旅空子の日本列島「味」な旅

北前船交易で殷賑を極めた港町 富山市・岩瀬

江戸時代、城下町としてひらけた富山市。その面影は駅の南約1キロ、堀や石垣、御門の残る城跡に天守閣などを再建した城址(じょうし)公園にしのばれる。

とはいえ今はコンパクトシティーを目指して市内電車やバスなど公共交通網を整備。今年3月21日に市内南部と北部を走る線路が富山駅でつながり、念願の南北直通運転が始まっている。

北前船交易で殷賑を極めた港町 富山市・岩瀬

車両

その工事が進行中の昨年、北前船の寄港地・船主集落で大いに栄えた岩瀬を訪ねた。旧国鉄時代の富山港線である。

東岩瀬で下車して徒歩で3~4分。大町新川町通り(旧北国街道)には、本瓦ぶき、大戸(おおど)、出格子、塗り籠(ごめ)壁、袖壁などの江戸時代から明治にかけての町家や問屋など広壮な屋敷が連なっていた。

大町新川町通り

趣ある建物が連なる大町新川町通り

聞けば1873(明治6)年の大火では1千戸のうち650戸が焼失。有力な回船問屋はほどなく再建に取り掛かるなど当時の建築様式を引き継ぐ建物で町が復興したという。

その象徴的な家が海商で鳴らした「北前船廻船問屋 森家」。1878(明治11)年に建てられた豪壮な木造2階建てで、母屋、道具蔵など建坪は80坪余り。背後の船着き場まで抜ける通り庭、みごとな木組みの吹き抜けの梁(はり)、囲炉裏の間、広々とした座敷が財の大きさを物語る。国の重要文化財の指定を受けている。

「北前船廻船問屋 森家」

岩瀬繁栄の証し「北前船廻船問屋 森家」

通りには北前船ルート有数の回船問屋の馬場家などの建物が点在。造り酒屋の桝田酒造店、三角どらやきの大塚屋、御休処政太郎、重厚で繊細な料亭の松月など殷賑(いんしん)を極めた名残が今もしっとり宿って、タイムスリップさせられる。

三角どらやき

食べやすくカットした大塚屋の三角どらやき

白えびのうどん

御休処政太郎で食べた白えびのうどん

建物や蔵を活用してランチやカフェ、ガラスや陶芸工房、食事処などもある。その一つの政太郎の座敷で庭を眺めながら、富山湾特産の白えびの天ぷらうどんで腹ごしらえをした。

松月

白えび料理など磯料理の老舗料亭・松月

そのあと、古い街並みの背後に立つかつての常夜灯を模したという富山港展望台に上った。眼下に岩瀬の家並み、神通川河口、富山湾、能登半島が見渡せた。快晴ならば立山連峰も眺められるという。

展望台

高さ20メートル、港や海が見渡せる展望台

この先、岩瀬運河沿いの散策路を歩いて、ほとりの岩瀬カナル会館に立ち寄った。シーフードレストランや物産販売、運河クルーズの富岩水上ラインの船も発着。運河の前方にびょうぶのように並び立つ立山連峰の一等展望地でもあった。

〈交通〉
・富山駅から富山地方鉄道の電車で21分、東岩瀬下車
〈問い合わせ〉
・富山市観光協会 076-439-0800
・富山市観光政策課 076-443-2072 

※都道府県アンテナショップサイト「風土47」より転載。

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PROFILE

中尾隆之

中尾隆之(なかお・たかゆき)ライター
高校教師、出版社を経てフリーの紀行文筆業。町並み、鉄道、温泉、味のコラム、エッセイ、ガイド文を新聞、雑誌等に執筆。著作は「町並み細見」「全国和菓子風土記」「日本の旅情60選」など多数。07年に全国銘菓「通」選手権・初代TVチャンピオン(テレビ東京系)。日本旅のペンクラブ代表・理事、北海道生まれ、早大卒。「風土47」でコラムを連載中。

城下町の歴史の中にいで湯と文学が香る町 愛媛県・松山市

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