おうちで作る旅先の味

バリ島ジンバランの魚市場で感動した、焼きサバの「サンバル」添え

さほど遠くない距離だから、とジンバランの魚市場まで歩こうと思ったのが間違っていた。10分もたたないうちに雲が晴れて、汗が噴き出す。所々にある木陰をつたいながら、日焼けの跡がつかないように、シャツの袖を肩までたくし上げた。

■連載「おうちで作る旅先の味」は、ライターの太田瑞穂さんが、旅の思い出をつづりつつ、心に残ったご当地料理を、現地の人に教わったレシピで作って紹介します。

暑さに閉口しながら魚市場へ歩く

バリ島ジンバランの魚市場で感動した、焼きサバの「サンバル」添え

海には一面に浮かぶ色あざやかな小舟、そして浜辺の木陰では漁師が船の手入れをしていた

ビーチが一望できるベンチで一息つくと、穏やかな潮風が肌を優しくなでる。隣に座っていた老人はあいさつ代わりに軽くうなずくと、そのまま青白色の海一面にちりばめられた小舟をじっと見つめている。私も同じように海を眺めてみた。時折桟橋を行き来する以外、船は緩やかな寝息をたてるように、海面を上下するのみだ。

インドネシア・バリ島にある美しいビーチに隣接したジンバランの魚市場はトタンで覆われ、薄暗く、狭い通路の両端にぎっしりと魚が並んでいる。商品を傷めないよう氷がたくさん使われているからか、屋内は思っていたよりひんやりとしていた。イワシやサバ、イカにエビなど私たちにもなじみのある魚から、カジキのような大型のもの、南国らしい色とりどりの魚やロブスターなど種類が豊富で、どれもピチピチと新鮮だ。

バリ島ジンバランの魚市場で感動した、焼きサバの「サンバル」添え

魚市場にはなじみの魚がズラリと並ぶ

調理してもらったサバに添えられていた「サンバル」

店主が客の注文に応じておろしていた魚は、包丁を入れるとはち切れんばかりに身がそり上がり、なんともおいしそうだ。市場の外に調理してくれる場所があると聞いて、大きなサバを1匹購入した。

バリ島ジンバランの魚市場で感動した、焼きサバの「サンバル」添え

客の注文に沿って魚に包丁を入れる店主

薄暗い市場から出ると、あちこちから魚を焼くおいしそうな煙が漂ってくる。どこで焼いてもらおうか迷いながらぐるぐると歩き回り、結局最初に見た店の少年にサバの袋を渡すと、手際良く内臓を取り出し、タレにつけて炭火で焼いてくれた。

バリ島ジンバランの魚市場で感動した、焼きサバの「サンバル」添え

市場で買ったサバを目にもとまらぬ速さでさばいて焼いてくれた

魚が焼けるまでココナツ水を飲みながら、向かいのテーブルで気長に待つ。注文すると、大きななたでココナツに豪快に穴を切り込んでくれるのだが、なたが少しでもずれれば押さえている腕が飛んでいきそうで、見ているこちらがドキドキする。

バリ島ジンバランの魚市場で感動した、焼きサバの「サンバル」添え

炭火で焼いたサバは、サンバルにつけて手で食べる

20分ほどで、こんがりと焼けた魚が、赤いソースとともに到着した。フォークもナイフもなく、焼きたての熱々を手で食べる。調理してくれた少年が無造作に入れているように見えた切り込みから、身がきれいにほぐれていく。ピリ辛のソースには程よい酸味があり、脂ののったサバのうまみがぐっと押し出され、口に運ぶ手が止まらない。ヤシの木陰で優しい潮風を感じながら、なんともぜいたくで満たされた気分になった。

バリ島ジンバランの魚市場で感動した、焼きサバの「サンバル」添え

のんびりと海辺で食べる魚は最高だ

アリアサシェフのレシピをアレンジしてみた

2017年に訪れた時に食べたこのサバの味が忘れられず、以前お世話になった、バリ島でホテルを運営する「ライフスタイル・リトリーツ」の湖尻めぐみさんに相談すると、料理教室で教えているリゾートホテル「ザ・ムンジャンガン」のシェフ、プトゥ・アリアサさんのレシピを送ってくださった。観光者向けのこの料理教室では、私もシーフードスープやバナナフリッターの作り方を教えてもらったが、見たことのない現地の食材にも触れられて興味深かった。バリ島を訪れるお料理好きにはぜひオススメしたい。

