クリックディープ旅

西表島でバス停を西へ南へ 沖縄の離島路線バスの旅5

下川裕治さんが沖縄の離島の路線バスを乗り尽くす旅。前回の竹富島を終え、今回は大きな川やマングローブ、水牛車もある西表島を、下川さんたちがバスで疾走します。

本連載「クリックディープ旅」(ほぼ毎週水曜更新)は、30年以上バックパッカースタイルで旅をする旅行作家の下川裕治さんと相棒の写真家・阿部稔哉さんと中田浩資さん(交代制)による15枚の写真「旅のフォト物語」と動画でつづる旅エッセーです。

(写真:中田浩資)

沖縄の離島旅・西表島

西表島バス系統図

沖縄の離島の路線バスを乗り尽くす旅。八重山諸島に渡り、石垣島、竹富島、西表島などの路線バスに乗る旅がはじまった。最初に竹富島のバスに乗り、いったん石垣島に戻った。そして翌日、西表島に向かう。

西表島は石垣島より大きいが、バス路線は単純。島を一周する道路はなく、海岸線に沿った道を往復するスケジュールが組まれていた。

石垣島から西表島に高速船で向かった。

長編動画


深い緑がバスの車窓に迫ってくる。西表島の魅力はこの森。そしてときおり目にする川岸のマングローブ。そんな車窓風景を。

短編動画


石垣島からの高速船が着く上原港周辺の風景を。観光客は森やビーチに向かい静かな時間が流れている。

今回の旅のデータ

石垣島から西表島へは、石垣港離島ターミナルから高速船利用が一般的。上原港と大原港行きという2路線があることが強みだ。沖縄は風が強く、港に接岸できないことがあるが、港がふたつあるため、どちらかを利用することができ欠航率が少ない。上原港、大原港まで現在はそれぞれ1日7便。上原港へは片道約1時間で往復運賃は3970円、大原港へは片道約50分で往復運賃は3040円。安栄観光と八重山観光フェリーの2社の運航。

沖縄の離島旅・西表島「旅のフォト物語」

Scene01

乗船券売り場

石垣港離島ターミナルの高速船乗船券売り場も、新型コロナ対策で大きなビニールシートがつるされていた。そこがライトを反射し、妙に明るい。安栄観光と八重山観光フェリーのカウンターがあり、少し迷った。聞くと、2社の乗船券は共通。どちらの会社の船にも乗ることができる。だったら、売り場はひとつでも……。

Scene02

バス停

その日は西表島に泊まるつもりだったので、民宿の多い上原港路線を選んだ。船が上原港に着くと、宿のスタッフが宿名や宿泊者名の書かれたボードや紙を掲げていた。観光客は皆、宿のワゴン車に吸い込まれていく。島の人たちは自分の車に。僕と中田浩資カメラマンの行き先? 誰もいないバス停です。

Scene03

バス

西表島のバスは西表島交通の運行。定刻に立派なバスが姿を見せた。運賃は先払い制で、島の北西側にある終点の白浜まで570円。お得なチケットがあることを知らなかった僕らは、代金を払ってしまった。もっと事前に調べなくてはいけなかった。お得なチケットは白浜に着いて知らされる。それはScene06で。

Scene04

「日本最西端のバス停」の表記

終点の白浜に着いた。約30分のバス旅。バス停には、「日本最西端のバス停」の表記。西表島の西には与那国島があり、そこにもバスが走っている。これって間違い? 与那国島のバスは町が運営する無料バス。バス会社が運行する一般のバスとは違う。そういう注釈を含んで、最西端ということか。

Scene05

船

白浜から先に車が走ることができる道はない。先にあるのが船浮(ふなうき)。人口が約50人ほどの集落だ。そこへの足は、白浜から向かうこの船だけ。約10分ほどで着くという。船でしか行くことができない「陸の孤島」のイメージが人気で、船の待合室には観光客の姿もあった。

Scene06

1日フリー乗車券

白浜の南東の豊原をめざす。「路線バスに全部乗ろうとしてるんです」と伝えると、運転手さんが、「どうしてこの切符買わないの?」ととりだしたのがこの1日フリー乗車券。1050円。豊原まで1470円だから、それだけで元がとれてしまう。まさに僕ら向き? バス停に大きく書いておいてくれたら、白浜まで570円を払わずにすんだのに……。

Scene07

看板

西表島は大きい。面積は約289平方キロ。白浜から豊原まで、島の海岸線を島の約半周強走ることになる。所要時間は1時間40分ほど。途中、「スピードの出しすぎに注意」看板をしばしば見かけるが、よく見ると、イリオモテヤマネコを守るためのものが多い。「人よりヤマネコのほうが大事さー」は島ではよく聞くジョーク。

