢丹で隣同士だったUCHU wagashi(うちゅうわがし)さん、JEREMY & JEMIMAH(ジェレミー&ジェマイマ)さんとコラボレーションして『旅する京都』というお取り寄せのセットを企画したりしました。普段は競合のお店なのに、自然と『一緒にやりましょう』という流れになったんです」

三条寺町店の2階

三条寺町店の2階。波ガラスやクラシカルな照明がレトロモダンな雰囲気

オンラインショップにはあたたかい励ましの言葉とともに、全国から注文が。また、緊張とともに迎えた営業再開の日には、途切れることなくお客様が訪れ、まるで新規のオープンのように胸がいっぱいになったと言います。

「甘いものは必ずしも、生活必需品ではないけれど……。こうして続けてこられたということは、必要としてくれる人がいるということだと思うんです」

西川さんはそう話します。

「氷」の旗

使い込んだエプロンをリメイクして作ったという「氷」の旗

歴史ある老舗も昔ながらの和菓子も、時代とともに変化し、挑戦しながら、未来へと受け継がれていきます。けれど、道行く人が、みたらしの匂いや「氷」の旗につい引き寄せられてしまう気持ちは、時代が移り変わってもそれほど変わらないのかもしれません。町に「甘党茶屋」があり、今日も甘い匂いが漂っている。そんな幸せをひととき、味わってみてください。

甘党茶屋 梅園 三条寺町店
https://umezono-kyoto.com/
旅する京都
https://tabisurukyo.theshop.jp/

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BOOK

創業93年の甘味処「甘党茶屋 梅園」が京都にある幸せ

京都のいいとこ。

大橋知沙さんの著書「京都のいいとこ。」(朝日新聞出版)が6月7日に出版されました。&TRAVELの人気連載「京都ゆるり休日さんぽ」で2016年11月~2019年4月まで掲載した記事の中から厳選、加筆修正、新たに取材した京都のスポット90軒を紹介しています。エリア別に記事を再編して、わかりやすい地図も付いています。この本が京都への旅の一助になれば幸いです。税別1200円。


PROFILE

  • 大橋知沙

    編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブックやWEB、ライフスタイル誌などを中心に取材・執筆を手がける。本WEBの連載「京都ゆるり休日さんぽ」をまとめた著書に『京都のいいとこ。』(朝日新聞出版)。編集・執筆に参加した本に『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

  • 津久井珠美

    1976年京都府生まれ。立命館大学(西洋史学科)卒業後、1年間映写技師として働き、写真を本格的に始める。2000〜2002年、写真家・平間至氏に師事。京都に戻り、雑誌、書籍、広告など、多岐にわたり撮影に携わる。

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