楽園ビーチ探訪

変わり続ける素朴な港町 ベトナム・ニャチャン

ベトナム南部のホーチミンと中部のダナンの間に位置するビーチリゾート、ニャチャン。このビーチが最初に注目を浴びたのは、1990年代後半のアジアンリゾート・ブームの頃でした。

連載「楽園ビーチ探訪」は、リゾートやカルチャー、エコなどを切り口に、国内外の海にフォーカスした読み物や情報を発信するビーチライターの古関千恵子さんが訪れた、世界各地の美しいビーチや、海のある街や島を紹介いたします。

女子旅ブームで注目浴びる

ニャチャンに視線を集めさせた、その立役者は現在の五つ星ホテル「エヴァソン・アナ マンダラ」です。
女子旅人気が真っ盛りだった当時、この海辺のプチホテルの瀟洒(しょうしゃ)なたたずまいが、女子の心にずばんと刺さりました。そして安価なアジアン雑貨やおいしい郷土料理など、ベトナム人気がうなぎ上りだった風潮から、新しいビーチリゾートとしてさまざまな雑誌がニャチャンをこぞって紹介しました。

変わり続ける素朴な港町 ベトナム・ニャチャン

エヴァソン・アナ マンダラの、海辺のスパ

その頃は、外へ一歩も出ずにホテルライフを満喫する「おこもり」というキーワードがもてはやされていた時代。ホテルについての詳細はあっても、どんなビーチなのか、ニャチャンのエリアについて書いてある記事はほとんどありませんでした。「チャンパ王国時代に栄えた港町」と簡単に書いてあるくらい。実際に行った人にどんなところか聞いても、「素朴な港町だよ」。港町にも、いろいろあるので、イメージがわきません。一体どんなところだろう?と、想像を膨らませながら、2010年にようやく訪れる機会に恵まれ、その後1~2年の間に3回訪れました。

山を背後にした活気ある地方都市

変わり続ける素朴な港町 ベトナム・ニャチャン

2010年頃のニャチャンビーチ。海岸線はまさに建設ラッシュ

降り立ったカムラン国際空港は、もともと軍事用空港だったものが2004年に民間の国際空港として開かれてまだ間もなく、新しい印象でした。空港から中心地へ向かう道も整備したての感があり、中央分離帯の木々は三角形や円筒形などに剪定(せんてい)されていて、あれこれ意匠を凝らしたアジアの新興都市という感じでした。

ニャチャンの市街地は、約7キロにわたり緩やかな弧を描くキビ色のビーチに縁取られています。ところによってはヤシの葉のパラソルや、台形のような独創的な形に剪定された植物がアクセントになっていました。

変わり続ける素朴な港町 ベトナム・ニャチャン

市街地の背後には山並みが迫っています

海岸線に沿って走るチャンフー通り沿いには、高層ホテルが並び、中にはシェラトンやノボテルなど、グローバルなホテルグループも軒を連ねていました。大通りには信号待ちのバイクがずらりと並び、我先にとスタートダッシュを競っていました。素朴な港町というよりも活気あふれる地方都市。市街地の背後は、うねうねとした山が街を見守っています。

変わり続ける素朴な港町 ベトナム・ニャチャン

ダム市場ではニャチャンの暮らしぶりがうかがえます

バイクが行き交う市街地をそぞろ歩き、ガイドさんと訪れたダム市場は玉石混交。南国のフルーツやスパイス、食材に加え、地元向けの衣料品や玩具、土産用らしき乾燥させたフグやヒトデと、なんでもあり。地元の人にとってデパート的な存在のようでした。

変わり続ける素朴な港町 ベトナム・ニャチャン

ベトナム料理の代表格フォー

船でしか行けない隠れ家リゾート

市街地はそれほど広くはないけれど、ニャチャンのエリアは広範囲におよびます。船でしかアプローチできない場所にある「シックスセンシズ・ニンヴァンベイ」は、現実から切り離されたような隠れ家リゾート。ビーチや岩場、ヒルサイドなどにヴィラが点在し、レストランやスパなどがちりばめられ、自然豊かな敷地内だけでほぼ滞在が完結できます。今も、ニャチャンを代表するリゾートのひとつです。

フランス植民地時代から在住外国人にとってのビーチリゾートとして開発されてきたそうですが、ホーチミンやハノイで見るようなフランスらしさよりも、むしろ地元の暮らしが伝わってくるようなビーチでした。

変わり続ける素朴な港町 ベトナム・ニャチャン

ラムネ色の海が広がるニンヴァンベイ

たとえば、早朝の浜辺では数人が集まって網を使って漁をしていたり、おばあさんが朝の通りをせっせとほうきで掃き清めていたり、スーツ姿の女性がバイクで通勤していたり。観光よりも地元の生活を感じました。

が、それも10年前。

時代は変わり、ツーリストが喜びそうなスポットがお目見えし、状況はいろいろ変わっているようです。タップバー温泉の泥風呂や、高層ビルの43階にあるルーフトップバー「スカイライトニャチャン」、クラフトビールが楽しめるバーなど、楽しそう。

変わり続ける素朴な港町 ベトナム・ニャチャン

朝焼けのニャチャンビーチ。浜辺の一画では、すでに漁が始まっていました

新しいニャチャンをキャッチアップしに行かなくては。新型コロナウイルス収束後、行きたい旅先リストに、ニャチャンを加えました。でも新しいものが増えても、きっと、早起きの町であることは変わらず、朝から元気よく動いていることでしょう。

【取材協力】
ベトナム航空
https://www.vietnamairlines.com/

>> 連載一覧へ

PROFILE

古関千恵子

ビーチライター。リゾートやカルチャー、エコなどを切り口に、国内外の海にフォーカスした読み物や情報を発信する。ダイビング雑誌の編集者を経てフリーとなり、“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”を繰り返すこと四半世紀以上。『世界のビーチ BEST100』(ダイヤモンド・ビッグ社)の企画・執筆、『奇跡のリゾート 星のや 竹富島』(河出書房新社)の共著のほか、ファッション誌(『Safari』『ELLE Japon』など)やウェブサイトに寄稿。ブログも配信中。

注目のカマラビーチと「007」の島 タイ・プーケットとパンガー湾

一覧へ戻る

切り立つ山並みやクジラと泳げる海 知られざるタヒチ島の大自然

RECOMMENDおすすめの記事