海の見える駅 徒歩0分の絶景

名峰のふもとで見つけた海と山の美景  北海道の森駅と渡島砂原駅

北海道南部の渡島半島にそびえる名峰、北海道駒ヶ岳。別名「渡島富士」。そのふもとにある二つの、海の見える駅。雄大な山と海を望む駅と、裾野から海を見下ろす駅。北海道の山と海が生み出した美しい光景を、それぞれの駅で見つけた。

■連載「海の見える駅 徒歩0分の絶景」は、アマチュア写真家の村松拓さんが、海のそばにある駅で撮った写真を紹介しながら、そこで出会ったこと、感じたことをつづります。

山肌を背景にカモメが舞う、森駅

駅弁の「いかめし」が有名なJR函館線の森駅。実は、海のすぐそばにある駅でもある。

2013年3月、札幌と函館を結ぶ特急「北斗」に乗って森駅を訪ねた。森駅は、北海道森町の玄関口にあたる駅で、すべての特急列車がとまる有人駅。海の見える駅としては、にぎやかなほうだ。

十数人の乗客に混じって降り立つと、頭上からはいきなり、カモメたちの声。目線を下ろせば、まぶしい残雪と、噴火湾の海面が広がっていた。

名峰のふもとで見つけた海と山の美景  北海道の森駅と渡島砂原駅

噴火湾(内浦湾)は、渡島半島にぐるりと囲まれた、直径約50kmの巨大な湾。森駅から対岸の陸地はほとんど見えず、ひたすらに水平線が続く。波は終始穏やかで、いくら見つめていても、カモメと遠くの漁船以外に、景色がほとんど動かない。森駅の広く殺風景な構内と相まって、少しもの寂しげな絵画のようにも見えた。

だが、駅舎へと渡る跨線橋(こせんきょう)に上ると、眺望は一変。跨線橋の窓に北海道駒ヶ岳が見えた。しかも、かなりの迫力だ。

名峰のふもとで見つけた海と山の美景  北海道の森駅と渡島砂原駅

標高1,131mの頂には雪を冠し、なだらかな裾野はそのまま噴火湾の水平線へと続く。よく見れば、カモメたちが山肌を背景に、のびのびと舞っている。

名峰のふもとで見つけた海と山の美景  北海道の森駅と渡島砂原駅

スケールの大きな海と山が、ひとつの視界で融(と)け合う光景。それが、街の駅の日常として存在する。森駅には、「いかめし」だけでは到底語りきれない魅力があった。

北海道新幹線・新函館北斗駅から特急「北斗」で約27分。

JR北海道
https://www.jrhokkaido.co.jp/network/station/station.html#444

古い木造駅舎が海を見下ろす、渡島砂原駅

森駅から函館線で東(函館方面)に4駅。渡島砂原(おしまさわら)駅という小さな無人駅からも、海が見える。

こちらを訪れたのは、すっかり春めいた2018年4月下旬。広々としたホームを見渡す限り、人の姿も、街らしい建物も、ほとんど見えない。森駅とは対照的だ。代わりに、高原の森のように、背のそろった木々が駅を囲んでいる。

そんな景色のアクセントとなっていたのが、赤い屋根の古い木造駅舎だ。

名峰のふもとで見つけた海と山の美景  北海道の森駅と渡島砂原駅

屋根は均一に鮮やかな緋色(ひいろ)。だが、窓のサッシは木製のままで、壁や柱の塗装はところどころ剥がれている。渡島砂原駅が現在の場所で開業したのは、1945(昭和20)年 。銘板こそ確認できなかったが、開業当時からの駅舎といわれてもうなずける外見をしている。

名峰のふもとで見つけた海と山の美景  北海道の森駅と渡島砂原駅

駅舎の脇に立つと、ちょうど噴火湾が見えた。北海道駒ヶ岳の裾野にある渡島砂原駅は、標高およそ35m。噴火湾を見下ろすような格好になり、海の青がより広く見える。今にも朽ちそうな木造駅舎と、噴火湾。決して広々とした眺望ではないが、時の流れと地形が生み出した偶然の組み合わせに、思わず目を奪われる。

駅舎の内部も古いまま。何十人と座れそうなベンチが置かれているが、私がこの駅にいる間は、誰も腰掛けることはなかった。

名峰のふもとで見つけた海と山の美景  北海道の森駅と渡島砂原駅

最後に、駅の外へ。駅前の国道に出てふり返ると、ホームでは木々に隠れていた北海道駒ヶ岳が現れた。

名峰のふもとで見つけた海と山の美景  北海道の森駅と渡島砂原駅

煙突の伸びる木造駅舎と、背後に続く森と、巨大な山。電線や真新しいポストを除けば、そこに現代的な要素はない。「昔と同じ景色を、きっと今この目で見ているんだ」――そう思うと、別れるのが惜しく思えてきた。

全国にはまだいくつもの木造駅舎が残るが、あと何年残り続けるかはわからない。渡島砂原駅に停まる列車は、上下合わせて1日にわずか12本の普通列車のみ(2020年7月現在)。森駅と比べて、列車で訪れやすいとはいえないし、次にいつ降りられるかもわからない。

この景色に出会えた喜びを抱きながら、帰りの列車がやってくるまで、何度も、何度もシャッターを切った。

北海道新幹線・新函館北斗駅から普通列車で約64分。

JR北海道
https://www.jrhokkaido.co.jp/network/station/station.html#4166

BOOK

名峰のふもとで見つけた海と山の美景  北海道の森駅と渡島砂原駅
海の見える駅
海の見える駅を巡る村松拓さんの旅をまとめたガイドブックです。これまでに訪問した約300駅の中から70カ所を選び、駅の写真、簡単な説明とともに紹介しています。
雷鳥社 
定価:1500円(税別)

PROFILE

村松拓

アマチュア写真家
1991年1月生まれ。川崎市出身。
2004年の夏休み、初めての一人旅で見た常磐線の車窓が忘れられず、2005年に末続駅(福島県いわき市)を訪問。それから海の見える駅の旅を始め、これまでに約300駅を取材。2006年にWebサイト「海の見える駅」を開設。現在は東京・新橋で会社員として働く傍ら、余暇で旅を続ける。著書に『海の見える駅』(雷鳥社・2017年)。

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