京都ゆるり休日さんぽ

アートとクラフトと音楽と。旅先で心豊かに過ごす「エースホテル京都」

京都に残る近代洋建築の一つで、旧京都中央電話局の意匠を保存し、複合商業施設として活用する「新風館」。さまざまなショップやレストラン、映画館などが入居するなか、アメリカで誕生しアジア初上陸としてひときわ注目されているのが「エースホテル京都」です。新型コロナウイルスの影響でオープンが約2カ月延期され、今夏6月にプレオープンを迎えたところ。早くもアートと文化の発信地になりつつある、「エースホテル京都」を早速訪ねました。

■暮らすように、小さな旅にでかけるように、自然体の京都を楽しむ。連載「京都ゆるり休日さんぽ」はそんな気持ちで、毎週金曜日に京都の素敵なスポットをご案内しています。
(文:大橋知沙/写真:津久井珠美)

東西のアート&クラフトが出合う場所を、京都の街の接点に

エースホテルロビー

24時間誰にでも開かれたロビーエリアは、宿泊客以外も利用可能。「新風館」の買い物の合間に立ち寄る人も

点と線が幾重にも交差するような照明が、吹き抜けの空間の頭上に瞬きます。ホテルのロビーエリアでは、朝食をとる宿泊客や、コーヒーを片手にPCを開く人、おしゃべりを楽しむ人々の姿。アメリカ・ポートランドのコーヒーショップ「スタンプタウン・コーヒー・ロースターズ」のシグネチャーである濃紺のポットのタペストリーは、染色作家・柚木沙弥郎(ゆのきさみろう)氏が手がけました。

コーヒーとドーナツ

コーヒーはポートランドのロースターから届く新鮮な豆を使って。和の素材を使ったペストリーも豊富。「カプチーノ」(480円)「ドーナツ YUZU&LEMON」(350円)。いずれも税別

スタンプタウン・コーヒー・ロースターズ店内

「スタンプタウン・コーヒー・ロースターズ」の店内。信楽焼のタイルや韓国の布工芸・ポジャギから着想を得た、アダム・ポーグ氏のタペストリーなど、手仕事の品があちこちに

「ここは、宿泊のお客様以外でも、誰もが自由に利用できるパブリックスペース。ロビー席はコーヒーのオーダーなしでも利用いただけます。ホテルが眠るためだけの場所ではなく、街に開かれ、地域の文化的ハブとして機能することが、エースホテルに共通する思いなんです」と、広報の担当者は話します。

バー&タコスラウンジ

中2階〜2階のバー&タコスラウンジ「PIOPKO」。ランチからバー利用まで幅広く、誰でも利用可能

大正時代に建てられた旧京都中央電話局の意匠を生かしながら、建築デザイン監修を建築家・隈研吾氏が、内装デザイン監修をいくつかのエースホテルの空間を手がけてきたLAのデザイン集団・コミューンデザインが担当。ポートランドやニューヨーク、ロンドンなど、これまでのエースホテルがそうであったように、パブリックなスペースを広く開放し、人々の交流と街との接点を生む場としてデザインされています。

布のアートワーク

エレベーター前の布のアートワークは鹿児島のライフサポートセンター「しょうぶ学園」が、奥のネオンアートはファッションデザイナーの北村信彦氏がそれぞれ手がけた

日本の作家や職人の品、民芸などを随所にちりばめつつ、西洋の感性やテイストも加わった空間のコンセプトは「East Meets West」。旅の人も街の人も、日本人も外国人も、分け隔てなく自由に行き交う空間ならば、アートはよりフラットに、軽やかに語りかけてきます。オープンで多様な空気感と、視界に飛び込んでくる一つひとつの要素に手仕事や文化を見つける楽しみ。その感覚は、日本のすぐれたアートやクラフトを訪れる人みんなでシェアしているかのようです。

レコードをかけ、手仕事のぬくもりとともに過ごす部屋

エーススイート

旧京都中央電話局の出窓を残した「エーススイート」

ミニマムでも30平米を確保するスタンダードから、畳に布団を敷いて眠ることができる「たたみスイート」まで、213室ある客室にはすべて、日本の作家の作品やプロダクトが。全室に柚木沙弥郎氏のアートワークが飾られているほか、備え付けの湯のみや小皿は、笠間の額賀章夫氏、益子の伊藤丈浩氏の両陶芸家によるもの。そこに、エースホテルにとって不可欠な要素である音楽を存分に楽しめるよう、チボリ社製のラジオや白紙の五線譜、部屋によってはターンテーブル、ギターが備えられています。

ティーセット

ティーセットも日本の作家の品。ミニバーにはスナック菓子やアルコール類も用意されている

レコードに針を落とすと、デジタルデバイスで聞きなれたクリアな音質とはひと味違う、柔らかなノイズを含んだメロディーが流れ出します。心地よい色彩とデザインに囲まれた部屋をノスタルジックな音が満たすひと時は、ホテルから出かけるのがもったいなくなってしまうほど。そこには、旅の拠点をただ寝泊まりするだけの場所ではなく、過ごす人一人ひとりのライフスタイルの延長線上に置こうとする意思が感じられます。

レコード

部屋には洋楽・邦楽含め5枚ほどのレコードが。TEAC社のターンテーブルで再生すれば、途端に部屋がリラックス感とぬくもりで満たされる

旅は、日常から離れ、非日常を楽しむもの。そして日常へと帰っていくもの。だからこそ、旅の間「ホーム」となるホテルが心地よく、ふだんから自分が好きと思える音楽や、憧れていたアートやクラフトとともに過ごすことができたら……。旅の余韻は日常を彩り、勇気付けてくれるはずです。「エースホテル京都」が、京都の街と訪れる人々にとってどんな存在になっていくのか、物語は今ここから、始まったばかりです。

「スタンダード」室内

「スタンダード」は1泊1室3万円(税・サ別、オープン特別価格、季節変動あり)〜。宿泊人数に関わらず1部屋の価格なので、カップルやファミリーにも最適

エースホテル京都
https://www.acehotel.com/kyoto/

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BOOK

アートとクラフトと音楽と。旅先で心豊かに過ごす「エースホテル京都」

京都のいいとこ。

大橋知沙さんの著書「京都のいいとこ。」(朝日新聞出版)が6月7日に出版されました。&TRAVELの人気連載「京都ゆるり休日さんぽ」で2016年11月~2019年4月まで掲載した記事の中から厳選、加筆修正、新たに取材した京都のスポット90軒を紹介しています。エリア別に記事を再編して、わかりやすい地図も付いています。この本が京都への旅の一助になれば幸いです。税別1200円。


PROFILE

  • 大橋知沙

    編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブックやWEB、ライフスタイル誌などを中心に取材・執筆を手がける。本WEBの連載「京都ゆるり休日さんぽ」をまとめた著書に『京都のいいとこ。』(朝日新聞出版)。編集・執筆に参加した本に『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

  • 津久井珠美

    1976年京都府生まれ。立命館大学(西洋史学科)卒業後、1年間映写技師として働き、写真を本格的に始める。2000〜2002年、写真家・平間至氏に師事。京都に戻り、雑誌、書籍、広告など、多岐にわたり撮影に携わる。

蕎麦で旅する、季節を味わう「蕎麦と料理 五(いつつ)」

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