バリ島ジンバランの魚市場で感動した、焼きサバの「サンバル」添え

サンバルの作り方を教えてくれたシェフ、プトゥ・アリアサさん(右、写真はアリアサさん提供)

サバに添えられていたソースは、「サンバル」というインドネシア料理には欠かせないソースで、数え切れないほどの種類があるそうだ。アリアサシェフから届いたレシピは、市場で食べたサバに添えられていた(と思われる)赤い「サンバル・バジャック」と、バリ島特有の「サンバル・マター」の2種類。

しかし、旅先の味はいつもそのままそっくりに再現できるとは限らない。材料が日本でそろわない場合はなおさらだ。サンバルの材料は、インドネシアでは日常的でも日本では手に入りにくいものも多い。そのため、アリアサシェフのレシピを元に、日本でも手に入れやすい材料にアレンジして、ジンバランで食べた味に近くなるよう調整してみた。

試行錯誤を重ねつつ出来上がったサンバルを味見してみると、「そうそう、この味!」と、あのビーチでの感動がよみがえってきた。驚くほどシンプルながら、色々な料理との相性が良く、なんともオールマイティーなソースだ。せっかくなので、アリアサシェフのレシピも併せて紹介したい。

バリ島ジンバランの魚市場で感動した、焼きサバの「サンバル」添え

材料を並べてみた

<サンバル・マター>
―材料―
紫タマネギ(薄切り) 1/3個分
レモン果汁 1/2個分
ライム果汁 1/2個分
赤唐辛子(輪切り) 1本
ココナツオイル 大さじ2
ナンプラー 数滴
塩 小さじ1/4

材料を全て混ぜ合わせる。
*ココナツオイルは融点が25℃程度なので、冷蔵庫に入れると固まってしまう。サンバル・マターを冷蔵庫で保存する場合は、食べる前に容器ごとお湯に5分ほどつけてココナツオイルをとかす。

<サンバル・バジャック>
―材料―
紫タマネギ 1/4個
レモン果汁 1/2個分
トマト 1個
赤ピーマン 1/4個
赤唐辛子 1本
にんにく 2片
ショウガ 約3cm分
油 大さじ2
塩 小さじ1/4
きび砂糖 小さじ1/2

1. 紫タマネギ、トマト、赤ピーマン、赤唐辛子、ニンニク、ショウガはざく切りにする
2. フライパンを中火にかけて油を入れ、1をしんなりするまで炒め、最後にレモン果汁を加える
3. 2をミキサーに入れ、塩と砂糖を加えてピュレ状にする

※生の赤唐辛子の旬は秋なので、手に入らない時期は乾燥した赤唐辛子をぬるま湯に30分浸したもので代用。辛さが苦手な方は種を取って使うのがオススメ。もっと辛い方がよければ、味見をしながら唐辛子の量を増やす。

バリ島ジンバランの魚市場で感動した、焼きサバの「サンバル」添え

サンバル・マター(左)とサンバル・バジャック(右)


バリ島ジンバランの魚市場で感動した、焼きサバの「サンバル」添え

サバの塩焼きに添えると、びっくりするようなおいしさ


バリ島ジンバランの魚市場で感動した、焼きサバの「サンバル」添え

サンバルをちょっと添えるだけでぐっとうまみが増すので、色々な料理と合わせてみてほしい。写真は、酒蒸しにした鶏のササミ、焼いた厚揚げ、野菜のグリル。「カリカリに揚げた豚肉とも合いますよ!」と湖尻めぐみさん

<(参考)アリアサシェフのレシピ>
【サンバル・マター】
シャロット(薄切り)200g、レモングラス(薄切り)50g、赤唐辛子(薄切り)100g、エビペースト(から煎り) 2g、ココナツオイル50mL、塩1g、ライム果汁1個分
【サンバル・バジャック】
シャロット(皮をむく)100g、レモングラス50g、赤唐辛子100g、にんにく(皮をむく)50g 、油50mL、トマト 100g、ショウガ10g、ガランガル10g、バンウコン5g、塩1g、パームシュガー5g
作り方は上記と同じ。
*このレシピで使われている「赤唐辛子」は辛みの強くないタイプとのこと

【取材協力】
ライフスタイル・リトリーツ
https://www.lifestyleretreats.com

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PROFILE

太田瑞穂

ライター、翻訳&通訳。旅先でその土地の日常的な暮らしやそこに根付く文化を少しだけ体験するのが好き。

熱々を手づかみで食べるジョージアの水ギョーザ、ヒンカリ

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シンプルだけど味わい深い おまじないのような名の「シャクシューカ」

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