クリックディープ旅

「日本最西端」があふれる与那国島 沖縄の離島路線バスの旅6

下川裕治さんが沖縄の離島の路線バスを乗り尽くす旅。前回は西表島を走破。今回はいろんな「日本最西端」がある与那国島へ。バスの乗車時間を最優先にして、飛行機での与那国入りを決めたのですが……。

本連載「クリックディープ旅」(ほぼ毎週水曜更新)は、30年以上バックパッカースタイルで旅をする旅行作家の下川裕治さんと相棒の写真家・阿部稔哉さんと中田浩資さん(交代制)による15枚の写真「旅のフォト物語」と動画でつづる旅エッセーです。

(写真:中田浩資)

沖縄の離島旅・与那国島1

与那国島バス系統図

主に文章に登場する停留所名を記載するなど、簡略化しています

沖縄の離島──。そこを走る路線バスを乗り尽くす旅は続く。八重山諸島の竹富島、西表島の路線バスを乗り終え、与那国島へ。安いフェリーで往復する日程を組み、その前夜、石垣島の安い宿で与那国島のバス路線を確認してみた。バスは8の字のような路線を走っていて、どこかで乗り、ただ座っていれば戻ってくる。簡単に乗り尽くせる……と、大船に乗った気分で時刻表に視線を走らせた。フェリーが与那国島の久部良港に着くのは午後2時半ごろ。それから乗ることができるバスをみると、どうしても空港から久部良港間が未乗車区間として残ってしまう。翌朝にその区間に乗ると石垣島に戻るフェリーに間に合わない。フェリーは週2便しかない。片道は飛行機に乗るしかなかった。

長編動画


久部良集落のはずれにある「日本最後の夕日が見える丘」からの夕日をじっくりと。6月30日、日本最後の夕日です。

短編動画


断崖の上につくられた道に牧場の馬が集まってくる。島を一周する与那国生活路線バスから。馬優先です。

今回の旅のデータ

石垣島から与那国島へはフェリーと飛行機がある。フェリーのいまのスケジュールは、石垣島発が火曜日と金曜日、与那国島発が水曜日と土曜日。それぞれ午前10時発で、所要時間は天候に左右されるが4時間から4時間半。運賃は片道3610円。飛行機は那覇から1日1便、石垣から1日2~3便。運賃は買う時期や販売会社によって違うが、朝10時発の便を搭乗前日の夜に買って片道1万950円だった。

沖縄の離島旅・与那国島「旅のフォト物語」

Scene01

飛行機からの風景

石垣島から与那国島までは30分ほどのフライト。琉球エアコミューターなど日本航空グループの運航。本土や那覇から石垣への飛行機は、新型コロナウイルスの影響で減便されることが多いが、石垣から与那国まではあまり影響を受けていない。フェリーが週2便だから、飛行機は与那国島の人たちにとっては生活の足。それにしては高い?

Scene02

バス停

バス停は与那国島の空港を出た右手に。しかし時刻表が貼られたボードは、強風にあおられたのか、草むらに転がっていた(写真中央)。のぞくように時刻表を眺めた。違う。前夜、確認した時刻表が古かったらしい。新しいスケジュールなら、フェリーで往復しても大丈夫だった。運賃が高い飛行機に乗らなくても……。与那国島の青空を仰いだ。

Scene03

車窓

やってきたバスに乗り込む。このバスは与那国生活路線バスと呼ばれる無料バス。島民以外も無料で利用できる。車内で時刻表を再度確認する。フェリー往復でもバスは乗り尽くせるが、役場で写真を提供してもらうことになっていた。その時間がない。やはり片道は飛行機を利用するしかなかった。その写真はScene14で。

Scene04

スナック

バスは祖納(そない)の集落に向かって進む。アイランドホテル、製糖工場というバス停を通過し、嶋仲。古いパンフレットの時刻表には、(スナック来恋前)という表示も。なんと読む? ファインダーをのぞいていた中田浩資カメラマンが、「『こいこい』ってルビがふってあります」。バス停に表示するほど有名なスナックなのだろうか。

Scene05

与那国そば

祖納のバス停から見えた「てんだ花」という店で、与那国そばの昼食。ソーキと三枚肉が載ったバージョンで700円。入り口脇には、「宇宙放送社」の看板。かつてここから島内有線放送が発信されていたという。その建物を改装して、食堂兼カフェに。メニューの「長命草ケーキ」はなかったが、ご主人が店の脇に案内してくれた。次の写真で。

Scene06

長命草

木陰のこの草を指さして、「長命草」とご主人はあっさりと。そこかしこに自生しているという。長命草はポリフェノールやビタミンが豊富で、資生堂が青汁を販売するほど。以前、与那国島を訪ねたときは、専用の畑も見学させてもらった。島ではありきたりの草。専用の畑の長命草は含有成分が多いのだろうか。

Scene07

祖納

次のバスがくるまで祖納の集落を歩いてみる。竹富島ほど整備はされていないが、沖縄らしい風景が続いていた。以前、与那国島の言葉とアイヌ民族の言葉には共通する言葉が多いと聞いて、祖納の集落で何人かの老人に会ったことがある。老人の言葉の10パーセントもわからず、途方に暮れたことを思い出した。