Scene08

水牛車

バスは海岸に沿った道を快調に進む。白浜から1時間10分ほど乗ると由布水牛車乗場のバス停。ここでしばらく停車する。西表島の海岸から400メートルほど沖にある由布島という小島を水牛車に乗って訪ねるコースは、西表島の一大観光。戻りつつある観光客を乗せる水牛車も念入りに消毒。

Scene09

仲間川

バスはときおり川を越える。これは仲間川。マングローブの原生林ツアーの発着点は、橋のたもと。小型船が何隻も止まっている。ほかにピナイサーラの滝、トレッキング……など西表島はエコツアーの島。しかし僕は……。西表島には数回、訪ねているが、いつも島の人や移住組と会っていてツアーには無縁。そして今回はバス旅。

Scene10

定食

豊原に着いた。これで西表島の全路線に乗ったことになる。ちょうど昼どき。しかし豊原バス停付近を歩いても、食堂はもちろん、売店ひとつない。と、一般住宅にのぼりが。引き戸を開けると座敷。そこが食堂でした。ミーバイという魚の天ぷら定食。850円。店の名前は、「モーリーとはっちゃん」。

Scene11

「日本最南端のバス停」

豊原バス停には、「日本最南端のバス停」。西表島の南には波照間島があるのだが。実は前夜、波照間島の民宿に電話をかけまくっていた。民宿運営の有償バスがあるという情報があったのだ。しかしバスは故障中だった。で、正真正銘の最南端バス停。バス会社が運行というカッコ付きだが、最西端バス停から最南端バス停まで走破。ちょっとうれしい。

Scene12

運転手さん

上原港→白浜、白浜→豊原、豊原→上原と西表島の路線バスに乗った。どういう編成なのかはわからないが、ずっと同じ運転手さんだった。児玉清光さん、69歳。本土から移住した方だった。豊原からマスクをしていない女性客が乗ってきた。児玉さんは自分の予備のマスクを手渡していた。運転手さんも気を遣っています。

Scene13

米

西表島は、いまは根絶されたがかつてマラリアに苦しんだ島。ほかにも、石炭の採掘、戦後は戦場になった沖縄本島からの開拓民の入植……そんな歴史を秘めている。そしていまは、本土からの移住者が多い。農業、織物、陶芸……。気温が高く、豊富な水が米の二期作を可能にしている。古代米のひとつといわれる米がいまは島の人気お土産。

Scene14

宿

上原港周辺で宿を探したが……。オープン準備中が3軒。再開した土木工事の関係者で埋まった宿、宿泊者を制限していて満室など、なかなか空室がみつからない。8軒まわって諦めた。石垣島に戻る夕方の高速船を待ちながら、石垣島とその先の離島の時差を感じていた。竹富島と同じように。

Scene15

ホワイトボード

上原港のターミナルのなかに、こんなホワイトボードが。カンムリワシ、リュウキュウイノシシ、セマルハコガメなど、西表島に生息する動物の名前が書きこまれている。西表島のワイルド感、伝わってきます。そして、「子猫事故死6件目」。イリオモテヤマネコの子猫だ。

※取材期間:2020年6月28日
※価格等はすべて取材時のものです。

【次号予告】次回は与那国島のバス旅を。

■「台湾の超秘湯旅」バックナンバーはこちら
■「玄奘三蔵の旅」バックナンバーはこちら
■ 再び「12万円で世界を歩く」バックナンバーはこちら

BOOK

西表島でバス停を西へ南へ 沖縄の離島路線バスの旅5
12万円で世界を歩くリターンズ
[タイ・北極圏・長江・サハリン編] (朝日文庫)
リターンズ第二弾では、タイと隣国の国境をめぐり、北極圏を北上し、長江をさかのぼる旅へ、予算12万円で約30年前に旅したルートをたどる。さらに「12万円でサハリンに暮らす」ことにも挑戦。旅は、世界はどう変わったか?
朝日文庫
3月6日発売
定価:770円(税込み)

PROFILE

  • 下川裕治

    1954年生まれ。「12万円で世界を歩く」(朝日新聞社)でデビュー。おもにアジア、沖縄をフィールドに著書多数。近著に「一両列車のゆるり旅」(双葉社)、「週末ちょっとディープなベトナム旅」(朝日新聞出版)、「ディープすぎるシルクロード中央アジアの旅」(中経の文庫)など。最新刊は、「12万円で世界を歩くリターンズ 【タイ・北極圏・長江・サハリン編】」 (朝日文庫)。

  • 中田浩資

    1975年、徳島県徳島市生まれ。フォトグラファー。大学休学中の1997年に渡中。1999年までの北京滞在中、通信社にて報道写真に携わる。帰国後、会社員を経て2004年よりフリー。旅写真を中心に雑誌、書籍等で活動中。

観光客が戻りつつある竹富島へ 沖縄の離島路線バスの旅4

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「日本最西端」があふれる与那国島 沖縄の離島路線バスの旅6

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