Scene08

汚水桝のふた

与那国島は日本最西端。後に訪ねる久部良が最西端の集落になるのだが、島内には最西端の文字がそこかしこに。タクシー会社は最西端観光。最西端の郵便局、最西端の酒造所……。祖納の集落を歩きながら、路上にも最西端を見つけてしまいました。汚水桝(ます)のふた。そこにも最西端の刻印。

Scene09

海

祖納の漁港はひっそりとしていた。以前、この港の近くに与那国民俗資料館があった。そこで与那国の昔話を聞いた。戦前、与那国島の人々は、しばしば台湾に買い物に行ったという。女の子たちは、台北で着物を買ってもらうことが楽しみだったという。与那国島は台湾まで100キロ強。沖縄本島よりはるかに近い。

Scene10

祖納のバス停

祖納のバス停に戻り、与那国生活路線バスを待つ。午後1時のバスに乗ると、50分ほどで島のすべての路線を通って祖納に戻ってくる。フェリーで到着していたら、こう簡単にはいかない。やはりバスの運行も飛行機のスケジュールに合わせている。夏至をすぎたばかりの与那国島の日差しは強烈。日なたではとてもバスを待てません。

Scene11

馬

与那国生活路線バスに乗り、未乗車区間を乗りつぶしていく。島の南西、南牧場付近の道は海沿い。ときに断崖の上を走る。そこに牧場の馬が。与那国島は与那国馬という日本在来馬が知られている。しかしこの牧場の馬は純血種ではないとか。ここに集まる理由。「海からの風が吹きあげ、涼しいかららしい」と運転手さんが説明してくれた。

Scene12

志木那島診療所

50分ほどで島を一周。与那国島のバス路線を乗り尽くした。翌日、フェリーが出る久部良港まではタクシーを使った。途中、テレビドラマ「Dr.コトー診療所」のロケに使われた志木那島診療所に寄ってもらった。ドラマ用につくられた建物で、見学料は300円。スタッフは誰もいなかったので、料金箱に投入して写真を撮らせてもらった。

Scene13

「日本最後の夕日が見える丘」の碑

久部良港の集落に着いた。「日本国最西端之地」の碑とは久部良港を挟んで反対側にある「日本最後の夕日が見える丘」の碑に向かう。「日本国最西端之地」の碑付近から眺める夕日も日本最後だとは思うが、まあ、そのへんは最西端に免じてといったところ。日本最後の夕日は長編動画でたっぷりとご覧ください。

Scene14

与那国島から見た台湾

与那国島からは台湾が見える……のは年に数回。つまりほとんど見えない。で、与那国町役場から写真を提供してもらった。台湾は大陸のよう。台湾側は蘇澳(スーアオ)。その街から与那国島方向に目を凝らしたことがある。なにも見えなかった。街の人も見たことがないという。大きい島から小さな島は見えないってこと? 

Scene15

カジキマグロの刺し身と長命草の白あえ

久部良港はカジキマグロ漁で知られている。ここまできたら……。集落のなかの海響(いすん)という居酒屋で、カジキマグロの刺し身(700円)と長命草の白あえ(写真上。450円)という与那国島づくし。店に入ったのはやっと暗くなった夜の8時すぎ。最西端の集落は、暗くなるのも日本でいちばん遅い。あたり前ですが。

※取材期間:2020年6月30日
※価格等はすべて取材時のものです。

【次号予告】次回は与那国島から石垣島のバス旅を。

■「台湾の超秘湯旅」バックナンバーはこちら
■「玄奘三蔵の旅」バックナンバーはこちら
■ 再び「12万円で世界を歩く」バックナンバーはこちら

BOOK

「日本最西端」があふれる与那国島 沖縄の離島路線バスの旅6
12万円で世界を歩くリターンズ
[タイ・北極圏・長江・サハリン編] (朝日文庫)
リターンズ第二弾では、タイと隣国の国境をめぐり、北極圏を北上し、長江をさかのぼる旅へ、予算12万円で約30年前に旅したルートをたどる。さらに「12万円でサハリンに暮らす」ことにも挑戦。旅は、世界はどう変わったか?
朝日文庫
3月6日発売
定価:770円(税込み)

PROFILE

  • 下川裕治

    1954年生まれ。「12万円で世界を歩く」(朝日新聞社)でデビュー。おもにアジア、沖縄をフィールドに著書多数。近著に「一両列車のゆるり旅」(双葉社)、「週末ちょっとディープなベトナム旅」(朝日新聞出版)、「ディープすぎるシルクロード中央アジアの旅」(中経の文庫)など。最新刊は、「世界最悪の鉄道旅行 ユーラシア大陸横断2万キロ」 (朝日文庫)。

  • 中田浩資

    1975年、徳島県徳島市生まれ。フォトグラファー。大学休学中の1997年に渡中。1999年までの北京滞在中、通信社にて報道写真に携わる。帰国後、会社員を経て2004年よりフリー。旅写真を中心に雑誌、書籍等で活動中。

西表島でバス停を西へ南へ 沖縄の離島路線バスの旅5

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与那国島からいよいよ乗り込む石垣島 沖縄の離島路線バスの旅7

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